2025.6.6

今週末に見たい展覧会ベスト9。モネ、AIとビデオゲーム、キース・ヘリングにART OSAKAまで

今週閉幕する/開幕した展覧会のなかから、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。なお、最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。

「西洋絵画、どこから見るか?」(国立西洋美術館)の展示風景より、左はアンドレア・デル・サルト《聖母子》(1516頃、国立西洋美術館蔵)。右はべルナルディーノ・ルイーニ《マグダラのマリアの回心》(1520頃、サンディエゴ美術館蔵)
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もうすぐ閉幕

「西洋絵画、どこから見るか?」展(国立西洋美術館

展示風景より

 国立西洋美術館の「西洋絵画、どこから見るか?―ルネサンスから印象派まで サンディエゴ美術館 vs 国立西洋美術館」(通称「どこみる展」)は6月8日まで。会場レポートはこちら

 本展は、アメリカのサンディエゴ美術館と国立西洋美術館の所蔵品をあわせた88点を展示し、ルネサンスから19世紀末に至る約600年の西洋美術史をたどるものだ。

 展覧会は、時代ごとに「ルネサンス」「バロック」「18世紀」「19世紀」と章立てされており、全88点の作品を30以上の小セクションに分けて展示。川瀬は、「作品を並べて比較することで、それぞれの個性や共通点がより際立つ。 たんなる作品の鑑賞にとどまらず、「どのように見ると面白いのか?」という視点から構成されている。

会期:2025年3月11日~6月8日
会場:国立西洋美術館
住所:東京都台東区上野公園7-7
電話番号:050-5541-8600
開館時間:09:30~17:30(金土~20:00)※入館は閉館30分前まで
料金:一般 2300円 / 大学生 1400円 / 高校生 1000円 / 中学生以下 無料

「モネ 睡蓮のとき」(京都市京セラ美術館

第1章の展示風景より、左から《睡蓮、夕暮れの効果》(1897、マルモッタン・モネ美術館蔵)、《睡蓮》(1897-98頃、鹿児島県立美術館蔵)。展示は「睡蓮」で幕を開ける 撮影=中島良平

 京都市京セラ美術館で開催されている「モネ 睡蓮のとき」展は6月8日まで。会場レポートはこちら

 印象派を代表する画家のひとり、クロード・モネ(1840〜1926)は晩年、視力を失いながらも色と光の表現を探求した。本展は具象と非具象との境界も曖昧になり、印象派の表現の極地に到達したモネの、1910年代以降の作品を中心に構成したものだ。

 パリのマルモッタン・モネ美術館より、日本初公開も含むおよそ50点の作品が来日。国内の美術館収蔵作品とあわせて展示される貴重な機会となっている。

会期:2025年3月7日~6月8日
会場:京都市京セラ美術館 本館 北回廊1階・南回廊1階
住所:京都市左京区岡崎円勝寺町124
電話番号:075-771-4334
開館時間:10:00~18:00
料金:一般 2300円 / 大学・高校生 1700円 / 中学・小学生 1000円

「鷹野隆大 カスババ ―この日常を生きのびるために」(東京都写真美術館

展示風景より

 東京・恵比寿の東京都写真美術館で、「総合開館30周年記念 鷹野隆大 カスババ ―この日常を生きのびるために」が会期は6月8日まで。会場レポートはこちら

 鷹野隆大(1963〜)は、写真集『IN MY ROOM』(2005)で第31回木村伊兵衛写真賞を受賞し、現在も国内外で活躍を続ける写真家・アーティストだ。その写真集に代表されるセクシュアリティをテーマとした作品と並行し、「毎日写真」や「カスババ」といった日常のスナップショットを手がけ、さらに東日本大震災以降は、「影」を被写体とした写真の根源にせまるテーマにも取り組んでいる。

 今回の展覧会タイトルにもある「カスババ」とは、「カスのような場所」の複数形を指した鷹野による造語だ。鷹野は本展に際して次のように語っている。「自分の身近な場所とはその(乱雑な東京の都市景観の)なかにあり、本来あるものをないもののように扱うことが暴力的な行為である気がした。無理矢理シャッターを切り続けることで、そこにおもしろさを見出すようになっていった」。

会期:2025年2月27日~6月8日
会場:東京都写真美術館 2階展示室
住所:東京都目黒区三田 1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内 
開館時間:10:00〜18:00(木金〜20:00)※入館は閉館30分前まで  
料金:一般 700円 / 学生 560円 / 中高生・65歳以上 350円

