2024.12.6

隈研吾が建築設計。中国「陶器の都」にUCCA陶美術館がオープン

今年10月、中国江蘇省宜興市に隈研吾が設計したUCCA陶美術館が誕生した。陶芸の長い歴史を持つこの地で現代美術館「UCCA」が運営する4つ目の拠点として、伝統と現代、ローカルとグローバルが交差する新たな可能性と未来を探る。

文=王崇橋(ウェブ版「美術手帖」編集部)

UCCA陶美術館の外観 Photograph by Zhu Di, AGENT PAY
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 中国で「陶器の都」と称される江蘇省宜興市。ここに隈研吾が設計した「UCCA陶美術館」(UCCA Clay)が今年10月に開館した。

 同館は、北京を拠点とする中国を代表する現代美術館「UCCA現代アートセンター」が運営する4つ目の美術館であり、UCCA Dune(北戴河)、UCCA Edge(上海)に続く新たな拠点となる。その名が示す通り、陶芸や陶器に特化した美術館だ。

UCCA陶美術館の外観 Photograph by Zhu Di, AGENT PAY

 宜興市は何世紀にもわたり陶芸の伝統を育み、とりわけ紫砂茶器の生産地として中国国内外で広く知られている。同地に建つUCCA陶美術館は、手焼きのテラコッタタイルで覆われた建築が象徴的であり、これは宜興の紫砂土へのオマージュとしてデザインされたものでもある。

 その建築デザインは、北宋時代の文豪・蘇東坡が愛した蜀山や、600年以上の歴史を持つ現役の龍窯の形状に着想を得ている。2400平方メートルの施設は山のようなヴォリュームを持ち、ファサードに使用された陶板は地元の職人と共同で開発したもので、凹凸や釉薬によるグラデーションが時間や季節によって様々な表情を見せる。

UCCA陶美術館の外観 Photograph by Zhu Di, AGENT PAY

 館内では、1階には広々としたメインな展示ホールが配置されており、2階の展示スペースは高い天井を持ち、建築の象徴的な山脊のような屋根の構造を間近で感じられる設計となっている。美術館の床タイルや案内サインなどもすべて地元で製造された陶板を使用しており、空間全体に地域の工芸文化が息づいている。

 開館記念展「土の道」(~2025年2月23日)は、岐阜県現代陶芸美術館の所蔵品から、「国際陶磁器フェスティバル美濃」の受賞作品69点を展示。「自然の形態を有機的に表現」「空間と表面の幾何学的変化」「歴史的アイコノグラフィーと精神性の反映」という3つのテーマを軸に、17ヶ国65名のアーティストによる作品を通じて現代陶芸の多様性と可能性を示すものだ。

「土の道—国際陶磁器フェスティバル美濃受賞作品展」の展示風景より Photo by Sun Shi

 UCCAの館長フィリップ・ティナリは、「この展覧会は、美濃と宜興、日本と中国の陶芸文化を結びつけるだけでなく、陶芸というメディアを現代的に再解釈する国際的な試みだ」と語る。また、現代的な要素を取り入れつつ、陶芸を通じて宜興という土地とのつながりを生み出すことを目指しているという。

 UCCA陶美術館の運営モデルは、UCCA Duneと同様に、地元の運営者が主要な資金提供者となり、UCCAがコンテンツやプログラムの方向性を提供するかたちを取っている。このモデルにより、美術館は持続可能な運営を実現し、リスクを最小限に抑えながら質の高い展覧会やプログラムを展開することが可能となる。

「土の道—国際陶磁器フェスティバル美濃受賞作品展」の展示風景より Photo by Sun Shi

 今後は、中国国内外のアーティストを招き、宜興で滞在制作を行うアーティスト・イン・レジデンスプログラムの実施が予定されているほか、景徳鎮をはじめとする中国内の陶芸拠点とのコラボレーションも企画されている。ティナリ館長は「陶芸と現代アートが交差する場所として、この美術館が実験的なプラットフォームとなることを期待している」と述べている。

「土の道—国際陶磁器フェスティバル美濃受賞作品展」の展示風景より Photo by Sun Shi

 いっぽうで、日中間の地政学的な緊張が高まるなか、日本のアートや陶芸に対して中国の鑑賞者はどう反応するのか。ティナリ館長は、今年北京のUCCAで開催された杉本博司展を例に挙げ、「政治的な状況が展覧会に影響を与える可能性があるため、慎重な対応が求められる」と語る。しかし、UCCAでは適切な手続きを経て、日中友好協会や地元政府の支持を受けながらプロジェクトを進めているという。

「土の道—国際陶磁器フェスティバル美濃受賞作品展」の展示風景より Photo by Sun Shi

 また、ティナリ館長は今回の「土の道」展について、「たんなる日本の陶芸展ではなく、グローバルな視点から現代陶芸をとらえるものだ」と強調。さらにUCCA陶美術館の未来について、「地域の教育プログラムやコミュニティ活動を通じて地域社会と密接に結びつくことを目指すと同時に、陶芸を現代的な文脈で探求する場として、国際的なアートコミュニティとの架け橋となることを期待している」と語っている。

 伝統的な陶芸に焦点を当てつつも、現代アートとの新たな交差点を探るUCCA陶美術館。その試みは、宜興を起点に現代陶芸の未来を切り開く場として、今後ますます注目されるだろう。

UCCA陶美術館の外観 Photograph by Zhu Di, AGENT PAY