2026.7.31

竹尾 見本帖本店で「IMPRINTED ―杉本博司 ポスター展」開幕。国内外の展覧会史を紙と印刷からたどる

東京・神保町の竹尾 見本帖本店で、「IMPRINTED ―杉本博司 ポスター展」が開催されている。国内外の美術館で開かれた展覧会のポスターを通じて、杉本博司の活動の軌跡と、写真表現を支える紙や印刷技術の可能性に迫るものだ。会期は9月11日まで。

文・撮影=橋爪勇介(編集部)

「SUGIMOTO PORTRAITS」展(ドイツ・グッゲンハイム美術館、2000)のために制作された7枚組のポスター
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 現在、東京国立近代美術館大規模個展「杉本博司 絶滅写真」(〜9月13日)を開催中の杉本博司。その国内外での展覧会のために制作されたポスターを紹介する「IMPRINTED ―杉本博司 ポスター展」が、東京・神保町の竹尾 見本帖本店で始まった。

ポスターで振り返る杉本博司の歴史

 写真をはじめ、建築、舞台芸術、書、陶芸など多彩な領域を横断しながら、時間や記憶、歴史、そして人間の存在をテーマに独自の表現を追求してきた杉本。1980年代以降は世界各地で数多くの展覧会を開催し、「海景」「劇場」「ジオラマ」「建築」などの写真シリーズは国際的な評価を得てきた。

 本展では、東京国立近代美術館で開催されている「杉本博司 絶滅写真」の関連企画として、杉本が国内外で開催してきた展覧会のポスターを厳選して展示。「海景」や「ジオラマ」「建築」といった代表作を用いたポスターを通じて、その展覧会活動の軌跡を振り返ることができる。

展示風景より

 会場には、クンストハレ・バーゼル(スイス)やル・ロックル美術館(スイス)、ドイツ・グッゲンハイム美術館(ドイツ)、セインズベリー・センター(イギリス)、カルティエ現代美術財団(フランス)、森美術館など、国内外の美術館で開かれた個展を中心とするポスターが並ぶ。展覧会ごとに異なる写真の選択や文字の配置、紙の質感を比較することで、杉本の作品がそれぞれの場所や時代において、いかに異なるイメージとして提示されてきたのかも見えてくる。

クンストハレ・バーゼル(左2つ)とル・ロックル美術館のポスター

本展オリジナルポスターも

 なかでも見どころとなるのが、「SUGIMOTO PORTRAITS」展(ドイツ・グッゲンハイム美術館、2000)のために制作された7枚組のポスターだ。同展は、歴史上の人物を等身大で再現した蝋人形を撮影する「ポートレイト」シリーズが世界で初めて発表された展覧会。ポスターには、ヘンリー8世とその6人の妃を撮影した7点がそれぞれ採用されている。

「SUGIMOTO PORTRAITS」展(ドイツ・グッゲンハイム美術館、2000)のために制作された7枚組のポスター

 「杉本博司 絶滅写真」展では、このうちヘンリー8世をとらえた作品が展示されており、ふたつの展覧会をあわせて見ることで、6人の妃のイメージを補完的にたどることができる点も興味深い。

 会場にはこのほか、1987年に撮影された《日本海、隠岐》を用いた本展のオリジナルポスターも展示されている。同じ写真を、ラフ・グロス紙、非塗工紙、塗工紙という性質の異なる3種類の紙に印刷したもので、海と空の繊細な階調をトリプルトーン印刷によって表現。紙の白さや光沢、表面の質感の違いによって、写真の奥行きやコントラスト、静謐な空気感が微妙に変化する様子を見比べることができる。

本展オリジナルのポスター

 写真は画像としてのみ存在するのではなく、紙に刷られることで固有の物質性を獲得する。本展は、杉本の展覧会史を振り返ると同時に、一枚の写真が紙と印刷の選択によって新たな表情をまとい、ポスターという別の作品へと展開していく過程を示すものとなっている。