「マシン・ラブ:ビデオゲーム、AIと現代アート」(森美術館

展示風景より、ルー・ヤン《独生独死―流動》

 東京・六本木の森美術館で、人類とテクノロジーの関係を考察しながら、未来の歩き方を想像する「マシン・ラブ:ビデオゲーム、AIと現代アート」展が6月8日まで開催されている。会場レポートはこちら

 本展覧会の開催意図について、同館館長の片岡真実はつぎのように説明する。「生成AIは頻繁に報道されているように、広く社会を変革するものとして注目を集めている。そしてビデオゲームは世界の全人口の40パーセントがプレイをしているという統計もある。こうした状況が現代美術にどのような影響をもたらしているのかを考える展覧会としたい」。

 参加作家はビープル、ケイト・クロフォード、ヴラダン・ヨレル、ディムート、藤倉麻子、シュウ・ジャウェイ(許家維)、キム・アヨン、ルー・ヤン(陸揚)、佐藤瞭太郎、ジャコルビー・サッターホワイト、ヤコブ・クスク・ステンセン、アドリアン・ビシャル・ロハス、アニカ・イの12名。担当キュレーターは片岡と同館アジャンクト・キュレーターのマーティン・ゲルマン、同館アソシエイト・キュレーターの矢作学。また、企画アドバイザーとしてNTTインターコミュニケーション・センター[ICC]主任学芸員の畠中実と、メディア・アーティストの谷口暁彦が携わっている。

会期:2025年2月13日〜6月8日
会場:森美術館
住所:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー 53階
電話番号:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10:00〜22:00(火〜17:00、ただし4月29日、5月6日は〜22:00)※入館は閉館の30分前まで
休館日:会期中無休
料金:[平日]一般 2000円 / 学生(高校・大学生) 1400円 / 子供(中学生以下) 無料 / シニア(65歳以上) 1700円 [土日祝]一般 2200円 / 学生(高校・大学生) 1500円 / 子供(中学生以下) 無料 / シニア(65歳以上) 1900円

鈴木ヒラク「海と記号  Ocean and Signs」(ポーラ ミュージアム アネックス

海と記号 #06 2025(16点組) photo by Ooki Jingu ©Hiraku Suzuki Studio

 ポーラ ミュージアム アネックスで、鈴木ヒラクの展覧会「海と記号 Ocean and Signs」が6月8日まで開催されている。

 鈴木ヒラクは、「描く」と「書く」のあいだを主題に、平面・彫刻・映像・インスタレーション・パフォーマンスなど、ドローイングの概念を拡張するような様々な制作活動を展開。壁画から、植物や鉱物、光の軌跡といった非人間の描く線の断片までをアーカイヴし、身体を通して再構築することで、「ドローイングの生態学」ともいえる独自の体系を生み出してきた。

 本展の中心となるのは、深海や宇宙を想起させる瞑想的な青の背景に、シルバーで描かれた連作「海と記号」(2025)だ。会場では16点組の大型キャンバスが円環状に配置される。また、考古学的遺物の写真をシルバーで塗り消し、架空の記憶を描き出す《Casting(Ocean)》(2025)や、新作映像インスタレーションもあわせて展示する。

会期:2025年4月25日~6月8日
会場:ポーラ ミュージアム アネックス
住所:東京都中央区銀座1-7-7 ポーラ銀座ビル3階
電話:050-5541-8600
開館時間:11:00~19:00(入場は閉館の30分前まで)
休館日:無休
観覧料:無料

今週開幕

「ART OSAKA 2025」(大阪市中央公会堂、クリエイティブセンター大阪)

The Image of TechnoTherapy Photo by Kazuo Fukunaga

 現代美術のアートフェア「ART OSAKA 2025」が、大阪市中央公会堂(6月6日~8日)とクリエイティブセンター大阪(6月5日~9日)の2つの会場で開催される。

 本フェアは「Galleries セクション」「映像プログラム」「Expanded セクション」の3つのセクションで展開。まず「Galleries セクション」は国指定重要文化財である大阪市中央公会堂の3階で開催され、各ギャラリーが個々にブースを出展する形式。日本国内のみならず、韓国や台湾からの参加も含む総勢44軒のギャラリーが一堂に会し展示・販売を行う。

「映像プログラム」は大阪市中央公会堂の大集会室で開催される。プログラムは、大きく2つのプログラムから構成。1つは、プログラム・キュレーションに批評家/キュレーターの梅津元を迎え、 1960年代から現在までの、実験映像、ヴィデオアート、美術家による映像など、重要な作品の数々を一挙に上映し、日本における「映像表現」を探るプログラム。 2つ目のプログラムは、大阪在住の美術家・森村泰昌がプロデュースした伝説的なアートプロジェクト「テクノテラピー」のドキュメンタリー映像の特別上映だ。

