2025.4.11

今週末に見たい展覧会ベスト13。万博パビリオンからKYOTOGRAPHIE、エルヴィン・ヴルムに士郎正宗まで

今週閉幕する/開幕した展覧会のなかから、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。なお、最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。

大阪・関西万博シグネチャーパビリオン「Better Co-Being」の塩田千春《言葉の丘》
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もうすぐ閉幕

エド・イン・ブラック 黒から見る江戸絵画(板橋区立美術館

伊藤若冲 乗興舟(部分) 千葉市美術館

 板橋区立美術館の「エド・イン・ブラック 黒から見る江戸絵画」は4月13日まで。日本絵画において、「黒」は古くから欠かすことのできない要素のひとつだった。多くの人が絵を楽しむようになった江戸時代には、絵画表現が広がり、黒は多様にもちいられるようになった。

 本展では黒に焦点をあて、江戸絵画にみる黒の表現とともに当時の文化や価値観なども紹介。月夜の情景や人々の暮らしの様子といった夜を描いた作品のなかでも、影や暗闇などの描写に注目し、黒がどのように用いられたのかを探る。また、背景を黒く塗り込んだ作品や、黒を基調とした「墨彩色」「紅嫌い」と呼ばれる趣味人たちに好まれた浮世絵などから、それらが何を象徴するのか検討している。

会期:2025年3月8日~4月13日
会場:板橋区立美術館
住所:東京都板橋区赤塚5-34-27
電話:03-3979-3251
開館時間:9:30~17:00(入館は16:30まで)
観覧料:一般 650円 / 大学生 450円 / 高校生以下 無料

緑の惑星 セタビの森の植物たち(世田谷美術館

塔本シスコ 春の庭 1990年 世田谷美術館蔵

 世田谷美術館の「世田谷美術館コレクション選 緑の惑星 セタビの森の植物たち」は4月13日まで。

 緑豊かな風景画や、色とりどりの花々、植物をモチーフにした作品は数多くある。本展では、世田谷美術館のコレクションから古今東西、様々な手法で植物を表現した作品約130点を展示している。

 植物への感謝と敬意、そして愛、ときに畏怖の思い溢れる作品によって、人と植物の関係を考える機会となっている。

会期:2025年2月27日~4月13日
会場:世田谷美術館
住所:東京都世田谷区砧公園1-2
電話:03-3415-6011
開館時間:10:00~18:00(入場は17:30まで)
観覧料:一般 500円 / 65歳以上 400円 / 大高生 400円 / 中小生 300円 / 未就学児 無料

「没後120年 エミール・ガレ:憧憬のパリ」(サントリー美術館

エミール・ガレ ランプ「ひとよ茸」 1902頃 サントリー美術館

 東京・六本木のサントリー美術館で「没後120年 エミール・ガレ:憧憬のパリ」が4月13日まで開催されている。会場レポートはこちら

 エミール・ガレ(1846〜1904)はフランス北東部ロレーヌ地方の古都ナンシーで、父が営む高級ガラス・陶磁器の製造卸販売業を引き継ぎ、ガラス、陶器、家具において独自の世界観を展開した。そのいっぽう、ガレ・ブランドの名を世に知らしめ、彼を国際的な成功へと導いたのは首都パリだった。

 ガレの没後120年を記念する本展では、ガレが地位を築いたパリとの関係に焦点をあて、ガレの創造性の展開を顧みている。フランスのパリ装飾美術館から万博出品作をはじめとした伝来の明らかな優品が多数出品されているほか、近年サントリー美術館に収蔵されたパリでガレの代理店を営んだデグペルス家伝来資料を初公開している。

会期:2025年2月15日~4月13日
会場:サントリー美術館
住所:東京都港区赤坂9-7-4(東京ミッドタウン ガレリア3F)
電話:03-3479-8600
開館時間:10:00~18:00(4月12日は〜20:00) ※いずれも入館は閉館の30分前まで
観覧料:一般 1700円 / 大学・高校生 1000円 / 中学生以下 無料

特別展「カナレットとヴェネツィアの輝き」(京都文化博物館

東京展(SOMPO美術館)での展示風景より、カナレット《昇天祭、モーロ河岸のブチントーロ》(ダリッジ美術館、ロンドン)

 京都文化博物館で、4月13日まで特別展「カナレットとヴェネツィアの輝き」が開催されている。

 18世紀、ヴェネツィアを訪れたイギリスの貴族たちが旅の記念にと争うように買い求めたのが画家・カナレット(1697〜1768)のヴェドゥータ(景観画)だった。輝く水面に整然とした建築物、祝祭的な雰囲気など、ヴェネツィアに対する理想的なイメージは、雄大さと緻密さをあわせ持つカナレットのヴェドゥータを通して定着していった。

