2025.7.15

「ON THE GRID」(五十嵐威暢アーカイブ)レポート。グリッドの可能性や制限を体感する

五十嵐威暢アーカイブで「ON THE GRID」が8月31日まで開催中。グリッドに囲まれた展示室には、同施設で所蔵されている五十嵐威暢の作品や制作資料が並んでいる。

文・撮影=三澤麦(ウェブ版「美術手帖」編集部)

展示風景より
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 金沢工業大学の五十嵐威暢アーカイブで「ON THE GRID」が8月31日まで開催されている。

 五十嵐威暢アーカイブとは、石川県野々市市の金沢工業大学ライブラリーセンター内にある新施設だ。国際的に活躍した彫刻家でグラフィックデザイナーの五十嵐威暢(1944〜2025)の作品や資料を収蔵するとともに、同大学の教育方針のもと、急速に変化する社会からの要請に応えるべく、「デザインとアート」を柱とした感性教育を融合すること、そしてその研究の充実と実践を行うことを目指している。

展示風景より

 グリッドとは、方眼紙などに見られる格子状のガイドであり、デザイナーなどが制作を行う際に活用されることも多い。「ON THE GRID」というタイトルを冠した今回のテーマ展示は、その名の通り、グリッドに覆われた展示空間のなかにプロダクトや彫刻、ポスターなど五十嵐威暢の作品や制作資料を配置。グリッドという規則性のなかからそれぞれの関係性を見出すことを促す試みとなっている。

 本展で重要なのは、このグリッドの持つ可能性の両側面について考えることを伝えてくれている点にある。グリッドは制作や配置のガイド的な役割を果たしてくれるいっぽうで、均質的に見られてしまったり、活用しすぎることでパターンから抜け出せなくなってしまうというマイナスな側面もあわせ持っている。これらについて“様々な思索にふけて”みることを、本展では勧めてくれている。

展示風景より
展示風景より

 ほかにも、常設展示では「五十嵐威暢-『環境』を求めて」が開催されている。五十嵐は、1966年11月に松屋銀座で開催されたグループ展「空間から環境へ」に大きな影響を受けたと語っており、実際の作品からもその思想が見て取れる。数多くの制作物を残した五十嵐の作品を様々な切り口から読み解いていくことで、現代のものづくりやその考え方にも活かすことができるだろう。

展示風景より

 なお、同アーカイブは学生以外に一般入場も可能。予約不要、入場無料となっているため、ぜひ足を運んでみてほしい。休館日等は公式ウェブサイトをチェック。

展示風景より
展示風景より