2026.9.7

藤田嗣治の60年にわたる画業をたどる。サザビーズ香港で15作品が一挙出品

藤田嗣治の作品15点を集めたオークション「The Foujita Lexicon: Works from the Lewis Collection」が、9月28日にサザビーズ香港で開催。1920年代の自画像から裸婦、猫、戦後の作品まで、その約60年にわたる画業をたどる。

藤田嗣治《Mon portrait》(1924) Courtesy of Sotheby's
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 藤田嗣治の約60年にわたる画業をたどるオークション「The Foujita Lexicon: Works from the Lewis Collection」が、9月28日に香港のサザビーズで開催される。サザビーズ・アジアにとって初となる、ひとりのアーティストに特化した単独オークションだ。

 出品されるのは、著名な個人コレクション「ルイス・コレクション(Lewis Collection)」が30年以上にわたり収集してきた藤田作品15点。総落札予想価格は1780万〜2650万香港ドル(約227万〜338万米ドル/3億5400万〜5億2700万円)で、アジアのオークションに登場する藤田作品のまとまったコレクションとしては、これまででもっとも包括的な内容になるという。藤田の生誕140周年にあたる今年、1920年代のパリ時代から戦後まで、異なる時代や地域、技法を横断してその画業を振り返る機会となる。

藤田嗣治 1926-27 Photo by Nakayama Iwata. Courtesy of Sotheby's

 ルイス・コレクションは今年6月、ロンドンのサザビーズでも大きな注目を集めた。同コレクションによるオークションは総額3億660万ポンド(約4億620万ドル)を記録し、イギリスで開催された単一オーナー・コレクションのオークションとして史上最高額となった。今回の香港でのセールでは、その幅広い収集活動のなかでも、とりわけ長期間にわたって収集してきた藤田に焦点を絞る。

「The Foujita Lexicon: Works from the Lewis Collection」より Courtesy of Sotheby's

1920年代の自画像から戦後の作品まで

 今回のハイライトのひとつが、藤田がパリで名声を確立しつつあった1924年に制作した《Mon portrait》だ。水彩とペン、インクを用いて絹に描かれた自画像で、落札予想価格は80万〜120万香港ドル(約10万〜15万米ドル/1600万〜2400万円)。机に向かう藤田の周囲には東アジアの書道具と西洋の日用品が配置され、日本とヨーロッパという2つの文化的背景をひとつの画面に共存させている。おかっぱ頭に丸眼鏡、パイプという、1920年代のモンパルナスで広く知られることになる藤田自身のイメージを確立した初期の重要な自画像でもある。

藤田嗣治《Mon portrait》(1924) Courtesy of Sotheby's

 いっぽう、今回もっとも高い評価額がつけられているのが、1949年にニューヨークで描かれた《Le rêve (Hommage à La Fontaine)》だ。落札予想価格は400万〜600万香港ドル(約51万〜77万米ドル/8000万〜1億2000万円)。フランスの寓話作家ジャン・ド・ラ・フォンテーヌに着想を得て、巣のなかで眠るキツネの家族を描いた作品で、藤田が1949〜50年のアメリカ滞在中に制作したことが確認されている4点のキツネの絵のひとつ。うち2点は現在、日本の美術館に所蔵されており、本作は個人蔵に残る重要作と位置づけられている。

藤田嗣治《Le rêve (Hommage à La Fontaine)》(1949) Courtesy of Sotheby's

 ほかにも、猫と子猫を描いた1932年の《Chatte et chaton》(予想価格200万〜300万香港ドル)や、1927年の裸婦像《Nu assoupi sur la table》(同200万〜300万香港ドル)など、藤田を象徴するモチーフが揃う。また1933年の《Madeleine endormie》は、ルイス・コレクションが1992年に初めて購入した藤田作品であり、その後30年以上にわたる収集の出発点となった作品だ。

「The Foujita Lexicon: Works from the Lewis Collection」より Courtesy of Sotheby's

アジアで根強い藤田嗣治の市場

 今回の香港での単独オークションの背景には、アジアにおける藤田作品への根強い需要もある。サザビーズによれば、藤田のオークションにおける歴代落札価格トップ10のうち5件がアジアで記録された。また過去3年間、同社の藤田作品に対する入札者の85パーセントをアジアのコレクターが占め、そのうち日本と香港だけで65パーセントに達したという。過去2年間に限れば、日本のコレクターはサザビーズにおける藤田作品購入者の34パーセントを占めている。

 1920年代のモンパルナスで確立した自画像から裸婦や猫、戦後のアメリカ滞在期に生まれた作品まで。ひとつのコレクションを通じて藤田の画業を横断すると同時に、現在のアジア市場におけるその評価を示すオークションとなりそうだ。

藤田嗣治 1927 Courtesy of Sotheby's