2026.4.11

「建物公開2026 アニマルズ in 朝香宮邸」(東京都庭園美術館)開幕レポート。アール・デコの名建築に潜む、愛らしき動物たち

東京・白金台の東京都庭園美術館で、毎年恒例の建物公開展として「建物公開2026 アニマルズ in 朝香宮邸」が始まった。

文・撮影=橋爪勇介(編集部)

3階に位置する、市松模様の床が印象的なウインターガーデンも特別公開
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 東京・白金台。緑豊かな庭園の中に佇む東京都庭園美術館で、毎年恒例の建物公開展が開幕した。今年のテーマは「アニマルズ」。アール・デコの粋を集めた重要文化財・旧朝香宮邸を舞台に、邸内に息づく動物たちの意匠に光を当てる試みだ。会期は6月14日まで。

東京都庭園美術館の大広間

 本展は、そんな建物の室内装飾に表現された「動物」のモチーフに注目するもの。鳥や魚、ライオンなど、朝香宮家と縁の深い動物たちの姿を、当時のデザイナーたちがどのようにデザインとして取り入れ、モダンな空間を彩ったのか。その実践を造形美とともに観察できる機会となっている。

玄関に設置されている唐獅子

 まず来館者を迎えるのは、玄関に鎮座する鉛青銅の唐獅子だ。この一対の唐獅子は、朝香宮家が高輪南町御用邸(現在のグランドプリンスホテル高輪周辺)に住んでいた頃から所有していたもので、朝香宮夫妻が店先で気に入り購入したものだという。白金台へと引っ越す際に、いまの位置に設置された。

ペンギンの陶磁器。箱には「ペリカン」の文字も

 思わず笑みがこぼれるのが、次室に佇むペンギンの陶磁器だ。朝香宮鳩彦王・允子妃が1920年代に滞欧した際にが購入したロイヤル・コペンハーゲン製のもの。収納箱の蓋は夫妻の帰国後に製作されたとされており、ペンギンではなく「丁抹國製陶器 三羽揃ペリカン」と書かれている。これは当時の日本ではペンギンの存在が一般的ではなく、長いくちばしなどの特徴から、ペリカンと間違って記されたためだという。未知の動物をどうにか既存の知識に当てはめようとした、当時の日本人の初々しい眼差しが透けて見えるようだ。

大客室の天井付近の壁面装飾パネルに注目

 続く大客室では、壁面装飾パネルに注目したい。これは朝香宮邸の室内装飾の責任者だったアンリ・ラパン(1873〜1939)によるもので、木々が生い茂る空間にアーチ状の建造物、そして噴水の水を飲む鹿たちの姿が描かれており、牧歌的な雰囲気を醸し出す。

ラパンが手がけた壁面装飾パネル

 大食堂を彩る壁面装飾パネルもラパンの手によるもの。朱色のパーゴラの下の池では白鳥と黒鳥が泳いでいるが、注目したいのはその背後。壁泉の周囲に描かれた4つのモチーフだ。なかには現在も正体が不明のモチーフがあり、想像力を掻き立てられる。

ラジエーターの飾り金物

 朝香宮邸には、各所に暖房機器であるラジエーターが設置されており、それらは金属製の飾り金物によって覆われている。現存するラジエーター用の飾り金物のうち、大食堂と若宮寝室、合の間、若宮居間にあるものは、魚と貝がモチーフだ。

 このほかにも、本館内には様々な動物の姿が隠されている。建築とともに、目を凝らしてほしい。

会場では、絵画制作を趣味としていた允子妃が、成婚前の内親王時代に描いたスケッチも展示されている
ベランダ
北の間

新館にも注目

 本展の見どころは、建築に組み込まれた意匠だけでない。新館では、「アニマルズ」というテーマに連動し、「アール・デコの動物表現」「近代動物園の誕生と動物彫刻」「ラリックと動物」の3セクションで作品・資料が並ぶ。

新館の展示風景

 単純化させたフォルムで人気を博すフランソワ・ポンポン(1855〜1933)による愛らしい動物彫刻や、庭園美術館本館玄関のガラス・レリーフ扉も手がけたルネ・ラリック(1860〜1945)による繊細な作品群などに注目だ。

新館展示風景より、フランソワ・ポンポン《シロクマ》(1921-24)
新館展示風景より
新館展示風景より、ルネ・ラリックの作品群

 装飾美術の歴史と現代の表現が交差する、建物公開展ならではの展示構成が見どころとなる本展。なお会場では一部の作品を除き写真撮影が可能だ。美しい建築と、お気に入りの動物を写真に収められるのも本展の醍醐味と言えるだろう。