2026.1.18

2026年に注目すべき新建築ベスト7

今年、新たに開業を迎える施設のなかから、建築的にも注目すべき5つをまとめて紹介する。

MoN Takanawa: The Museum of Narrativesの完成イメージ 画像提供=JR東日本
前へ
次へ

1月5日開業:大谷グランド・センター(栃木・宇都宮)

大谷グランド・センター

 宇都宮市大谷地区に開業する「大谷グランド・センター」(25年12月12日プレオープン)は、昭和期に建設された旧複合施設を再生し、アートと食を核とした文化拠点へと転換するプロジェクトだ。大谷石の採掘地として知られる地域性を背景に、建築そのものの荒々しさや素材感を活かした空間構成が大きな特徴。

 館内には現代アートの展示スペースをはじめ、レストラン、カフェ、ショップなどが併設され、訪れる人々が長時間滞在し、地域と緩やかに関わることを想定した設計がなされている。常設展示はいま注目のアーティストであるYOSSHIROTTENによるもの。大谷石から着想を得た没入感のあるインスタレーション《大谷石景》は、この施設の顔と言えるだろう。

 観光施設でありながら日常的な文化の接点として機能する点も注目される。地方都市における文化施設の役割を更新する試みとして、その動向が注視される。

2月14日開業:クヴェレ美術館(茨城・水戸)

クヴェレ美術館 ©MOON LIGHT小沼渉写真事務所

 水戸市中心部に位置する「テツ・アートプラザ」(25年11月21日プレオープン)は、旧川崎銀行水戸支店として使われていた歴史的洋風建築を活用した複合文化施設だ。重厚な外観と意匠を保存しながら内部を再構成し、「クヴェレ美術館」を中核に、展示空間やカフェなどを配置。近現代絵画や工芸作品を中心とした企画展を年に複数回開催し、地域に根ざした美術鑑賞の場を提供する。

 銀行建築が持つ公共性と、現代美術の開かれた性質が交差することで、日常の延長としてアートに触れられる環境が生まれる点が特徴だ。都市の記憶を内包した建築を文化資源として再定義する試みとして、水戸の文化的景観に新たな層を加える存在となる。

3月5日開業:帝国ホテル 京都(京都・東山)

「帝国ホテル 京都」の完成予想図 出典=大林組ウェブサイト

 京都・祇園に建つ旧弥栄会館という登録有形文化財を活用した「帝国ホテル 京都」は、歴史都市における建築介入のあり方を問い直すプロジェクトだ。外観や意匠を継承しながら、内部には現代的な快適性と機能を組み込むという難度の高い条件のもと、新素材研究所による設計が進められた。

 約55室の客室のほか、レストランやバー、ウェルネス施設を備え、帝国ホテルとしては東京、上高地、大阪に次ぐ4軒目の拠点となる。客室は異なる建築構造や眺望を特徴にした3つのエリアで展開。保存建築の意匠を重んじる保存エリア(本棟南西面)の客室は、柱や梁、窓枠などが、弥栄開館の名残を感じられるデザインとなる。たんなる高級宿泊施設にとどまらず、京都の景観や文化の文脈に深く配慮した空間づくりが特徴で、歴史的建築の保存と観光開発の関係性を問い直す事例としても位置づけられる。

3月28日開業:MoN Takanawa: The Museum of Narratives(東京・高輪)

MoN Takanawa: The Museum of Narrativesの完成イメージ 画像提供=JR東日本

 高輪ゲートウェイ駅周辺で進行する大規模再開発「TAKANAWA GATEWAY CITY」の中核として誕生する本施設は、2026年を象徴する新建築の筆頭といえるだろう。

 建築は地上6階、地下3階の低層建築。地下3階には約1200人収容のライブ・パフォーマンス空間「Box1000」が、地下2階には開催中のプログラムや参加クリエイターに関連する書籍やグッズなどのアーカイヴが並ぶ本棚「MoNライブラリー」が誕生する。2階にはDJやパブリックビューイングが開催できるオルタナティブ・スペース「Box300」、4階には約200平米の畳スペース「Tatami」を設置。そして5階には約1500平米の展示室「Box1500」が設置される。

