2025.11.14

「30周年記念展 ALL OF EVANGELION」(東京シティビュー)開幕レポート。『エヴァンゲリオン』シリーズの30年間の軌跡に迫る

六本木にある東京シティビューで、「30周年記念展 ALL OF EVANGELION」が開幕した。会期は2026年1月12日まで。

文・撮影=大橋ひな子(ウェブ版「美術手帖」編集部)

エントランスの展示風景より、エヴァンゲリオン初号機のフィギュア
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 六本木ヒルズ森タワーの52階にある東京シティビューで、「30周年記念展 ALL OF EVANGELION」が開幕した。会期は2026年1月12日まで。

 1995年に放送が開始されたテレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』。その後、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズを経て2021年に『シン・エヴァンゲリオン劇場版』として完結し、30年間にわたり幅広い世代の支持を得てきた。本展では、テレビシリーズから新劇場版シリーズまでの500点以上の制作資料や原画が一堂に展示され、作品世界の変遷とその制作の裏側が多角的に紹介される。

 本展は序章を含む全5章で構成されるが、入場してすぐのエントランスには、重厚感あふれるエヴァンゲリオン初号機フィギュアが来場者を迎える。東京タワーや東京湾などの絶景を背景に浮かぶ大きなフィギュアによって、これからはじまる展覧会への期待が膨らむ。なお日没後は、東京会場限定の照明演出がなされ、30周年の「祝祭」が華やかに彩られる。

エントランスの展示風景より、エヴァンゲリオン初号機のフィギュア
エントランスの展示風景より、エヴァンゲリオン初号機のフィギュア

 序章「胎動」では、1995年10月4日に放送が始まったテレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』のアニメーション制作時に用いられた、作品の設計図ともいえる「設定資料」が紹介されている。放送が始まる前から膨大な試行錯誤が重ねられたというテレビシリーズの、誕生までを知ることができる貴重な資料だ。

序章「胎動」の展示風景より
序章「胎動」の展示風景より

 第1章「始動」では、テレビ放送が始まった95年当時につくられた貴重なセル画が紹介される。「セル画」とは、セルと呼ばれる透明なフィルムに絵具でキャラクターや造作物を描いたもので、目や口だけなどのパーツに分けられ、連続した滑らかな動きを表現するために使われた。本章では、アニメや特撮の資料を管理・保全することを目的に、監督・庵野秀明が設立したNPO法人「アニメ特撮アーカイブ機構」協力の下、現存する合計1万カット以上から厳選された貴重なセル画が約270点展示されている。なお本章で展覧されるほとんどのセル画は初公開となっている。

第1章「始動」の展示風景より
第1章「始動」の展示風景より

 セル画は各話ごとに紹介されており、作品を追体験するように資料を見られる構成だ。会場では、セル画ならではの経年変化が見られるものも紹介されており、資料の状態や制作方法といった観点からも30年間の歴史を感じることができるだろう。

第1章「始動」の展示風景より、経年変化が見られるセル画資料

 続いて第2章「鳴動」は、「音」に着目した内容となっている。『新世紀エヴァンゲリオン』は、主題歌や劇中の伴奏音楽、そして印象的なセリフ回しや居動感あふれる効果音など、細かい「音」にまで徹底的なこだわりを持って制作されている。

 本章では、声優陣の貴重なオーディション音声の一部や、フィルムの設計図ともいえる画コンテ、印象的なカットと葛城ミサトのナレーションが組み合わさった予告映像の総集編が紹介されている。各話約30秒の予告からは、当時の視聴者が感じた期待感を追体験することができるだろう。

 「躍動」と題された第3章は、膨大な量の手描きの原画やレイアウトが並ぶ会場構成だ。『エヴァンゲリオン』シリーズは、テレビシリーズから新劇場版シリーズへとメディアミックスで展開されたが、『新世紀エヴァンゲリオン』放送開始から12年後の、2007年に『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』が公開(その後、『:破』『:Q』と公開)されるにつれ、物語は『新世紀エヴァンゲリオン』とはまったく異なる展開をむかえる。『:Q』では、3DCGを活用したビジュアル制作が行われ、より大胆な映像表現を実現した。会場では、実際に3DCDを用いてモデリングされた「戦艦AAAヴンダー」の特別ホログラムが展示されている。

第3章「躍動」の展示風景より
第3章「躍動」の展示風景より

 そして最後の第4章「結実、そして新たな鼓動」では、2021年に公開された『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズの完結編である『シン・エヴァンゲリオン劇場版』にまつわる資料が展開される。庵野は、『:Q』の後に実写映画の制作に取り組んでいたため、その撮影方法を『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の制作に導入した。例えば、巨大なミニチュアセットをつくり疑似的なロケハンを行ったり、マーカーをつけた人間に実際に芝居をさせ、アングルとカット割りの可能性を探るというような方法である。本章では、そのような新しい技法を取り入れた制作に迫り、手描きのアニメーションからデジタル制作、そして実写の手法も取り入れて進化し続けた本シリーズが、どのように完結したのかを紐解く構成となっている。

第4章「結実、そして新たな鼓動」の展示風景より
第4章「結実、そして新たな鼓動」の展示風景より

 なお本展の会場である東京シティビューの隣にある「THE SUN & THE MOON(Cafe)」では、作中のキャラクターやシーンを再現したオリジナルコラボレーションメニューが登場する。味覚からも『エヴァンゲリオン』シリーズの世界観を楽しむことができそうだ。

「ALL OF EVANGELION」展のオリジナルコラボレーションメニュー

 『エヴァンゲリオン』シリーズの30年間の軌跡を貴重な資料とともに振り返りながら、改めて本シリーズの魅力を再発見できる機会となるだろう。