2025.5.16

キース・ヘリングの没後35周年を記念。彫刻作品に焦点を当てた展覧会で新収蔵品も披露

山梨県北杜市にある中村キース・ヘリング美術館で、没後35周年を記念した「Keith Haring: Arching Lines 人をつなぐアーチ」が開催される。

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 山梨県北杜市にある中村キース・ヘリング美術館で、キース・へリングの没後35周年を記念し、彫刻作品に焦点を当てた「Keith Haring: Arching Lines 人をつなぐアーチ」が開催される。会期は6月7日~2026年5月17日。

 キース・へリングは1980年代のアメリカ美術を代表するアーティストで、人や犬といったモチーフを輪郭線のみで描く独自のスタイルが特徴である。1979年に出身地であるペンシルベニア州からニューヨークに移住した直後から、地下鉄構内の広告板にチョークで描く「サブウェイ・ドローイング」を開始。「誰にでも届く視覚言語」の可能性を追求したヘリングは、ギャラリストのトニー・シャフラジから「君のアルファベットを風景に置いてみたらどうだ」という提案を受け、1985年から彫刻作品を制作し始める。自身の描いてきたモチーフを三次元化し、空間に拡張させることで絵画表現とは異なる公共性と永続性を追い求めてきた。

トニー・シャフラジ・ギャラリーとレオ・キャステリ・ギャラリーで同時に開催された個展のポスター 1985

 本展では、同館が新たに収蔵した全長5メートル超の彫刻《無題(アーチ状の黄色いフィギュア)》を中心に、同館所蔵の全13点の彫刻作品が公開される。鋼鉄やアルミニウムによるへリングの彫刻は、都市景観や自然風景の中に溶け込みながら、人々の体験の場を創出してきた。本展では、展示室内および屋外空間に彫刻作品が展示されるため、時間帯や天候によって作品の様々な表情を体感できるだろう。

 また、1983年に蛍光塗料を用いて制作されたペインティング《無題》および版画作品《無題》が、ブラックライトのもとで特別展示される。同館では約5年ぶりのライトアップ展示となり、へリングが生きた80年代ニューヨークのサイケデリックな空気を想起させる空間で作品を見ることができるだろう。

2018年のインスタレーションの様子

 会場では、展示作品の理解を深めるための会場限定ブックレットが販売される。本展に出品される約80点の作品から、厳選された16点の作品を掲載。ヘリング自身の言葉と書き下ろしの作品解説も収録される。

 なお本展の会期中には、中村キース・ヘリング美術館を設計した建築家・北川原温の初美術館個展「北川原温 時間と空間の星座」を同時開催する。北川原の創作のソースを「星」、建築を「星座」に見立て、その方法論や生成の過程を探る内容となる。