 そしてExpandedセクションは近代化産業遺産である北加賀屋・クリエイティブセンター大阪(名村造船所大阪工場跡地 / 近代化産業遺産)で開催。19組の国内外作家が出展し、メディアの垣根を越えた作品群が展示販売される。 

オンラインチケット(2会場入場可能):3500円(当日券4000円)/ 小学生以下 無料
Expandedチケット:1500円(当日券2000円)/ 大学生以下 無料

「Keith Haring: Arching Lines 人をつなぐアーチ」(中村キース・へリング美術館

Designed: ©︎Kent Iitaka Photo: Tseng Kwong Chi ©Muna Tseng Dance Projects Inc Art: ©Keith Haring Foundation

 中村キース・へリング美術館で「Keith Haring: Arching Lines 人をつなぐアーチ」が開催される。会期は6月7日~2026年5月17日。

 今年、没後35年を迎えたキース・ヘリング(1958〜1990)。同館が新たに収蔵する《無題(アーチ状の黄色いフィギュア)》を記念して開催される本展では、ヘリングの彫刻に焦点をあて、独自の美学と哲学にもとづく造形表現を紹介する。

 ヘリングは、ニューヨークの地下鉄で展開した「サブウェイ・ドローイング」によって、アートを媒介とした大衆との直接的なコミュニケーションの可能性を確信する。その後、世界各地での壁画制作、アートを多くの人に届けることを目的とした「ポップショップ」の展開、社会的メッセージを発信する活動など、従来のアーティストの枠にとらわれないプロジェクトを実現していった。本展では、ヘリングの作品が持つ公共性を象徴するのが彫刻を中心に紹介する。

会期:2025年6月7日~2026年5月17日
会場:中村キース・へリング美術館
住所:山梨県北杜市小淵沢町10249-7
電話:0551-36-8712
開館時間:9:00~17:00 ※入館は閉館30分前まで
休館日:会期中無休
観覧料:一般 1500円 / 16歳以上の学生 800円 / 障がい者手帳等ご提示の方 600円(同行者1名同料⾦)/ 小人(15歳以下)無料

「死と再生の物語(ナラティヴ)―中国古代の神話とデザイン」(泉屋博古館東京

 泉屋博古館東京で、企画展「死と再生の物語(ナラティヴ)―中国古代の神話とデザイン」が開催される。会期は6月7日〜7月27日。

 高度な文明が発達した中国古代では、優れた技術によって様々な文物がつくり出され、それらには現代の眼にも斬新で刺激的なデザインの数々が施された。

 本展では、泉屋博古館(京都東山・鹿ヶ谷)所蔵の青銅鏡の名品を中心として、中国古代の洗練されたデザイン感覚、その背景となった神話や世界観を紹介。そのうえで「動物/植物」「天文」「七夕」「神仙への憧れ」という主に4つの観点からデザインの背景を読み解いていき、さらには日本美術に与えた影響についても紹介される。

会期:2025年6月7日~7月27日
会場:泉屋博古館東京
住所:東京都港区六本木1-5-1
電話:050-5541-8600
開館時間:11:00~18:00(金〜19:00)※入館は閉館30分前まで
休館日:月(ただし、7月21日は開館)、7月22日
観覧料:一般 1200円 / 学生 600円 / 18歳以下、障がい者手帳等をご提示の方 無料

PRADA MODE 大阪(うめきた公園)

 2023年、プラダと妹島和世とのコラボレーションにより東京都庭園美術館で開催された「PRADA MODE 東京」。両者が再びコラボレーションする「PRADA MODE 大阪」が大阪・梅田のうめきた公園で6月8日から15日まで一般公開される。

 「PRADA MODE 大阪」は、プラダが現代文化をテーマにしたイベントシリーズの最新版として、大阪のうめきた公園にあるSANAA設計の大屋根施設にて開催される。このイベントは、妹島が手がける「犬島プロジェクト」の進行中の作品を紹介するもの。

 会場では模型やビデオ、その他の資料を通じてその取り組みが紹介されるほか、妹島が監修した対談やワークショップも予定されている。

会期:2025年6月8日~6月15日
会場:うめきた公園
住所:大阪府大阪市北区大深町
開館時間:11:00~19:00観覧料登録制(イベント参加登録はこちら