2025.12.18

アルフレド・ジャー×和田礼治郎、SCAI PIRAMIDEで2人展が開催へ。「見る」という行為の政治性を問う

異なる方法論で同時代の緊張に向き合ってきたアルフレド・ジャーと和田礼治郎による2人展「Alfredo Jaar Reijiro Wada」が、SCAI PIRAMIDEで開催される。会期は2026年1月21日〜4月18日。

和田礼治郎 PORTAL 2025 グラッパ、強化ガラス、真鍮、ステンレス、ブロンズ 120 x 150 x 40 cm 協力=SCAI THE BATHHOUSE
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 東京・六本木のSCAI PIRAMIDEで、アルフレド・ジャーと和田礼治郎による2人展「Alfredo Jaar Reijiro Wada」が開催される。会期は2026年1月21日〜4月18日。

 本展は、政治的・社会的緊張が極限に達しつつある現代において、それぞれ異なる方法論で世界の不均衡や不安定さに向き合ってきた2人の作家を並置する試みとなる。政治的危機が生み出す情報の偏在や不可視の権力構造を、簡潔かつ鋭利な視覚言語へと翻訳してきたアルフレド・ジャーと、物質の腐敗や衝突、変容のプロセスを通じて環境そのものを彫刻的に攪乱する和田礼治郎の実践が、緊張感を孕んだ構成のなかで交差する構成だという。

 会場の中心には、ジャーのネオン作品《TONIGHT NO POETRY WILL SERVE》(2023/2025)が展示される予定だ。本作は、フェミニスト詩人エイドリアン・リッチの言葉を引用し、これまでロンドンのピカデリー・サーカスやソウルのCOEXスクエアなどの巨大デジタル・ディスプレイで公共空間に展示されてきた。いかなる美的言語も現実の惨禍に応答し得ないという問いを突きつけるこのフレーズは、ギャラリー空間に移されることで、言葉の機能と限界を構造的に再検討する装置として立ち現れる。

 あわせて展示される《1+1+1+1》(2025)は、ジャーが1987年のドクメンタで発表した初期作品をもとに、本展のため再構成された新作である。黒く塗られたパネル、空白の額縁、反復するフレーム構造、そして鏡を組み合わせたインスタレーションは、作品を「観る」という行為そのものを問い返し、鑑賞者を空虚と自己像の往復運動へと導くことで、展示空間に内在する政治性を浮かび上がらせるものとなる。

アルフレド・ジャー The End (GSL_a) 2025

 いっぽう、和田の新作《PORTAL》(2025)は、光学、エントロピー、風景への関心を彫刻的構造へと結晶させた作品である。天地逆さまに設置された枯れた葡萄の木(ブロンズ)が支えるフレームの内部には、2枚の強化ガラスに挟まれた透明なグラッパが満たされ、わずかな負圧によって光が微細に歪められる。向こう側の景色は光学的に揺らぎ、空間には張り詰めた気配が生じる。生命の終焉と循環を示唆しながら、物質が別のエネルギーへと移行する過程を静かに提示する作品だ。

「六本木クロッシング2025展:時間は過ぎ去る わたしたちは永遠」展の展示風景より、和田礼治郎《MITTAG》(2025)

 本展を通じて、光、ガラス、金属といった素材は、同時代の緊張を映し取る媒体として編成され、「フレーム」という形式的参照が繰り返し現れる。政治的解釈と物質的含意が交錯するなかで、私たちの視覚経験が、つねにあらかじめ設定された条件や構造のもとで形成されていることを示唆する。

 なお、本展と同時期に、アルフレド・ジャーおよび和田礼治郎は東京各地で複数の展覧会や関連企画に参加している。ジャーは、東京オペラシティ アートギャラリーにて個展「あなたと私、そして世界のすべての人たち」(2026年1月21日〜3月29日)を開催するほか、東京都写真美術館で行われる国際写真賞「プリピクテ」第11回展「STORM(嵐)」(〜2026年1月25日)にも出展している。

 いっぽう和田は、森美術館で開催中の「六本木クロッシング2025展:時間は過ぎ去る わたしたちは永遠」(〜2026年3月29日)に参加するほか、SCAI PARKでの個展「SCAI PARK #45」(2025年12月16日〜)も行っている。