第61回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館、初の共同キュレーター制へ。高橋瑞木と堀川理沙が就任
2026年5月から開催される「第61回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展」。日本館では初の共同キュレーターとして高橋瑞木と堀川理沙が選出された。

今年4月、「第61回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展」(2026年5月開催)において、日本館の出展作家が荒川ナッシュ医に決定した。6月14日には、その荒川ナッシュを迎え、日本館のキュレーターを発表する記者会見が東京都内で開催された。
荒川ナッシュは福島県いわき市出身。1998年に渡米し、現在はロサンゼルスを拠点に活動するクィア・パフォーマンスアーティストである。ニューヨークでの21年の滞在を経て、2019年にロサンゼルスへ移り、近年ではテート・モダン(ロンドン)や国立新美術館(東京)で個展を開催している。
日本館初の「共同キュレーター制」を導入
今回、日本館では約70年の歴史のなかで初めて「共同キュレーター制」を導入し、高橋瑞木と堀川理沙が共同キュレーターとして選ばれた。荒川ナッシュはコレクティブとしての活動経験が豊富であり、「作品制作においても、展示チームそのものがコレクティブな体制であるべき」との考えから、日本国外で活躍する2人のキュレーターを自ら指名したという。

高橋は現在、香港のCHAT香港紡織文化芸術館で館長兼チーフ・キュレーターを務めている。日本では森美術館の開館準備室(1999〜2003)や、水戸芸術館現代美術ギャラリー(2003〜2016)で長年にわたり展覧会企画に携わってきた。荒川ナッシュとは2011年、水戸芸術館でフェミニズムをテーマにした展覧会をともに実現した経緯がある。「日本館というナショナルな場において、アーティストとキュレーターのあいだに深い信頼関係があることは非常に重要」と語った。

いっぽう、堀川はシンガポール国立美術館のシニア・キュレーター兼キュレトリアル&コレクション部門部長として、1930〜40年代を中心とするアジアの近代美術を専門としている。荒川ナッシュは「ヴェネチアという場はいまもなお近代とコロニアリズムに深く関係する場所であり、堀川さんは、アジアにおける日本の植民地主義や近代美術の成り立ちについて研究・実践されてきた方だ」と説明しつつ、次のように述べている。「現代美術の世界では、どうしてもインサイダーな構造になりがちな部分がある。そこに近代美術の視点を持つ方が加わることで、新しい動きや視点が生まれる可能性がある」。