2026.1.13

フィリップ・ティナリ、UCCA館長を退任。香港・大館副館長兼アート部門統括に就任へ

中国を代表する現代美術機関「UCCA 現代アートセンター(UCCA Center for Contemporary Art)」を15年にわたり率いたフィリップ・ティナリが同館館長兼CEO職を退任し、香港・大館(タイクン)の副館長兼アート部門統括に就任することが発表された。

フィリップ・ティナリ Courtesy of Tai Kwun

 中国を代表する現代美術機関である「UCCA 現代アートセンター(UCCA Center for Contemporary Art、以下UCCA)」は、フィリップ・ティナリが館長兼CEO職を退任すると発表した。後任のCEOには孔令祎(コン・リンイー)が就任し、副館長には郭希(グオ・シー)が任命される。新体制は2026年の旧正月より発足する。

 ティナリは2011年から26年まで約15年にわたりUCCAを率い、同館を中国におけるもっとも影響力のある現代美術機関のひとつへと成長させた。在任中、UCCAは北京本館に加え、UCCA Dune(北戴河)、UCCA Edge(上海)、UCCA Clay(宜興)を含む4拠点で150以上の展覧会と多彩な公共プログラムを展開。中国の現代美術を国際的な文脈に接続すると同時に、多くの専門人材と新たな観客層を育成してきた。複数拠点を横断的に運営するための組織基盤とマネジメントモデルを確立した点も、重要な功績として評価されている。

 退任にあたりティナリは、「この15年間UCCAを率いることができたのは、キャリアにおける最大の名誉だった」とコメントし、アーティスト、専門家、支援者、観客への感謝を表明した。

 ティナリはUCCA退任後、2月23日付で香港の歴史文化複合施設「大館(タイクン)」において、副館長兼アート部門統括に就任する。館長のティモシー・カルニンと協働し、現代美術施設「大館コンテンポラリー」を軸に、ヘリテージ、現代美術、パフォーミングアーツを横断する長期的な芸術ビジョンの形成を担う予定だ。

 就任に際しティナリは、「大館の成長を長年注視してきた。次の章に関われることを心から楽しみにしている」と述べ、国際的な発信力の強化と、地域コミュニティとの関係深化に意欲を示した。カルニンもまた、北京でUCCAを世界的機関へと導いたティナリの実績を評価し、「2028年の開設10周年以降を見据える大館にとって、重要な戦力となる」と期待を寄せている。

 今回の人事は、UCCAを取り巻く厳しい経営環境とも重なる。2025年7月、香港の英字紙『サウス・チャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)』は、UCCAが約6ヶ月にわたり賃金支払いを遅延させていた疑いがあると報じたほか、上海拠点「UCCA Edge」では展覧会の活動が停滞し、今後の計画が不透明な状況にあると伝えた。北京・798芸術区における賃貸条件の厳格化、チケット収入の減少、国際輸送費の高騰なども、財務状況を圧迫しているという。

 UCCAのトップ交代とティナリの香港移籍は、中国本土における経済減速という構造的背景のもと、現代美術機関の運営モデルが転換期を迎えていることを示す動きと言えそうだ。