2024.10.4

T2 Collection「Collecting? Connecting?」(WHAT MUSEUM)開幕レポート。コレクションのテーマは「コンセプチュアル」

東京・天王洲にある「WHAT MUSEUM」で、ビッグデータ・AI領域で活躍するコレクター・高橋隆史が収集した現代美術作品を紹介するT2 Collection「Collecting? Connecting?」展が開幕。会期は2025年3月16日まで。

展示風景より、左からベルナール・フリズ《Mora》(2014)、松山智一《Baby,It's Cold Outside》(2017)、バリー・マッギー《Untitled》(2013)
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 ビッグデータ・AI領域で活躍するコレクター・高橋隆史が収集した現代美術作品を紹介するT2 Collection「Collecting? Connecting?」展が、東京・天王洲にある「WHAT MUSEUM」で開幕した。会期は2025年3月16日まで。

 T2 Collection(ティーツーコレクション)は、株式会社ブレインパッドの共同創業者である高橋隆史が、約6年前から収集してきたコレクションだ。本展は、高橋がコレクターとして歩みはじめて最初に購入したベルナール・フリズの作品をはじめ、宮島達男名和晃平、和田礼治郎など、近年惹かれているコンセプチュアルな作品を中心に約36点を紹介するものとなっている。その一部を会場の様子とともにレポートしたい。

高橋隆史

  会場のエントランスでは和田礼治郎《STILL LIFE》(2024)が展示され、高橋がコレクションにおいて重視する「コンセプチュアル」というキーワードを端的に伝える。生の果実とブロンズの果実を混在させ、ガラスと組み合わせた本作は、時間とともに朽ちていく生の果物と、変化することのないブロンズの果物を同居させることで、時間や生命についての思考を喚起している。

展示風景より、和田礼治郎《STILL LIFE》(2024) 200×150×30cm 果実、強化ガラス、真鍮、ブロンズ 協力:SCAI THE BATHHOUSE

 宮島達男《Painting of Change - 003》(2020)は、鑑賞者自身がサイコロを振り、出た目の数字に合わせてデジタル数字を構成する7本のバーを変化させる作品。変化し続ける時間と、それに影響を与えようとする人間の能動性の緊張感が表現されている。

展示風景より、廣瀬智央《Untitled(Beans Mythology)》(2008)、宮島達男《Painting of Change - 003》(2020)

 やんツー「遅いミニ四駆」シリーズ(2021)は、本来速さを競う玩具である「ミニ四駆」の概念を変え、どれだけ遅く走れるかを競う競技へと変化させる、価値観の転換を図る作品だ。

展示風景より、やんツー「遅いミニ四駆」シリーズ(2021) ©yang02

 2階にも多くの作品が展示されている。高橋のコレクションの原点ともいえるのがベルナール・フリズ《Mora》(2014)だ。やわらかなグラデーションの虹のようなストライプは、フリズの意図した偶然性が生んだものとして、鑑賞者に体験を与える。

展示風景より、左からライアン・サリバン《Blue Painting》(2019)、ニール・ホッド《The Life We Life Behind》(2022)、ベルナール・フリズ《Mora》(2014)

 ストリートのグラフィティや、街でみかけるキャラクター、そしてサンフランシスコのホームレスなどをモチーフとした図像を平面上に巧みに構成したバリー・マッギーの絵画《Untitled》(2013)。そこには加速し続ける商業主義の断片と、それを消費者として求める人々の思考が現れている。

展示風景より、左からベルナール・フリズ《More》(2014)、松山智一《Baby,It's Cold Outside》(2017)、バリー・マッギー《Untitled》(2013)

 ほかにも、江上越が高橋とコミュニケーションをしながらつくりあげたという《にじいろ―Kusano Takafumi》(2021)や、松山智一の大型絵画、キャンバスというフレームを脱構築する小林正人の絵画など、思考をうながす平面作品が並ぶ。

展示風景より、中央が小林正人《Unnamed #10》(1998)、右が江上越《にじいろ―Kusano Takafumi》(2021)

 立体やインスタレーションは2階でも多彩なラインナップとなっている。見る角度によってその記号性が様々に変化する、抽象彫刻の先駆者である堀内正和《平面 N-A》(1962)や、不織布で小さな石をくくり天井から無数に吊り下げ不安定な作業の積み重ねを可視化する長田綾美《floating ballast》(2022)、写真作品の中央に置かれた名和晃平のカメラをモチーフとした《PixCell-Camera》など、ぜひ視点を変えながら発見を楽しんでほしい。

展示風景より、右が堀内正和《平面 N-A》(1962)
展示風景より、長田綾美《floating ballast》(2022)©Ayami Nagata
展示風景より、手前が名和晃平《PixCell-Camera》(2021)

 アレックス・ダ・コルテの《The Open Window》(2018)は、作家指定のもと、会場内につくられた部屋のなかで見ることができる。ホラー映画の要素と、その表象から生まれる恐怖を、人間の持つ欲望の原理に肉薄しながらあらわにしていく作品だ。椅子に座りながら対峙してみてはいかがだろうか。

 なお、「WHAT MUSEUM」では本展と同時開催で、直径12メートルのバルーン状彫刻が体験できる奥中章人「Synesthesia ーアートで交わる五感ー」展も開催されている。併せて楽しんでみてはいかがだろうか。

WHAT MUSEUM展示風景 奥中章人「Synesthesia ーアートで交わる五感ー」展
©Akihito Okunaka