2025.11.28

今週末に見たい展覧会ベスト10。運慶から「あいち2025」、KOGEI Art Fair Kanazawaまで

今週閉幕する/開幕した展覧会のなかから、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。なお、最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。

「国際芸術祭『あいち2025』灰と薔薇のあいまに」の展示風景より
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もうすぐ閉幕

「運慶 祈りの空間―興福寺北円堂」(東京国立博物館

展示風景より

 東京国立博物館 本館特別5室にて、特別展「運慶 祈りの空間―興福寺北円堂」が11月30日に閉幕する。レポート記事はこちら

 興福寺北円堂は、奈良時代の高官・藤原不比等の一周忌追善供養のため、元明・元正天皇の発願によって721年に建立されたと伝わる。平城京の造営を推進した不比等の霊を慰める場として、都を一望できる伽藍西北隅の一等地に建てられた。その後、幾度もの戦火や災害によって焼失し、現在の建物は鎌倉時代の1210年頃に再建されたもので、現存する興福寺堂宇のなかでは最古の建築である。建築様式は奈良時代の特徴を伝える和様建築の傑作であり、日本に現存する八角円堂のなかでももっとも優美と賞賛されている。

 本展では、北円堂の本尊である弥勒如来坐像と、両脇に控える無著・世親菩薩立像、さらに北円堂に安置されていた可能性の高い四天王像の計7軀の国宝仏を、ひとつの空間に集結。とくに弥勒如来坐像の寺外公開は約60年ぶりであり、修理後としては初の公開となっている。

会期:2025年9月9日~11月30日
会場:東京国立博物館 本館特別5室
住所:東京都台東区上野公園13-9
電話番号:050-5541-8600
開館時間:9:30~17:00 ※入館は閉館の30分前まで

「日本画聖地巡礼2025 -速水御舟、東山魁夷から山口晃まで-」(山種美術館

展示風景より、速水御舟《名樹散椿》【重要文化財】

 山種美術館で、特別展「日本画聖地巡礼2025-速水御舟、東山魁夷から山口晃まで-」が11月30日まで行われている。レポート記事はこちら

 2023年に同館で開催された「日本画聖地巡礼」展では、作品に描かれた風景と、実際の現地写真を並列させるかたちで、画題となった土地や画家ゆかりの地を「聖地」として紹介した。本展はその第2弾にあたる。

 本展では、青森・奥入瀬渓流の秋を描いた奥田元《奥入瀬(秋)》、京都・椿寺地蔵院の五色八重散椿をモチーフにした速水御舟《名樹散椿》(重要文化財)、定宿から眺めた京都の町家の情景を描いた東山魁夷《年暮る》など、実在の場所を題材にした日本画の名作が並ぶ。また、山口晃による《東京 1・0・4輪之段》は、皇居を中心に東京を俯瞰して描いた作品で、山種美術館が所蔵して以来、今回が初公開されている。

会期:2025年10月4日~11月30日
会場:山種美術館
住所:東京都渋谷区広尾3-12-36
電話番号:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10:00~17:00(入館は閉館30分前まで)
料金:一般 1400円 / 大学生・高校生 1100円 / 中学生以下 無料

「ゴッホ・インパクト―生成する情熱」(ポーラ美術館

展示風景より、森村泰昌《自画像の美術史(ゴッホの部屋を訪れる)》(2016/2025)、《自画像の美術史(ゴッホ/青い炎)》(2016/2018)

 神奈川・箱根にあるポーラ美術館で、同館開館以来初となるフィンセント・ファン・ゴッホをテーマとした展覧会「ゴッホ・インパクト─生成する情熱」展が11月30日まで開催されている。レポート記事はこちら

  本展は、ゴッホが芸術家たちに与えた影響の歴史を振り返るとともに、現代を生きるわたしたちにとって「ゴッホ」がいかなる価値を持ち得るのかを検証するものとなる。ゴッホの作品の中から、ポーラ美術館が所蔵する、アルル時代の風景画《ヴィゲラ運河にかかるグレーズ橋》(1888)、サン=レミ時代に身近な自然を捉えた《草むら》(1889)、そしてオーヴェール時代の静物画《アザミの花》(1890)などが出品。そのほかゴッホから影響を受けた作家たちの作品も多数展示されている。

会期:2025年5月31日〜11月30日
会場:ポーラ美術館
住所:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285
開館時間:9:00~17:00 ※入館は閉館の30分前まで
料金:大人 2200円 / 大学・高校生 1700円 / 中学生以下無料

「ライアン・ガンダー:ユー・コンプリート・ミー」(ポーラ美術館

展示風景より、《閉ざされた世界》(2024)

 神奈川・箱根にあるポーラ美術館で、ライアン・ガンダーの最新作を紹介する展覧会「ライアン・ガンダー:ユー・コンプリート・ミー」も11月30日に終了する。レポート記事はこちら

