2026.8.5

企画展示「アイヌ民族と博覧会 ―150年の経験―」が国立歴史民俗博物館で10月に開催。国立アイヌ民族博物館との共同企画

千葉・佐倉の国立歴史民俗博物館で、企画展示「アイヌ民族と博覧会 ―150年の経験―」が開催される。会期は10月6日〜11月29日。

「大阪・関西万博で披露されたアイヌ舞踊の様子」(2025) 公益財団法人アイヌ民族文化財団
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 千葉・佐倉の国立歴史民俗博物館で、企画展示「アイヌ民族と博覧会 ―150年の経験―」が開催される。会期は10月6日〜11月29日。本展は北海道・白老の国立アイヌ民族博物館との共同企画であり、同館では6月20日~8月23日での開催となる。

 1872年の湯島聖堂博覧会にアイヌ資料が初めて出品されてから、2025年の大阪・関西万博に至るまで、およそ150年にわたってアイヌ民族は様々なかたちで「博覧会」に関わってきた。博覧会は知識や文化を広めるいっぽうで、人や文化を比較し、序列化してしまう場としての側面ももつ。

 アイヌ民族はこういった場への参加にあたって、差別や偏見、優越感を含むまなざしのもとで展示されることもあった。そこには多様な思いや選択、困難や葛藤があったことは想像に難くない。

一曜斎国輝《古今珍物集覧》(1872) 国立歴史民俗博物館(展示期間:10月6日~11月1日)

 本展は、工芸品、写真、絵はがき、書簡、衣装、映像などの約200点に及ぶ資料を展示するほか、博覧会に関わった一人ひとりの「声」を紹介。その経験や思い、交錯する関係性に目を向け、個人にとって博覧会がいかなる場であったのかを考えるものとなる。これまで開催されてきた博覧会に出展・参加したアイヌ民族やその仲介者、さらには「見る側」と「見られる側」の相関関係に焦点を当て、博覧会におけるアイヌ民族の150年にわたる足跡をたどることを試みる。

アイヌ民族と博覧会の関係性、そして個人の「声」に耳を傾ける

 会場は全4章立てで構成される。「第1章 アイヌ工芸品展示の草創期から博覧会へ」では、アイヌ民族による工芸品と博覧会の関係性を紐解く。和人から見た「異域」の産物として注目されたそれらは、明治初期になると北海道物産の一部として組み込まれ、和人にとっての「開拓」の成果や可能性、殖産興業の文脈のなかで語られていくこととなる。

松浦武四郎「『近世蝦夷人物誌』二編巻之中」(1858) 重要文化財 松浦武四郎記念館(展示期間:10月6日~11月1日)
「明治十年内国勧業博覧会列品写真帖」(1877) 尼崎市立歴史博物館

 続く「第2章 アイヌ民族の出場」では、明治末から昭和戦中期までにおいて、アイヌ民族が「人間展示」に出場したことを取り上げる。これは、近代の学術的視線や植民地拡大を背景に、生身の人間やその生活を観覧の対象とするために実施されたものであり、そこには展示する側がアイヌ民族を「未開」と見なすまなざしがあった。他方で、出場に際しては、興行主や研究者、自文化の普及や教育施設への寄付募集を目的としたアイヌの出場者など、様々な立場や思惑、関係性が複雑に絡み合っていたことを本章では描く。

「第五回内国勧業博覧会正門写真」(1903) 国立アイヌ民族博物館
貝澤ウトレントク《盆》 個人蔵

 「第3章 アイヌ文化を見せていく時代」では、戦後のアイヌ民族と博覧会の関係性の変化に目を向ける。第二次世界大戦後、国際博覧会では「人間展示」が行われなくなり、テーマや基本理念が重視されるようになる。しかし、日本国内では戦後の復興や観光振興を背景に各地で博覧会が開催され、アイヌ民族も出品・出場を続けていた。戦前からの「原始」性を強調する展示が残るいっぽうで、次第にアイヌ民族自身が何を見せるかを主体的に企画する動きも生まれていったという。

 また、1970年の大阪万博以降、国内で開催された国際博覧会では、「日本のまつり」や「北海道の日」などのプログラムのなかで紹介されるようになったことも本章では描き出す。

《山丹錦》 立教小学校(国立アイヌ民族博物館寄託)
川村則子《ミンタラ》(1988) 公益社団法人北海道アイヌ協会

 最終章となる「第4章 アイヌ民族と博覧会のゆくえ」では、2025年の大阪・関西万博で行われたアイヌ舞踊公演「ウレㇱパ モシㇼ」と展示「イランカラㇷ゚テ」を取り上げ、「アイヌ民族と博覧会」の現在とそのゆくえに焦点を当てる。

「大阪・関西万博でのアイヌ舞踊公演時の会場全体の様子」(2025) 公益財団法人アイヌ民族文化財団

 近年、アイヌ民族や文化をめぐる社会的関心が高まり、表現のあり方も多様化している。博覧会のみならず、「文化を見せる場」は、参加するアイヌ民族に何をもたらすのだろうか。そこで得られた経験やつながり、葛藤などの過程をたどることで、日常にある個々人の営為の積み重ねと、その先にある博覧会を描き出すことを最終章では試みる。

「大阪・関西万博のアイヌ舞踊公演のために作成・使用された資料群」(2025) 個人蔵
「大阪・関西万博のアイヌ舞踊公演時に加藤峻也が着用した衣服」 個人蔵

 また、今年の3月にリニューアルオープンした総合展示第5室「近代」では、「アイヌにとっての近代」「琉球・沖縄からみた近代」「『水平』をめざして」といった3つの視点も設けられている。今回の共同開催は、この第5室の展示構築にあたって連携を行った国立アイヌ民族博物館との研究を踏まえて立ち上がったものとなっているため、あわせて鑑賞したい。