東影智裕「Dark Forest」

　ギャラリーノマルで、東影智裕による個展「Dark Forest」が開催されている。

　ウサギやウシといった動物の頭部のようなものをモチーフにした彫刻作品で知られる東影。緻密な毛並みに覆われた精巧な作品群は、一見すると写実的だが、それらは自身の記憶のみで形づくられている。

「生と死」を根幹のテーマに持つ東影の作品は、相反する要素の境界を曖昧なものにしながらも存在感を放ち、リアリティとイマジネーションを共存させたまま空間に佇む。

　ノマルでの前々回2018年の個展では、映像と彫刻を融合させたインスタレーションや、立体作品で使用する素材を用いた新たな平面作品を発表。また前回2021年の個展時には、陶と流木を積み重ねた立体作品を展示し、それまでの作風から変化したものとなった。

　昨年秋に急逝した同廊ディレクターの林聡から提案された本展タイトル「ダーク フォレスト」の言葉に導かれ、東影は昔から馴染みのある自宅の裏山の奥に分け入り、その場所での時間の経過のなかで見た光、聞こえた音を記録した。そこで自分の制作の根源的なものに改めて向きあうきっかけになったという。

　本展では、そのときの気づきをもとに、自己の根源を意識しながら感覚と思考を両軸とした作品制作に取り組んでいる。また、今回東影にとって初めての試みとなった写真作品も展示している。