2025.10.18

「ライカの100年:世界を目撃し続けた1世紀」展(スパイラルガーデン)開幕レポート。ライカの100年にわたる歴史を振り返る

東京・青山にあるスパイラルガーデンで、「ライカI」誕生100周年を記念した「ライカの100年:世界を目撃し続けた1世紀」展が開幕した。会期は10月18日〜26日。

文・撮影=大橋ひな子(ウェブ版「美術手帖」編集部)

展示会場より
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 東京・青山にあるスパイラルガーデンで、「ライカI」誕生100周年を記念した「ライカの100年:世界を目撃し続けた1世紀」展が開幕した。会期は10月18日〜26日。

 本展では、ライカと写真文化の魅力にあらためて触れる機会として、ライカの100年にわたる歴史を振り返るとともに、写真を通じて深い絆で結ばれた植田正治と福山雅治による写真展、さらに「ライカ・ホール・オブ・フェイム・アワード」受賞の世界的写真家による作品展示が行われている。なお本展は、今年世界の主要5ヶ国の都市(ドバイ、ミラノ、ニューヨーク、上海、東京)を巡回しており、東京会場はその最後の舞台となる。

展示会場より

 起業家のエルンスト・ライツ2世(1871〜1956)が、35ミリ判カメラの量産に踏み切ったことが、ライカの歴史の一歩目となる。1925年、ライプツィヒで開催された春季見本市で発表されたものが「ライカI」。35ミリ判の小型で軽量なカメラである、初の「ライカ」が世に出た瞬間であった。このライカの登場により、写真撮影は日常生活に普及していくこととなる。本展では、ライカの足跡におけるひとつのマイルストーンである「ライカI」誕生の礎となった試作機「ウル・ライカ」やプロトタイプ「ライカ0型」が紹介されている。

展示風景より、「ウル・ライカ」レプリカ
展示風景より、「ライカ0型」市販モデル

 さらに、ライカの歴史とともに生まれた数々の貴重なカメラも紹介される。会場にはエリザベス女王のために製作された「ライカM6」プロトタイプや、Apple社で主要製品をデザインしてきたジョナサン・アイブとマーク・ニューソンが手がけ、世界に1台だけ製作された「LEICA M for (RED)」、1937年5月に火災炎上した飛行船「ヒンデンブルク号」の事故現場から発見された「ライカⅢa」、ピュリツァー賞を受賞した報道写真家・沢田教一が愛用していた「ライカM2」、戦場でフォトグラファーの命を救ったカメラなど、ライカの歴史を語る上で重要な鍵となる銘品が一堂に会している。

展示風景より、1937年5月に火災炎上した飛行船「ヒンデンブルク号」の事故現場から発見された「ライカⅢa」
展示風景より、ピュリツァー賞を受賞した報道写真家・沢田教一が愛用していた「ライカM2」

 スパイラルガーデンのアトリウムには、ライカ100年の軌跡をひとつの「渦」で表現した展示空間が登場。会期中17時以降になると、ライカギャラリー・インターナショナル代表兼アートディレクターであるカリン・レーン=カウフマンのキュレーションによる100点の写真作品がプロジェクション映像として会場に投影される。さらに、サウンドデザイナーの清川進也による、ライカのシャッター音を用いたサウンド・インスタレーションも同時に展開される。

展示風景より
展示風景より

 また、同じくアトリウムには世界的なアーティストやデザイナーとのコラボレーションモデルをはじめとした、特別仕様のライカや現行製品のラインナップも並び「ライカの過去から現在」に触れることができる。さらに、「ライカI」誕生100周年を記念して、100台限定で作られた特別限定モデル 「ライカM11 100 Years of Leica “ TOKYO JAPAN”」も紹介されている。

展示風景より

 アトリウムの壁面には、2011年から開催されている「ライカ・ホール・オブ・フェイム・アワード」の受賞者の作品が並ぶ。本アワードは、世界中の人々の心を揺さぶる作品や、忘れられない一瞬をとらえた作品を発表したライカフォトグラファーへ贈られる賞。2011〜24年までの受賞者の名作が並ぶ様子は圧巻だ。

展示風景より、「ライカ・ホール・オブ・フェイム・アワード」の受賞者の作品

 同じく会場内では、「植田正治×福山雅治写真展:Visual Conversation」も開催中。静謐なまなざしで風景と人物をとらえた写真界の巨匠・植田正治。その独創的な世界に深い敬意を抱き、自らの写真表現を追い求めてきた福山雅治。本展は、福山が“ 師” と仰ぐ植田との初の2人展となっている。

 ライカの100年にわたる歴史を振り返るとともに、ライカと写真文化の魅力にあらためて触れてみてはいかがだろうか。