2026.2.24

京都のアートホテル「BnA Alter Museum」が新たな客室を公開

京都・四条河原町に位置するアートホテル「BnA Alter Museum」が開業7年目の節目を迎え、新たなアートルームを公開した。

藤倉麻子「サンライト計画、緑の段差」(BnA Alter Museum, Kyoto) 撮影=守屋友樹
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 京都・四条河原町に位置するアートホテル「BnA Alter Museum」が開業7年目の節目を迎え、新規アートルームの制作および既存客室の大型改装を実施した。

 同ホテルは、全31室がアーティストが手がける「アートルーム」で構成されており、たんなる作品展示にとどまらず、宿泊という時間のなかで作品世界に没入する体験設計を特徴としてきた。近年、国内外でアートホテルへの関心が高まるなか、同館は滞在できるアートの先駆的存在としてアップデートを図る。

藤倉麻子「サンライト計画、緑の段差」

 今回新たに加わったのは、藤倉麻子による「サンライト計画、緑の段差」(304・404・504・604号室)だ。3DCGアニメーションを主軸に、都市インフラや風景の奥行きに注目して作品を制作してきた藤倉が、自然光と段差構造を用いて構想した空間だ。

藤倉麻子「サンライト計画、緑の段差」(BnA Alter Museum, Kyoto) 撮影=守屋友樹

 窓から差し込む光、外壁を思わせる質感の塗装、そして淡い緑を基調とした色彩設計。窓から差し込む光の中で、ベッドに腰掛けたり寝転んだりする行為が、公園の縁石や広場の段差に身を預ける感覚へと接続され、ホテルの客室でありながら「外にいるような居心地」となって開放的で落ち着く時間を生み出している。

 ベッドやベンチ、ミラーは鑑賞対象であると同時に実用性のある要素として配置され、「機能をもつ彫刻」という藤倉の関心が宿泊空間に実装されている。室内にいながら、公園の縁石や広場の段差に身を預けるような感覚を呼び起こす本作は、屋内外の境界を揺るがす試みといえる。

藤倉麻子「サンライト計画、緑の段差」(BnA Alter Museum, Kyoto) 撮影=守屋友樹

Mon Koutaro Ooyama「NEXTEFX – Abstract Flora - Dawn」「NEXTEFX - Abstract Flora - Dusk 」

 奈良を拠点に活動するアーティスト、Mon Koutaro Ooyamaによる新作「NEXTEFX – Abstract Flora」(701・901号室)も登場した。

Mon Koutaro Ooyama「NEXTEFX - Abstract Flora - Dawn (901)」(BnA Alter Museum, Kyoto) 撮影=守屋友樹

 音楽のエフェクトから着想を得た「NEXTEFX」は、2009年から続くMonの中核的作品シリーズとして、絵に包まれる体験を通して壁画を音響のように鑑賞する試みを継続してきた。本作では、過去2作が太古の空(501号室)・真昼の空(601号室)を背景とすることに対し、植物の生命感や開花のエネルギーをモチーフに、夕暮れの空を描く「Dusk」と朝の空を描く「Dawn」の2室を展開。

 壁から天井にまで展開する絵画とLEDプログラムが連動し、時間とともに表情を変える空間は、音楽のエフェクトから着想を得たシリーズの延長線上にある。ベッドに横たわりながら光の変化に包まれる体験は、強い刺激ではなく、穏やかさや懐かしさへと鑑賞者を導く。

Mon Koutaro Ooyama「NEXTEFX - Abstract Flora - Dusk (701)」(BnA Alter Museum, Kyoto) 撮影=守屋友樹)

三嶋章義「MY ROOM」

 既存客室の改装として、三嶋章義の「MY ROOM」(302・402号室)も刷新された。19世紀に発明された映像装置「フェナキストスコープ」を中心に据え、京都の情景を複層的なアニメーションとして立ち上げる。

 スクリーンやモニターを介さず、身体感覚に根ざした視覚体験を提示する点が特徴で、空間はより未来的な和モダンの内装へとアップデートされた。「縁起=自己と世界の境界」を体感する場として構想された本室では、眠りに入る前後の意識の揺らぎや、一晩という時間の質そのものが体験の一部となる。

三嶋章義「MY ROOM」(BnA Alter Museum, Kyoto) 撮影=守屋友樹

AOKI Takamasa「TRAVELING ROOM」

 音楽家・AOKI Takamasaによる「TRAVELING ROOM」(902・1002号室)も、高音質を追求する愛好家のために設計された没入型の音響空間として、新たにスピーカーやレコードを想起させる什器や、照明の調整機能を追加。日本各地で収録した自然音と電子音を融合させたサウンドが、4.1サラウンド構成で再生される。

 とりわけ低周波や揺らぎを重視した設計により、空間全体が呼吸するかのような感覚を生み出す本室は、「聴く」こと以上に「身体で体感する音場」を追求。視覚中心のアート体験とは異なる、音を軸とした没入型滞在を提案する。

AOKI Takamasa「TRAVELING ROOM(1002)」(BnA Alter Museum, Kyoto)

 これらの部屋の予約は、3月1日より受け付けがスタートする。宿泊者は作品を鑑賞するのではなく、その内部で時間を過ごす。アートと生活の境界を横断する体験は、京都という観光都市の中心で、さらに深化している。

 なお、館内1・2階では上記アーティストたちが参加する展覧会「客室のエコトーン」(2月14日〜6月14日)も開催中だ。