 企画段階から国内外のパートナーとプログラムをつくっていくことも同施設の特徴で、ロンドンのバービカン・センターとはテーマリサーチやコンセプトメイキング等をともに行い、共同でコンテンツを制作するとともに、展覧会やイベントを企画。青森県立美術館とは、同館に展示されている作品を、Box1000の大型LEDによってダイナミックに再構築し、スケールアップした作品として新たに演出する予定だ。

 「Narratives(語り)」という名称が示す通り、ここで扱われるのは完成された作品だけではない。都市の記憶、個人の経験、地域の歴史といった断片的な要素を束ね、建築そのものを語りのプラットフォームとして機能させる構想が読み取れる。美術館とも劇場とも異なるこの建築は、再開発地区における文化施設のあり方を更新する試金石となるだろう。

3月31日リニューアルオープン:江戸東京博物館

リニューアル前の東京都江戸東京博物館

 東京都墨田区の両国に位置する「東京都江戸東京博物館」は、1993年の開館以来、徳川家康の江戸入府から現代までの東京の歴史と文化を紹介してきた大型博物館である。2022年から約4年にわたる休館と大規模改修を経て、3月31日に待望のリニューアルオープンを迎える。

 改修プロジェクトでは、展示と空間体験の刷新が図られ、OMAのパートナーを務める重松象平が空間デザインを監修している。改修後は、大型模型の新設や、3階ひろばの天井・柱面に収蔵資料をダイナミックに投影する新演出が導入されるほか、アプローチ部の新設も見どころ。約4年間の封印を経て、展示コンテンツと空間がともに再構築された「えどはく」は、歴史博物館としての役割を超えて、都市文化の総体的な体験空間として再び人々を迎えるだろう。

4月27日開業:奈良監獄ミュージアム(奈良)

旧奈良監獄 表門

 明治期に建設された国の重要文化財・旧奈良監獄という、極めて強い制度的・歴史的意味を持つ建築を保存・活用した本施設は、明治政府によって計画された五大監獄(長崎監獄、金沢監獄、千葉監獄、鹿児島監獄)のうち、唯一現存するもの。放射状に広がる房舎、煉瓦造の壁体、閉鎖性の高い空間構成は、当時の権力構造をいまに伝える。

 星野リゾートにとっては初のミュージアム事業となる同館のコンセプトは、「美しき監獄からの問いかけ」。館内は第三寮や看守所など、当時の状態を残した「保存エリア」に加え、3つの展示棟(A棟:歴史と建築、B棟:身体と心、C棟:監獄と社会)とカフェとショップが併設された「展示エリア」で構成。とくにC棟では開館時、国内外で活動するアーティストが監獄から受けたインスピレーションとそれぞれの感性で制作した作品を展開する予定となっている。

2026年度後半開業予定:YURAKUCHO PARK(東京・有楽町) 

 有楽町駅前の「有楽町ビル」「新有楽町ビル」跡地(約1万平米)に開設される「YURAKUCHO PARK」は、26年度後半の開業を目指す新たな都市空間プロジェクトだ。三菱地所による本プロジェクトは、たんなる商業再開発とは一線を画し、有楽町を 「日本カルチャーの発信拠点」 と位置づけることを特徴としている。

 特筆すべきは、世界的なミュージシャン・プロデューサーであるファレル・ウィリアムスとデザイナーのNIGO®が共同クリエイティブチームとして参画する 「JAPA VALLEY TOKYO」プロジェクトで、アートとカルチャー、食、ライフスタイルを横断する複合空間として27年の立ち上げが予定されている。敷地内にはアーティスト・KAWSによる大型作品設置も計画されており、都市のシンボルとしての視覚的強度を持つことが期待されている。暫定空間としての実験的な都市文化発信地は、従来の商業施設や公園というカテゴリを超え、東京の“まちづくり”を再編集する大規模プロジェクトとなるだろう。