2026.8.28

「水滸伝」展が東京ステーションギャラリーで開催。その奥深い魅力と多様な広がりに迫る

東京・丸の内の東京ステーションギャラリーで、「水滸伝」展が開催される。会期は9月19日〜11月8日。

歌川国芳《通俗水滸伝豪傑百八人之一人 花和尚魯知深初名魯達》(江戸時代、19世紀) 個人
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 東京・丸の内の東京ステーションギャラリーで、「水滸伝」展が開催される。会期は9月19日〜11月8日。

『水滸伝』の奥深い魅力に迫る

 中国四大奇書のひとつとされる小説『水滸伝』は、北宋時代の史実をもとに成立した。物語の舞台は12世紀、徽宗(きそう)皇帝の治世。腐敗した政権に憤りを抱く宋江(そうこう)率いる108人の豪傑たちが、要塞「梁山泊(りょうざんぱく)」へ集結する、というものだ。

 本作が日本に伝来した江戸時代、国内では一大ブームが巻き起こり、独自の翻案や新たな表現が次々と生み出されていった。江戸時代後期の戯作者・曲亭馬琴(1767〜1848)は、江戸時代後期の浮世絵師・葛飾北斎(1760〜1849)の挿絵とともに『新編水滸画伝』(1805)を刊行。さらにその日本版ともいえる『南総里見八犬伝』(1814〜42)を著すなど、後世へ続く数多くの作品群の礎を築いた。また、同時代の浮世絵師・歌川国芳(1798〜1861)が豪傑たちを描いた錦絵は出世作として名高い。現代においても小説、マンガ、ドラマ、ゲームといった多彩なメディアを通じ、『水滸伝』のイメージは広く親しまれている。

 本展では、『水滸伝』に着想を得た作品群とともに、物語を生み出した時代背景やその世界観を美術と資料から紐解いていく。北宋から清に至る中国美術、そして江戸から現代までの日本美術を多角的に展観し、『水滸伝』がもつ奥深い魅力の真相に迫る。

歌川国芳《通俗水滸伝豪傑百八人之一個 九紋龍史進 跳澗虎陳達》(江戸時代、19世紀) 個人

全5章でたどる「水滸伝」の世界と展開

 展示は全5章で構成される。まず第1章「梁山泊へようこそ」では、歌川国芳が躍動感あふれるタッチで描いた「梁山泊の世界」を紹介。出世作「通俗水滸伝豪傑百八人之一個(壱人)」シリーズより、現在確認されている全74枚を一挙に公開する。

 続く第2章「豪傑たちの生きた時代」では、『水滸伝』の豪傑たちが誕生した背景にあった社会の矛盾に着目。繁栄と不穏が交錯する北宋時代末期の世界を、宮廷文化やゆかりの文物を通してたどっていく。

重要文化財 趙浙《清明上河図》(部分、明時代・万暦5年[1577]) 林原美術館【会期中場面替えあり】
《青磁 水仙盆》(北宋時代、11世紀末~12世紀初)汝窯 大阪市立東洋陶磁美術館(住友グループ寄贈/安宅コレクション) 撮影:六田知弘

 フィクションである『水滸伝』は、1121年に徽宗朝で起きた宋江の反乱を題材に誕生した。やがて本作に触発された作品群が、中国国内のみならず日本でも花開く。第3章「武侠小説・水滸伝の誕生と流行」では、『忠義水滸全伝』(明代末、17世紀)をはじめ、『水滸伝』のスピンオフとして書かれた『金瓶梅』の改訂版である『新刻繍像批評金瓶梅』(明代末、17世紀)、そして日本の絵師が中国の水滸伝群像を模写した作品などを展示。『水滸伝』がどのように生まれ、広まり、多層的なイメージを纏っていったのかを俯瞰する。

『忠義水滸全伝』(明時代末、17世紀) 東京大学東洋文化研究所【会期中ページ替えあり】

 第4章「拡張する英雄像」では前章に引き続き、日本へもたらされた17世紀以降の展開に焦点を当てる。図像表現の先駆けとなった曲亭馬琴作・葛飾北斎画『新編水滸画伝』をはじめ、国芳による多彩な表現、さらには馬琴の『南総里見八犬伝』への展開までを追う。あわせて歌舞伎、狂画、遊女を豪傑になぞらえた錦絵、双六や半纏なども紹介し、『水滸伝』のイメージがいかに人々の日常へ浸透していたかを提示する。

曲亭馬琴作・葛飾北斎画『新編水滸画伝』初編 巻之十(江戸時代・文化4年[1807]) 浦上蒼穹堂
卍斎田蝶《水滸伝浪切張順刺子半纏》(江戸時代、19世紀) 其角堂コレクション

 最終章となる第5章「忠義のゆくえ」では、『水滸伝』が現代日本の文化・芸術のなかでどう解釈され、忠義や抵抗といった主題がいかに変容したかを探る。会場では、物語を彩った挿絵やマンガ原画、美術家・白髪一雄(1924〜2008)のアクション・ペインティング、連続ドラマ『北方謙三 水滸伝』の衣裳、現代美術家・小林勇輝(1980〜)のパフォーマンスなど現代における多様な広がりを紹介する。

さいとう・たかを《『水滸伝』原画》(1996) ©︎さいとう・たかを/さいとう・プロダクション