2026.7.10

「CAF・レジデンシー・プログラム2026」の助成対象者に井上亜美、遠藤麻衣の2名が選出

現代芸術に携わるアーティストに国際的な活躍の機会を提供する助成事業「CAF・レジデンシー・プログラム」。その2回目となる助成対象者に、井上亜美と遠藤麻衣の2名が選出された。

左から、井上亜美、遠藤麻衣
前へ
次へ

 現代芸術に携わるアーティストを対象に、国際的な活躍の機会を提供する助成事業「CAF・レジデンシー・プログラム」。その2回目の助成対象者に、井上亜美(1991〜)と遠藤麻衣(1984〜)の2名が選出された。

  「CAF・レジデンシー・プログラム」は、才能ある次世代のアーティストを対象に、国際的に活躍できる機会を提供することを目的に実施している。対象となるのは、大学や大学院などの教育機関を卒業してから5~10年程度のキャリアを持つアーティストで、作品ジャンルに制限はなく、個人でもユニットやコレクティブ単位での応募も可能となっている。

 同プログラムにおいて2回目の実施となる今回は、昨年を超える多数の応募が集まり、そのなかから書類選考を経て、選考委員との対面でのインタビュー形式で最終審査を実施。2名の採択者にはニューヨーク・ブルックリン実験アート財団(BEAF)にて3ヶ月間のレジデンス滞在の機会が授与されるほか、滞在期間中には、現地での新進気鋭のアーティスト、アート団体、コミュニティー、研究機関などとの交流の機会が設けられるという。

 選考委員は、野村しのぶ(インディペンデント・キュレーター)、吉竹美香(インディペンデント・キュレーター)、斯波雅子(ブルックリン実験アート財団[BEAF]共同創設者兼エグゼクティブ・ディレクター)の3名が担当。前回にも増して多彩な応募者が集まったという今回の審査評としては、高い実行力と発展の可能性、多様な価値観が交錯するニューヨークでいかに新たな対話を生み出せるのか、「いまニューヨークに滞在すること」の意義がどれほど際立つか、といったものが挙げられている。

 井上亜美は宮城県出身。2016年東京藝術大学大学院映像研究科修士課程修了。京都を拠点に一年を通じて狩猟や養蜂に取り組み、日常的に生き物と関わるなかで制作を行う。彼らとの関係性や距離感、都市と自然を行き来するなかで生まれる違和感をエスノグラフィックな視点で捉え、写真や映像、インスタレーションなどの手法で表現する。主な展覧会に、「Yeosu International Art Festival」(韓国、2024)、個展「The Garden」(京都芸術センター、2023)、個展「The piercing eyes」(Amado Art Space、韓国、2019)、「第21 回シドニービエンナーレ」(オーストラリア、2018)、「コンニチハ技術トシテノ美術」(せんだいメディアテーク、2017)など。今回の選出に対するコメントは次のとおり。

京都を拠点に活動を続けて、気づけば10 年が経ちました。この期間で、自然環境や人間社会の変化、簡単には答えの出せない多くの出来事を目にするうちに、小さなアトリエから見える世界すら変わってしまったように感じます。自宅にいながら多くの情報が手に入る時代に、アトリエを飛び出し、未知の世界に触れる機会をいただけたこと、本当に嬉しく思っています。
言葉も文化も違う初めてのニューヨーク。英会話には自信がありませんが、あらゆる境界を横断するアートの力を借りて、まだ知らない多くのことを目一杯楽しみたいです。CAFRP に採択いただき、ありがとうございます。

井上亜美(プレスリリースより)
井上による京都芸術大学でのインスタレーション《いのちの在り処》(2014)
京都芸術センターでのインスタレーション《まなざしを さす/じいちゃんとわたしの共通言語》(2023) Photo: Mugyuda Hyogo

 遠藤麻衣は兵庫県出身。2021年に東京藝術大学大学院美術研究科博士課程修了。パフォーマンス、映像、共同制作を通じて、忘却された身体知の再想像に取り組み、蔦のように絡まりあう非線形の歴史、人間/非人間の関係性を描きだそうと試みている。近年は、1970年代以降のニューヨークの非制度的タイムベースド・アート をアーカイブする「Franklin Furnace」のリサーチャーとして調査、執筆、展覧会を実施。また、戦後日本のストリップ文化を再解釈し、踊り子の宇佐美なつとパフォーマンス映像《オメガとアルファのリチュアル》(2024)を国立西洋美術館で発表。2018年より丸山美佳と『Multiple Spirits(マルスピ)』を刊行した。選出に対するコメントは次のとおり。

これまでの活動領域を超えた新しい展開へと踏み出すよう、背中を押していただけたように感じています。現在取り組んでいるのは、舞踊史にほとんど名を残していない日系アメリカ人ダンサー、テイコ・イトウのリサーチです。彼女が生まれ育ったニューヨークで、日系の人々が育んだ身体表現の歴史をたどる機会をいただき、心より感謝申し上げます。
限られた資料から、現代を生きる私たちがどのように過去を想像し、未来と接続しうるのか、この問いに向き合いながら、新たな制作へとつなげていきたいと思います。

遠藤麻衣(プレスリリースより)
遠藤麻衣《蛇に似る3:川》(2020)
遠藤麻衣《オメガとアルファのリチュアル》(2024)