 ライアン・ガンダーは1976年生まれ。イギリス・サフォークを拠点に活動するアーティストで、絵画、彫刻、映像、テキスト、VRインスタレーションから建築、出版物や書体、儀式、パフォーマンスまで、幅広い作品と実践を通して芸術の枠組みやその意味を問い直してきた。また展覧会のキュレーション、大学や美術機関での指導、また子供を支援する活動にも熱心に取り組んでおり、芸術や文化の普及にも携わっている。

 本展では館内の様々なスペースで、全18点におよぶ作品の数々を紹介。大半が日本初公開の新作であり、本展のための新作も多数公開されている。

会期:2025年5月31日〜11月30日
会場:ポーラ美術館
住所:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285
開館時間:9:00~17:00 ※入館は閉館の30分前まで
料金:大人 2200円 / 大学・高校生 1700円 / 中学生以下無料

「アンチ・アクション 彼女たち、それぞれの応答と挑戦」(豊田市美術館

展示風景より

 豊田市美術館で「アンチ・アクション 彼女たち、それぞれの応答と挑戦」が11月30日に閉幕する。レポート記事はこちら

 本展は、中嶋泉による著書『アンチ・アクション─日本戦後絵画と女性画家』(2019、ブリュッケ)で示された視点を基盤とし、日本の近現代美術史を新たな観点からとらえ直そうとするもの。「アンチ・アクション」という概念にもとづき、草間彌生田中敦子、福島秀子をはじめとする14名の女性作家によるおよそ120点の作品を通して、彼女たちそれぞれの時代における応答と挑戦の軌跡を提示する。

 出品作家は、赤穴桂子、芥川(間所)紗織、榎本和子、江見絹子、草間彌生、白髪富士子、多田美波、田中敦子、田中田鶴子、田部光子、福島秀子、宮脇愛子、毛利眞美、山崎つる子。

会期:2025年10月4日~11月30日
会場:豊田市美術館
住所:愛知県豊田市小坂本町8-5-1
電話番号:0565-34-6610
開館時間:10:00~17:30(入館は17:00まで)
料金:一般 1500円 / 高校・大学生 1000円 / 中学生以下 無料

「国際芸術祭『あいち2025』灰と薔薇のあいまに」(愛知芸術文化センター、愛知県陶磁美術館、瀬戸市のまちなか)

展示風景より

 国際芸術祭「あいち 2025」が、11月30日まで開催されている。レポート記事はこちら

 同芸術祭では、昨年の『ArtReview』によるアート界の影響力ランキング「Power 100」で1位に選出されたフール・アル・カシミが芸術監督を務め、「灰と薔薇のあいまに」というテーマのもと、世界中から集められたアーティストたちが、私たちが生きる環境について、様々な視点で物語を表現する予定となっている。主な会場となるのは、愛知芸術文化センター、愛知県陶磁美術館、瀬戸市のまちなかなど。

 また、会期中には「ポップ・アップ!」という巡回展示が県内の4つの市町で開催され、参加アーティストのうち15組程度が作品を展示。入場は無料で、豊田市(豊田市民芸館)、設楽町(旧設楽町立田峯小学校)、大府市(大府市歴史民俗資料館、大府市役所)、豊川市(豊川市桜ケ丘ミュージアム)の各会場で開催されている。

会期:2025年9月13日〜11月30日
会場:愛知芸術文化センター、愛知県陶磁美術館、瀬戸市内各所
料金:[フリーパス]一般 3500円 / 学生 2300円、[1DAYパス]一般 2100円 / 学生 1400円

「神戸六甲ミーツ・アート2025 beyond」(六甲山各所)

展示風景より、奈良美智《Peace Head》(2025)

 神戸・六甲山上を舞台にした現代アートの芸術祭「神戸六甲ミーツ・アート2025」が11月30日に終了する。レポート記事はこちら

 本芸術祭は2010年にスタートし、今年で16回目の開催を迎える。これまでに延べ580組以上のアーティストが参加し、山の自然と共鳴する多彩な作品を発表してきた。今年のテーマは「環境への視座と思考」。かつて自然破壊に直面しながらも、人々の努力によって豊かな森を取り戻した六甲山の歴史を踏まえ、自然・文化・社会といった広義の環境について、アートを通じて考える機会を提示する。

 会場となるのは、「ROKKO森の音ミュージアム」や「六甲高山植物園」など六甲山上の各エリア。登山道沿いに作品が点在するトレイルエリアでは、自然のなかでのアート鑑賞を楽しみながら、地域の風土や文化に触れることができる。

 出展作家は国内外から60組以上。そのうち約15組は公募によって選出された新進作家となる。また、奈良美智の作品《Peace Head》も常設されている。

会期:2025年8月23日~11月30日
会場:ミュージアムエリア(ROKKO森の音ミュージアム・六甲高山植物園・新池)、六甲ケーブル(六甲ケーブル下駅・山上駅)、天覧台、兵庫県立六甲山ビジターセンター(記念碑台)、六甲山サイレンスリゾート(旧六甲山ホテル)、トレイルエリア、みよし観音エリア、六甲ガーデンテラスエリア、風の教会エリア 
開催時間:10:00~17:00 ※営業日・時間は会場により一部異なる 
料金:大人 4000円 / 4歳~小学生 1700円 / 3歳以下無料

