2026.2.27

第61回ヴェネチア・ビエンナーレが詳細発表。111組が参加し、「モチーフ」で構成

第61回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展の詳細と参加アーティストが発表された。111組が参加し、会場は複数のモチーフによって構成される。

第61回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展の会場のひとつ、ジャルディーニの外観 Photo Andrea Avezzu. Courtesy La Biennale di Venezia

 5月9日〜11月22日に開催される第61回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展の詳細および参加アーティストが発表された。

 会場はジャルディーニ、アルセナーレ、ヴェネチア市内各所。プレビューは5月6日から8日、開会式および授賞式は9日に行われる。

 総合キュレーターを務める予定だったコヨ・クオは、昨年5月に急逝した。ヴェネチア・ビエンナーレ財団は遺族の同意のもと、クオが構想した展覧会をそのまま実現することを決定。彼女が準備してきた企画を引き継ぎ、完成へと導く。

 今年のテーマは「In Minor Keys」。2024年11月にヴィジュアル・アーツ部門芸術監督に任命されたクオは、すでに理論的枠組みの構築、参加アーティストと作品の選定、カタログ執筆陣の指名、グラフィック・アイデンティティおよび展示空間設計の決定、さらには招待作家との対話までを進めていた。

 プロジェクトは、クオが選出したチームによって継続される。アドバイザーのゲイブ・ベックハースト・フェイフー、マリー=エレーヌ・ペレイラ、ラシャ・サルティに加え、シッダールタ・ミッター(公式図録編集長)、ロリー・ツァパイ(リサーチ・アシスタント)らが中心となり制作を推進している。

 特筆すべきは、2025年4月にダカールのRAW Material Companyで行われた集中的な会議。同センターはクオ自身が創設した文化拠点であり、この場で展覧会の方向性が明確になった。チームは実践の共鳴や共通点を整理し、「エンチャントメント(魅惑)」「シーディング(種まき)」「コモニング(共有)」「生成的実践」といったキーワードを導き出したという。

 本展には、個人作家、デュオ、コレクティブ、アーティスト主導組織を含む111組が参加する。サルヴァドール、ダカール、サンフアン、ベイルート、パリ、ナッシュヴィルなど多様な地域から選出され、地域を越えたつながりが示される。

 展示は章立てではなく、いくつかのモチーフによって構成される。「Shrines(聖域)」では、イッサ・サンブとビヴァリー・ブキャナンの2人の作家が中心に据えられる。前者はダカールのLaboratoire Agit’Artの共同創設者であり、後者は反記念碑的ランド・アートを展開した作家。両者に共通するのは、作品を物体として完結させるのではなく、生成的実践として社会へ開く姿勢だ。

 「Procession(行進)」は、祝祭や集団的実践に着想を得た展示構成で、観客も空間に参加する存在として位置づけられる。「Schools」は、学びと共同性を重視する実践に光を当て、芸術と社会の関係を問い直す。

 さらに「Rest(休息)」は、本展の重要な視点のひとつだ。植民地主義や環境問題といったテーマを扱いながらも、庭や中庭といった空間を通じて、立ち止まり考える場を設ける。網羅することよりも、深く向き合うことを重視する姿勢が示される。

 なお、日本出身および日系の参加アーティストには、ブブ・ド・ラ・マドレーヌ(1961年生まれ)、アレクサ・クミコ・ハタナカ(1988年生まれ)、嶋田美子(1959年生まれ)、キャリー・ヤマオカ(1957年生まれ/arms ache avid aeon)が名を連ねる。

 パフォーマンス・プログラムでは身体を知と記憶の場として捉える。ジャルディーニでは、1999年にクオが実施した「Poetry Caravan」に着想を得た詩人の行進が行われる予定だ。

 展示デザインはケープタウンのWolff Architectsが担当。閾(しきい)を意識した空間構成と藍色のバナーが特徴となる。Applied Arts Pavilionではガラ・ポラス=キムが参加し、文化財と制度の関係を問い直すプロジェクトを展開する。

 大学向けプログラム「Biennale Sessions」や教育プログラムも継続。前回展では約13万人が教育活動に参加しており、2026年も若年層への取り組みが強化される。

 コヨ・クオの不在のなか実現する本展は、彼女の思想を引き継ぐかたちで開催される。「In Minor Keys」は、関係性や共同性を軸に、芸術がどのように人間の経験と向き合うかを問いかける展覧会となるだろう。