2025.5.12

第61回ヴェネチア・ビエンナーレ美術展キュレーター、コヨ・クオが急逝

2026年5月9日に開幕を予定している第61回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展のキュレーターであるコヨ・クオが逝去。同財団によって発表された。

コヨ・クオ 出典=ヴェネチア・ビエンナーレのウェブサイトより

 2026年5月に開幕予定の第61回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展のキュレーターを務めていたコヨ・クオが、急逝したことが明らかになった。

 主催団体であるヴェネチア・ビエンナーレ財団は公式声明で、クオの突然の訃報に「深い悲しみと驚き」を表明しており、「彼女の逝去は、現代美術の世界において、そして彼女の卓越した人間性と知的な献身に触れ、敬意を抱いてきた国際的なアーティスト、キュレーター、研究者たちのコミュニティにおいて、計り知れない喪失をもたらした」とコメントしている。

 クオは昨年12月に同展のビジュアル・アート部門ディレクターに任命され、構想中のテーマや展覧会タイトルの発表は今年5月に予定されていた。彼女はヴェネチア・ビエンナーレ史上初のアフリカ系女性キュレーターであり、その動向には国際的な注目が集まっていた。

 カメルーン生まれのクオは、これまでにセネガルの「ロー・マテリアル・カンパニー(RAW Material Company)」創設ディレクター、ドイツのドクメンタ展(2007、2012)キュレーターなどを歴任。2019年からは南アフリカ・ケープタウンにあるゼイツ現代アフリカ美術館(Zeitz MOCAA)のエグゼクティブ・ディレクター兼チーフキュレーターとして活動してきた。

 展覧会企画では、2015年にベルギー・ブリュッセルのWielsで開催された「Body Talk: Feminism, Sexuality and the Body in the Works of Six African Women Artists」などが知られている。このほか、ロンドンとニューヨークで開催される「1-54 Contemporary African Art Fair」の教育・芸術プログラムを2013年〜17年にかけて監修。ロシア・モスクワのガレージ現代美術館およびベルリンの世界文化の家では、ラシャ・サルティと共同で「Saving Bruce Lee: African and Arab Cinema in the Era of Soviet Cultural Diplomacy」(2015–18)をキュレーションした。

 出版物も多数手がけており、アフリカの美術史や制度に関する「Condition Report」シリーズ、ブラック・フィギュレーションに焦点を当てた『When We See Us: A Century of Black Figuration in Painting』(2022)、トレイシー・ローズのモノグラフ『Shooting Down Babylon』(2022)などがある。

 ゼイツMOCAAでは、アフリカおよびディアスポラのアーティストに焦点を当てた個展シリーズを継続的に展開し、オトボン・ンカンガ、ジョハネス・フォケラ、センゼニ・マラセラ、アブドゥライ・コナテ、メアリー・エヴァンスなどの展覧会を企画した。

 今回の訃報を受け、2026年のヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展のキュレーション体制や構成内容の今後の対応については、現時点で明らかになっていない。ビエンナーレ財団は現在、関係者と協議を進めているという。