「ひろしま国際建築祭2025」(福山/神勝寺 禅と庭のミュージアムほか)

山の上から見た尾道市立美術館と瀬戸内海

 福山市・尾道市を中心に「ひろしま国際建築祭2025」が11月30日に閉幕する。レポート記事はこちら

 本建築祭は、丹下健三、安藤忠雄、伊東豊雄、SANAA(妹島和世・西沢立衛)、坂茂といった名だたる現代建築家に加え、次世代を担う若手建築家や作家も多数出展。瀬戸内地域に蓄積された古建築から現代建築に至る建築文化の多層性を背景に、日本から世界へと建築文化を発信する初の試みとなる。

 今回は「つなぐ ― “建築”で感じる、私たちの“新しい未来”」をテーマに掲げ、建築を通して歴史、風土、景観、技術、思想などの多角的な視点から社会の課題に向きあい、未来のあり方を探る機会を提供する。展示は、工業製品のような建築にとどまらず、文化や思想を反映する空間としての建築に光をあて、来場者に建築が持つ創造性と社会的意義を問いかける。

会期:2025年10月4日~11月30日
会場:福山/神勝寺 禅と庭のミュージアム、 ふくやま美術館(ギャラリー) 尾道/尾道市立美術館、まちなか文化交流館「Bank」、 LLOVE HOUSE ONOMICHI、ONOMICHI U2、LOG
住所:広島県福山市、尾道市+瀬戸内エリア
料金:鑑賞パスポート 会場販売 3000円 / ウェブ販売 2500円 / 高校生以下、障がい者の方および介護者1名 無料

今週開幕

「北島敬三写真展 借りた場所、借りた時間」(長野県立美術館(本館・東山魁夷館)

北島敬三 長野県 須坂市 2018年1月9日 Courtesy of the artist ⒸKEIZO KITAJIMA

 長野県立美術館で「北島敬三写真展 借りた場所、借りた時間」が11月29日に開幕する。

 北島敬三は、1975年に「WORKSHOP写真学校」森山大道教室に参加したことを契機に本格的に写真を始めた。都市と人間の瞬間を鋭く捉えたスナップショットで注目を集め、『写真特急便 東京』で日本写真協会新人賞(1981)を、渡米後に刊行した『New York』(白夜書房)で第8回木村伊兵衛写真賞(1983)を受賞した。

 本展は、北島の50年にわたる活動を振り返る初の大規模回顧展であり、キャリア初期から近年までの代表作を展示する。旧作のニュープリントや雑誌・写真集などの資料をあわせて紹介し、写真家自身による再構成のプロセスを通してその軌跡をたどる。「借りた場所、借りた時間」という言葉を手がかりに、北島の作品が問い続けてきた人間の営みとその痕跡を多面的に紹介する。

会期:2025年11月29日~2026年1月18日
会場:長野県立美術館(本館・東山魁夷館)
住所:長野県長野市箱清水1-4-4 善光寺東隣
電話番号:026-232-0052
開館時間:09:00~17:00(展示室入場は16:30まで)
休館日:水、年末年始(12月28日〜1月3日)
料金:一般 1000円 / 大学生・75歳以上 800円 / 高校生以下・18歳未満 無料

「KOGEI Art Fair Kanazawa 2025」(ハイアットセントリック金沢)

「KOGEI Art Fair Kanazawa 2024」の開催風景

 国内唯一の工芸に特化したアートフェア「KOGEI Art Fair Kanazawa」。その9回目となる「KOGEI Art Fair Kanazawa 2025」が、金沢市のハイアットセントリック金沢の2階、4階、5階で開催されている。会期は11月30日まで。

 同フェアは2017年の初開催以来、来場者数や販売額、出品作家ともに年々増加。2024年は国内外40ギャラリー(日本39、韓国1)が出展し、アーティスト約210名の作品を展示販売した。また、国立工芸館と共催した特別鑑賞イベントや、木工職人の作品を用いた茶会、市内の古美術店と連携したツアーなど、合計15のプログラムも開催。多彩な工芸に触れる機会を創出した。

 会場では、より生活に近い空間のなかで作品を見られるように、ホテルの客室で展示を実施。1部屋1ギャラリーでの展示のため、部屋を変わるごとに異なる世界観の作品に出会うことが可能となっている。

会期:2025年11月28日〜30日(28日は招待者限定のVIPプレビュー)
会場:ハイアットセントリック金沢 2階、4階、5階
住所:石川県金沢市広岡1-5-2 
開館時間:11:00〜19:00(30日〜18:00、28日は13:00〜19:00)
料金:前売り券 2500円 / 当日券 3000円(2日間通し券)