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2026.7.4

「マリメッコ展 模様のちから」(京都文化博物館)開幕レポート。マリメッコの創造の美学をたどる大規模展

フィンランドを代表するデザインハウス・マリメッコの創造性に迫る「マリメッコ展 模様のちから」。その2年にわたる国内巡回展の最初の会場となる京都展が幕を開けた。

文・撮影=橋爪勇介(編集部)

plaplax (プラプラックス)によるプロジェクションインスタレーション《Factory as Playground》(2026)
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 フィンランドを代表するデザインハウス・マリメッコの創造性に迫る「マリメッコ展 模様のちから Marimekko: Art of Printmaking -Beauty, Dream, Love」。この2年にわたる国内巡回展が、京都文化博物館で幕を開けた。会期は9月6日まで(*)。

 本展は、様々な年代の貴重なドレスやファブリック、制作過程のイメージなど、多彩な資料を通してマリメッコの創造の美学を紐解くものだ。多数のドレスや原画、ドローイングなどを展示。さらに、デザイナー・皆川明とアートユニット・plaplaxによる新作も加わり、「模様」が生まれ、人々の暮らしへと届くまでの創造のプロセスを多角的に紹介する。

展示の冒頭に掲げられたアルミ・ラティアの言葉

 フィンランド側のキュレーションを担ったマリメッコ ホーム&プリンツ デザイン・ディレクターのミンナ・ケメル=クトゥヴォネンは、本展についてこう語る。「タイトルは創業者であるアルミ・ラティアが14歳のときに日記に綴った言葉から着想を得たもの。美、夢、愛が本展の核をなしており、マリメッコで大切にしている好奇心や新たな気づきといった要素を感じてほしい」。

 展示は「マリメッコとは?」「マリメッコの美学 – 時代を超越する色、形、パターン」「マリメッコの創造力 – デザイン制作からプリントメイキングまで」「皆川 明との新たなクリエイティブ・ダイアローグ 国境・領域・時を超えて」の4セクションで構成。

*──東京都庭園美術館(10月3日〜12月20日)、ひろしま美術館(2027年1月30日〜3月28日)のほか、北九州、富山、名古屋、長崎などを巡回予定。

マリメッコとは?

 展示は、ブランドの歩みをたどる導入部から始まる。1951年、フィンランドで創業したマリメッコ。創業者のアルミ・ラティアは、夫の経営するオイルクロスのプリント工場で、若い数名のアーティストをファブリックデザイナーとして起用し、革新的なデザインを生みだしていった。マリメッコという印象的な名前は「マリのドレス」を意味するものであり、「mari(マリ)」はラティアが愛着を持っていた女性の名、「mekko(メッコ)」は古いフィンランド語で女の子の服を表している(なおmariはarmi[アルミ]のアナグラムでもある)。

左はアルミ・ラティアがデザインした《ティーリスキヴィ(レンガ)》(1952)

 51年5月に初のファッションショーを開催し成功をおさめ、50年代後半には国際的な展開を進めたマリメッコ。60年にジャクリーン・ケネディが7点のドレスを購入したことで、世界的な知名度を得ることとなった。

 創業当時の資料や写真、初期のテキスタイルなどを通して見えてくるのは、ファッションブランドという枠を超え、「暮らし全体をデザインする」という思想だ。戦後フィンランドの社会において、衣服やファブリックを通じて新しいライフスタイルを提案したマリメッコの挑戦が、この章ではコンパクトに整理されている。

マリメッコの美学 ― 時代を超越する色、形、パターン

 続く展示では、ブランドを象徴するテキスタイルや衣服を通して、マリメッコならではの美学を読み解いていく。この章の見どころは、50年代から今日に至るまでの約70点に及ぶドレスの展示だ。

大胆な色彩のコントラストと多様なパターンが見どころ

 平面のテキスタイルとして見慣れたプリントも、衣服として立ち上がることで印象は大きく変わる。身体の動きや布の揺らぎによって模様は新たなリズムを生み出し、マリメッコのデザインが「着る」ことで完成することを実感させる。

 また、年代を追って展示を見ることで、色彩やフォルムは変化しながらも、「自然へのまなざし」「自由な発想」「暮らしを豊かにするデザイン」というブランドの思想が一貫して受け継がれてきたことも見えてくる。キャンバスとしてのドレスの物語をじっくりとたどりたい。

2022年から始まった「マリメッコ・アーティスト・シリーズ」の展示
ウニッコのパターンを使ったドレス

マリメッコの創造力 ― デザイン制作からプリントメイキングまで

 マリメッコは、ヘルシンキ本社内に自社のプリント・ファクトリーとアートワーク・スタジオという工房を備えており、デザインから印刷までを一貫して行うことができる。

 このセクションでは、完成した製品だけでは見えてこない、デザインが生まれるまでのプロセスが紹介。デザイナーによるスケッチやドローイング、切り絵、生地色見本などが並び、一枚のアイデアがテキスタイルへと姿を変えていく過程を丁寧に追うことができる。

生地色見本
《シィールトラプータルハ》の印刷用フラットスクリーン版

 またこのセクションで大きな空間を占めるアートユニット・plaplax(プラプラックス)によるプロジェクションインスタレーション《Factory as Playground》(2026)は、本展のハイライトでもある。

plaplax《Factory as Playground》(2026)

 本展のために本社のプリント工場を見学したplaplax。プリントファクトリーをモチーフに構成された本作では、版が重なり、色彩が布へと定着していく工程がダイナミックに映し出される。静かに並ぶ原画や資料から一転、空間全体を使った没入型の演出によって、マリメッコのクリエイションが持つエネルギーを身体的に体感できる構成となっている。

 資料によって創造の思考を理解し、映像によってそのダイナミズムを体感する。本章は、「模様のちから」という展覧会タイトルをもっとも雄弁に物語るセクションと言えるだろう。

plaplax《Factory as Playground》(2026)

皆川明との新たなクリエイティブ・ダイアローグ 国境・領域・時を超えて

 展覧会の締めくくりを飾るのは、デザイナー・皆川明とのコラボレーションによる新作インスタレーション《Marimekko's Timeless World》(2026)だ。

皆川明《Marimekko's Timeless World》(2026)

 本作は、皆川がマリメッコのために新たにデザインしたファブリック「Tuulla(風が吹く)」と、様々なデザイナーたちによる過去のファブリックを用いたもの。テキスタイルの輪がチェーンのように連なる様子は、まさに皆川とマリメッコとの創造的協働の象徴となっている。

手前に見えるのが皆川がデザインした「Tuulla(風が吹く)」

 マリメッコにとってプリントメイキングの根幹を成す人と人との交流を体現するものであり、その思想と歴史を現在のクリエイターがどのように受け止め、新たな表現へとつなげていくのかを示す試みでもある。

 マリメッコと皆川明は、ともに自然への観察を創作の源泉とし、暮らしに寄り添うデザインを追求してきたという共通点を持つ。国も世代も異なる両者の対話は、ただのコラボレーションにはとどまらず、デザインに対する思想の継承として見ることができる。

 ブランドの歴史を振り返るだけでなく、その創造性が現在も更新され続けていることを示す本章は、展覧会全体を未来へと開くエピローグとなっている。