2025.6.17

SOMPO美術館で「大正イマジュリィ」に着目した展覧会が開催

東京・新宿にあるSOMPO美術館で、「大正イマジュリィの世界 デザインとイラストレーションの青春 1900s-1930s」が開催される。会期は7月12日〜8月31日。

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 東京・新宿にあるSOMPO美術館で、印刷技術の革新が進んだ大正時代の独特なデザインやイラストレーションに焦点を当てた「大正イマジュリィの世界 デザインとイラストレーションの青春 1900s-1930s」が開催される。会期は7月12日〜8月31日。

 「イマジュリィ」とはフランス語で、ある時代やジャンルに特徴的なイメージ群のこと。1900〜30年代の日本には、西洋から新しい複製技術が次々に到来し、雑誌や絵葉書、ポスター、写真などに新鮮で魅力的なイメージがあふれた。これらの大衆的複製物は「大正イマジュリィ」と総称され、2004年に学会が結成された。

 その大正イマジュリィ学会の創立会員・役員を務め、近代文学や出版文化の収集・研究を行なった山田俊幸が監修した本展。山田の収集品のなかでもとくに大正時代を中心とする約330点が展示される。

 本展は大きく2つの観点から構成される。1つ目の「大正イマジュリィの作家たち」という切り口では、大正時代の出版文化に足跡を残した作家12名が取り上げられる。彼らは出版物のデザインを通じて、大衆の一人ひとりが主役になる新時代の明るさを印象づけるとともに、個々人の郷愁や憧憬、日々の繊細な感情、衝動、欲望を視覚化した。

 紹介される作家は、アール・ヌーヴォー様式で浪漫を広げた巨匠とされる、日本近代美術を代表する洋画家・藤島武二や、日本初のグラフィックデザイナー・杉浦非水、装幀本の先駆者とされる橋口五葉。さらに、儚げな「夢二式」美人で一世を風靡した竹久夢二、描くファッションイラストが「華宵好み」と呼ばれ少女読者から支持された挿絵画家・高畠華宵。ほかにも画家である岸田劉生や古賀春江、絵葉書や絵封筒のデザイナー・小林かいちの作品も展示される。

藤島武二・表紙絵  『明星』 第11号 1901 東京新詩社 個人蔵
杉浦非水・装幀/菊池幽芳・著  『お夏文代』 1915 春陽堂 個人蔵

 続いて2つ目の「さまざまな意匠(イマジュリィ)」では、当時の勢いを増す出版界において、匿名の作者の作品を含む文や絵、装幀や挿絵といった作品をテーマ別に取り上げる。大正時代に広まったフランスの哲学者アンリ・ベルクソンによる思想を発端に、個々の創造性が重んじられた当時の作品に見られる意匠を、浮世絵の再生、次世代のための童画、妖気漂う耽美な怪奇美、東京や京都をはじめとした都市の商業デザインなどの切り口で、多面的に「大正イマジュリィ」を深堀する展示構成となる。

小村雪岱・見返/遅塚麗水・著  『東京大観』  1916 有文堂書店 個人蔵
水島爾保布・挿画/谷崎潤一郎・著  『人魚の嘆き・魔術師』 1919 春陽堂 個人蔵

 なお本展開催にあたってギャラリートークなどの関連イベントも実施される。