2025.11.19

西村有らが記録更新。サザビーズNY新拠点の2セールで、総額約1098億円を記録

サザビーズがニューヨークの新本拠地「ブロイヤー・ビル」で初のイブニングセールを開催し、総額約1098億円という同社史上最高額を記録した。

マウリツィオ・カテラン《アメリカ》(2016)が落札された瞬間の様子 All images courtesy of Sotheby's
前へ
次へ

 サザビーズは11月18日、ニューヨークの新拠点「ブロイヤー・ビル」における初のイブニングセールを開催し、レナード・A・ローダー・コレクションおよび「The Now & Contemporary Evening Sale」の2部構成により、総額7億600万ドル(約1098億円)という一夜のセールでは同社史上最高額を記録した。

 現代作家の作品が並んだ「The Now & Contemporary」では、ジャン=ミシェル・バスキア《Crowns (Peso Neto)》(1981)が4830万ドル(約75億円/手数料込み、以下同じ)でトップロットを飾った。サザビーズ中国会長のジェン・ファによる電話入札で落札され、同作がバスキアのアメリカ初個展の出展作としても注目を集めた。

ジャン=ミシェル・バスキア Crowns (Peso Neto) 1981

 イヴ・クライン《Sculpture éponge bleue sans titre (SE 167)》(1959頃)は1900万ドル(約29億5400万円)で落札。作家の代表であるスポンジ彫刻シリーズの初期作であり、60年以上デュラン=リュエル家が保持してきた希少作として高い関心を集めた。

イヴ・クライン Sculpture éponge bleue sans titre (SE 167) 1959頃

 この日の話題をさらったのは、マウリツィオ・カテランによる18金製トイレ《アメリカ》。競売開始直後、会場は一時静まり返り、落札開始価格990万ドル(当日の金相場に基づき重量換算によって算出された金額)に続く入札は現れず、わずか一度の応札のみで1000万ドル(手数料込み1210万ドル/約18億8200万円)の落札となった。落札者はアメリカの著名ブランドで、サザビーズ副会長カサンドラ・ハットンを通じて電話入札したという。

マウリツィオ・カテラン アメリカ 2016

 同作は、カテランの過去のオークション価格として最高額である《Him》(2011)が2016年のクリスティーズ・ニューヨークにて1720万ドルで落札された記録に次ぐ、作家にとってオークション史上2番目の高額落札となった。

 2016年、同作はニューヨークのグッゲンハイム美術館で展示された際、来館者が実際に使用できるトイレとして設置され、大きな話題を呼んだ。その後、2019年にイギリスの世界遺産・ブレナム宮殿で展示された際には盗難被害に遭い、いまなお行方不明のままである。今回出品されたのは、唯一現存するもうひとつのバージョンであり、サザビーズの新本社で一般公開された際には約2万5000人が列をなし、その注目度の高さを示した。

 さらに同セールでは複数の作家がオークション記録を更新した。今年5月にデイヴィッド・ツヴィルナー所属となった西村有による《thicket》(2020)は、予想を大きく上回る競り上がりを見せ、56万ドル(手数料込み71万1120ドル/約1億1055万円)で落札。今年5月のサザビーズで記録されたレコード40万6400ドルを大幅に更新した。

西村有 thicket 2020

 また、セシリー・ブラウン《High Society》(1997-98)は800万ドル(手数料込み980万ドル/約15億2400万円)で落札され、600万ドルの最高予想落札価格を超えて新記録を樹立。そのほか、アントニオ・オバ、ノア・デイヴィス、ジェス、ロバート・アリスらもこれまでのオークションレコードを更新している。

セシリー・ブラウン High Society 1997-98

 同日の前半には、別記事で詳報したレナード・A・ローダー・コレクションのセールが行われ、総額5億2750万ドル(約820億円)を記録し、全ロット落札となる「ホワイト・グローブ」を達成。グスタフ・クリムト《エリザベート・レーデラーの肖像》は2億3630万ドル(約365億円)で落札され、サザビーズ史上最高額を更新した。これら前半の勢いが、後半の現代アート部門にも強い活気をもたらした。

 サザビーズCEOのチャールズ・F・スチュワートは次のようにコメントしている。「今回のイブニングセールは歴史的成功でした。サザビーズ史上最大の売上を記録し、最高額の作品も生まれました。新本社ブロイヤーでの華々しい船出となったことを誇りに思います」。