2024.9.20

「ART FAIR ASIA FUKUOKA 2024」開幕レポート。アートフェアが独自色を持つ必要性とは?

アジアをコンセプトとしたアートフェア「ART FAIR ASIA FUKUOKA」。その9回目となる「ART FAIR ASIA FUKUOKA 2024(以下、AFAF2024)」が、福岡国際センターを舞台に始まった。会期は9月22日まで。

会場の福岡国際センター
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 日本で唯一、「アジア」の名を冠したアートフェアが今年も幕を開けた。

 「ART FAIR ASIA FUKUOKA 2024」(以下、AFAF)は、今年で9回目を数える九州随一のアートフェアだ。同フェアはホテルフェアから始まり、昨年のマリンメッセ福岡、そして今年の福岡国際センターと、近年その規模を拡大している。 

会場の福岡国際センター
福岡空港ではサテライト展示としてエコ・ヌグロホの《Nowhere is My Destination》が迎えてくれる

 福岡国際センターは保税展示場の許可を受けており、海外出展者は輸入税等を留保された状態で作品を展示することが可能だ。日本国内ではこの制度を活用するアートフェア・ギャラリーがいくつかあるが、3年続けて保税展示場制度を活用するアートフェアはAFAFのみ。アジアをコンセプトとしたアートフェアとして、毎年保税展示場制度を活用することで、国際的な文化交流に寄与したい考えだ。

 今年は5000平米超の会場特性を活かした2フロアの立体的な構成となっており、2階から1階全体を見渡せる構成。出展ギャラリー数は98(うち海外が9)で、ブースは「Galleries」と企業・学校等の10団体による「Collaboration」からなる。

アートフロントギャラリー(東京)ブースはエコ・ヌグロホ作品をフィーチャー
Oh studio Hiroshima (広島)ブースは久保寛子などの作品を展示
gallery UG(東京・大阪)ブース
「Collaboration」のFukuoka Art Wall Project 2024ブース

「Focus」「MASTERS」など多彩なプレゼンテーション

 今回のブースでは、AFAFのコンセプトである「アジア」「福岡・九州」に関わりのあるアーティストや、国内外で活躍するアーティスト10名に焦点を当てる「Focus」も同時に展開。Ayako Someya(東京画廊+BTAP)、井口麻未(Gallery CONTAINER)、浦川大志(Contemporary HEIS)、岡崎実央(Gallery Seek)、クゥワイ・サムナン(小山登美夫ギャラリー)、塩田千春ケンジタキギャラリー)、徐永旭(SAN Gallery)、タワン・ワトゥヤ (nca | nichido contemporary art)、中島麦YUMEKOUBOU GALLERY)、福嶋さくら(ギャラリー広田美術)がラインナップされている。

ケンジタキギャラリーより、塩田千春の作品
SAN Gallery(台湾)ブースは徐永旭の作品をプレゼンテーション
YUMEKOUBOU GALLERYより、中島麦の大作

 AFAF2024 スペシャルアドバイザーで、世界的なアートコレクターとして知られる宮津大輔がアジアのアーティストの作品をキュレーションする「Leading Asia」は昨年に続き今年も存在感を示す。今年は「Never Ending Story(終わりなき物語)」をテーマに、世界中の関心を集める環境問題に取り組むカンボジアのコン・シデンなど12組が紹介された。

Leading Asiaブース

 AFAF初の試みにも注目だ。エントランス付近に展開される「AFAF Feature」は、アジア及び福岡で活躍する2人のアーティストに焦点を当てるもの。アジアからはインドネシアを代表するアーティストであるエコ・ヌグロホの作品が、福岡からはソー・ソウエンの作品が並ぶ。

AFAF Featureブース

 また今回が初となる「AFAF Masters」は興味深いセクションだ。このセクションは、各出展ギャラリーから出品されたミュージアムレベルの作品が並ぶ。88万円の里見勝蔵《砂丘》から、1100万円の黒田清輝《野》、1650万円の藤島武二《日の出の海》、4400万円の藤田嗣治《黒いレースのカーテンの女》、そして14億円のアンリ・マティス《赤い背景の裸婦》まで、幅広い価格帯の作品が並ぶ。初日にはすでに660万円の福田平八郎《竹》が売約済みとなるなど、会場でも現代美術ブースとは異なる注目を集めていた。

AFAF Mastersブース
AFAF Mastersブースより、左がアンリ・マティス《赤い背景の裸婦》

大規模ではないフェアが必要な理由

 AFAFはこれからアート作品を買いたいという層にもリーチできるような価格帯・サイズの作品からMastersのような名品までが幅広いレンジで並ぶフェアであり、初日オープン直後から多くの人々で賑わいを見せていた。

 初回から出展しているKOKI ARTS代表の石橋高基は、「来場者は着実に増えている。地方だからこそ、コレクターのポテンシャルも大きい」としつつ、「AFAFは九州で様々なアートを見るいい機会になっており、東京からの呼水にもなる。今後はさらに多くの海外ギャラリーも参加し、交流が生まれれば」とさらなる発展に期待を寄せる。

KOKI ARTSブースより、Ylva Carlgrenの作品

 また宮津の言葉も印象的だ。いま、アジアではアート・バーゼル香港を筆頭に、フリーズ・ソウル、KIAF、台北當代(タイペイダンダイ)、アートフェア東京、Tokyo Gendai、Art Collaboration Kyotoなど、多くの巨大フェアが存在する。そんななか、AFAFの立ち位置はどこにあるのか? 宮津はこう語る。「アート・バーゼルやフリーズなの大型フェアだけでなく、いまは中規模で独自性を持つフェアが重要。AFAFは日本、アジア、世界のなかで独自性のあるフェアとして残っていきたい。ほかとは異なる魅力を持つことで、日本や海外のコレクターに楽しんでもらえるように舵を切っている」。

 また東京画廊+BTAP代表の山本豊津も、「地方が小規模なアートフェアを行うことに賛成したい。実際にものを見て、比較すると、自ずと好きなものが1点は見つかる。(AFAFのようなフェアは)コレクターにとって、バーゼルやフリーズにつながるステップとして機能する」とその必要性を説く。

 1年のアートカレンダーがフェアで次々と埋まるような「アートフェア群雄割拠時代」のいま、AFAFにはさらなるユニークな進化が期待される。