2025.5.17

「ART OSAKA 2025」が開催。梅津元キュレーションの映像プログラムも

現代美術のアートフェア「ART OSAKA 2025」が、大阪市中央公会堂(6月6日~8日)とクリエイティブセンター大阪(6月5日~9日)の2つの会場で開催される。

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 現代美術のアートフェア「ART OSAKA 2025」が、大阪市中央公会堂(6月6日~8日)とクリエイティブセンター大阪(6月5日~9日)の2つの会場で開催される。

 本フェアは「Galleries セクション」「映像プログラム」「Expanded セクション」の3つのセクションで展開。まず「Galleries セクション」は国指定重要文化財である大阪市中央公会堂の3階で開催され、各ギャラリーが個々にブースを出展する形式。日本国内のみならず、韓国や台湾からの参加も含む総勢44軒のギャラリーが一堂に会し展示・販売を行う。

大阪市中央公会堂

 今年は2024年に代官山に新スペースをオープンしたAISHOが初出店。日本の「神仏習合」や国内外の寺院からインスピレーションを得て「架空の古代の人工物」を制作する大阪在住の小池一馬や、大型のキャンバスにねじれた人物が絡み合うさまを鮮やかな色彩で描くハンガリー在住のアコーシュ・エゼルなどを紹介。

アコーシュ・エゼル Crossroads 2022 キャンバスに油彩 Courtesy of AISHO

 2018年より神宮前で活動しているEUKARYOTEは、従来の美術というジャンルを超えた多様な作家を紹介。今回は、独特の視覚効果を伴う風景を描き没入感を誘う菊池遼や、キャンバスに塗り広げた絵の具を剥がすという大胆な手法を取り入れる品川はるななどを取り上げる。

菊池遼 void #166 2024 パネルにアクリル、油彩 Courtesy of EUKARYOTE
品川はるな Peel off the paint “No.346” 2024 キャンバスにアクリル Courtesy of EUKARYOTE

 ほかにも関西を拠点に若手作家を紹介し続けている京都のCOHJUからは、自身の幼少期の記憶や体験、神話を織り交ぜ、不確かでありながらも懐しさを呼び起こす独自の世界観を描く白石効栽、作家の記憶のなかにある民藝のモチーフを引用しながら絵画と工芸の関係性の探る長沢楓などが出展。

白石効栽 晩餐を想起させる静物 2024 キャンバスに油彩 2024 Courtesy of COHJU
長沢楓 花鳥文 木版に油彩、綿布 2024 Courtesy of COHJU

 「映像プログラム」は大阪市中央公会堂の大集会室で開催される。プログラムは、大きく2つのプログラムから構成。1つは、プログラム・キュレーションに批評家/キュレーターの梅津元を迎え、 1960年代から現在までの、実験映像、ヴィデオアート、美術家による映像など、重要な作品の数々を一挙に上映し、日本における「映像表現」を探るプログラムとなっている。

 期間中、毎日上映されるのが、瀧健太郎監督の『キカイデミルコトー日本のヴィデオアートの先駆者たち』(2013)だ。出光真子、中谷芙二子、松本俊夫、山口勝弘など、映像表現の先駆者たちへのインタビューを通じて、日本の映像表現の黎明期をたどるドキュメンタリー。ヴィデオアートが日本でどのように誕生したかをわかりやすく構成した本作は、国内外で反響を呼び、大阪では今回が初の上映となる。 

 加えて、実験映画、ヴィデオアート、美術家による映像など、約25本を上映。美術家による映像作品として歴史的に重要な、村岡三郎・河口龍夫・植松奎二の共作《映像の映像-見ること》(1973)幻の名作と称される柏原えつとむ《サタワル》(1971)、初公開となる堀浩哉《READING Session No.3》(1974)、大阪港近くの築港赤レンガ倉庫で撮影された松井智惠《HEIDI 46 brick house》(2006)、国内外の映画祭で多数の賞を受賞している折笠良のアニメーション《みじめな奇蹟》(2023)、そして、国際的に活躍する牧野貴の《The Low Storm》(2009)など、多様なラインナップとなっている。

 2つ目のプログラムは、大阪在住の美術家・森村泰昌がプロデュースした伝説的なアートプロジェクト「テクノテラピー」のドキュメンタリー映像の特別上映だ。美術家と展覧会制作、舞台演出、会場運営などの専門家集団、そして多くのボランティアスタッフが結集し、本会場でもある大阪市中央公会堂の全館を活用してつくり上げた本プロジェクト。賛否両論を呼びながらも、当時の大阪の芸術文化のエネルギーを象徴する試みだったといえる。

The Image of TechnoTherapy Photo by Kazuo Fukunaga

 Expandedセクションは近代化産業遺産である北加賀屋・クリエイティブセンター大阪(名村造船所大阪工場跡地 / 近代化産業遺産)で開催。19組の国内外作家が出展し、メディアの垣根を越えた作品群が展示販売される。 

クリエイティブセンター大阪(赤鉄骨・パルティッタ)

 今年の会場となるのは、1階の「ブラックチェンバー」と4階の「ドラフティングルーム(製図室)」、屋外の「赤鉄骨」、そしてライブスペース「スタジオパルティッタ」です。「ブラックチェンバー」では、世界的に著名な前衛芸術家であるオノ・ヨーコ小山登美夫ギャラリー)が1960年代から取り組んできた《Fly》 を展示。これは作家からのメッセージを持ち帰ることができる観客参加型のインスタレーションだ。

オノ・ヨーコ ポートレイト ©︎Yoko Ono Photo: Bjarke Orsted

 「ドラフティングルーム」では、身近な紙を用いて有機的な作品を生み出す伊藤航(GALLERY KOGURE)が、名村造船所跡地にインスピレーションを受け、近代産業の象徴である「歯車」と「人」 をモチーフにしたインスタレーションを展開。髙橋穣(Marco Gallery)は、人々が日常的に翻弄される 「不可解な力」を作家自身が知覚するための巨大な彫刻作品を「赤鉄骨」と対峙させる。

伊藤航 Control 2024 ケント紙、アクリル樹脂、桧、木ネジ、ウレタン塗装 Courtesy of GALLERY KOGURE
髙橋穣 装置 #1 2023 ミクストメディア Courtesy of Marco Gallery

 「赤鉄骨」の奥の「スタジオパルティッタ」では、ライヴスペー スであることを生かして河合政之(MORI YU GALLERY)が映像インスタレーションを展示します。「ヴィデオ・フィードバック」システムにより、刻一刻変化する色や形、音を即興的につくり出す。 

河合政之 三元素 2024 ヴィデオプロジェクター、メディアプレーヤー、ケーブル、サウンドシステム、電球、回転台 Courtesy of MORI YU GALLERY