 本展では、ヴェドゥータの巨匠・カナレットの全貌を紹介。カナレットが描く壮麗なヴェネツィアの景観を通して、ヴェドゥータというジャンルの成立過程をたどるとともに、カナレットとは異なる眼差しでヴェネツィアをとらえた19世紀の画家たちの作品もあわせて展示している。

会期:2025年2月15日~4月13日
会場:京都文化博物館
住所:京都府京都市中京区三条高倉
電話:075-222-0888
開館時間:10:00~18:00(金〜19:30)※入場は閉室の30分前まで
観覧料:一般 1800円 / 大学・高校生 1200円 / 中学・小学生 600円 / 未就学児(要保護者同伴)、障がい者手帳などを提示の方と付き添い1名まで 無料

今週開幕

大阪・関西万博シグネチャーパビリオン(大阪・関西万博会場内)

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 4月13日に開幕する大阪・関西万博。その会場中央部では、8人のプロデューサー(宮田裕章、石黒浩、中島さち子、落合陽一、福岡伸一、河森正治、小山薫堂、河瀨直美)が主導するパビリオン「シグネチャーパビリオン」も併せて開館する。各パビリオンのレポートはこちら

 宮田裕章プロデュースのシグネチャーパビリオン「Better Co-Being」は塩田千春宮島達男、そして宮田裕章 with EiMが参加し、それぞれがシークエンスを担い、3つの観賞体験を提示。

 メディアアーティスト・落合陽一がプロデュースする「いのちをみがく」がテーマのパビリオン「null2」は、建築自体が収縮や振動を繰り返し、現実とデジタルの境界が曖昧になるような、文字通り映像に包み込まれる没入型の体験ができる。

会期:2025年4月13日〜10月13日(184日間)
会場:夢洲

「Study:大阪関西国際芸術祭 2025」(大阪市内各所)

マウリツィオ・カテラン Ave Maria 2007
© Maurizio CattelanPhoto: Attilio MaranzanoCourtesy of Maurizio Cattelan`s Archive and Institute for Cultural Exchange, Tübingen

 大阪市内各所では大阪・関西万博に併せて、4月11日より「Study:大阪関西国際芸術祭 2025」が開催される。

 本芸術祭は「ソーシャルインパクト」をテーマに、文化芸術による経済活性化や社会課題の可視化を目指すもの。今年は大阪・関西万博と同時に開催される。会場は、大阪・関西万博会場(夢洲)をはじめ、安藤忠雄設計の大阪文化館・天保山、黒川紀章設計の大阪府立国際会議場(中之島)、西成・船場地区など、大阪・関西の象徴的な場所で展開。

 158ヶ国が参加し、2820万人の来場者が見込まれるこの機会に、関西発の文化芸術を世界に向けて発信するとともに、ドイツ、韓国、EU(欧州連合)などの機関と連携したアートプロジェクトを通じて、グローバル規模で新たな対話と発見の場が創出される。

会期:[開催期間]2025年4月11日~10月13日、[フルオープン(万博会場含む)]2025年4月13日~10月13日
住所:大阪府大阪市内各所
観覧料:展覧会パスポート(開催期間中) 一般 3500円 / 学生 3000円
※詳細はウェブサイトを参照

「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭2025」(京都市内各所)

マーティン・パー Chichén Itzá, Mexico, 2002 © Martin Parr/Magnum Photos

 今年で第13回を迎える日本最大の写真祭「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」が、4月12日よりスタートする。本企画のメインプログラムには、14組のアーティストの参加が決定しており、京都市内の14会場で14のプログラムを開催する。会場は、寺院や京都を象徴する名所、現代的な空間に加え、今年は京都駅での写真壁画というユニークな企画もありKYOTOGRAPHIEが都の街へと広がる。

 2025年は「HUMANITY」をテーマに、戦争、ジェンダー、アイデンティティ、感情、コミュニティ、つながり、自然、痛み、愛といった様々な視点から探求した展覧会を開催。また、追加発表として、YOTOGRAPHIEがキュレーションする土田ヒロミらによるグループ展では、2025年に考えるべき問題を提示する展示を八竹庵(旧川崎家住宅)にて行う。

 参加アーティストは、アダム・ルハナ、イーモン・ドイル、エリック・ポワトヴァン、グラシエラ・イトゥルビデ、劉星佑(リュウ・セイユウ)、JR、甲斐啓二郎、レティシア・キイ、リー・シュルマン&オマー・ヴィクター・ディオプ、石川真生、マーティン・パー、ブシュパマラ・N、𠮷田多麻希、土田ヒロミほか。

会期:2025年4月12日~5月11日
会場:京都市内16会場
観覧料:(パスポートチケット)一般 6000円 / 学生 3000円
※詳しくは公式ウェブサイトを要確認

「エルヴィン・ヴルム 人のかたち」(十和田市現代美術館

ファット・ハウス 2010 撮影=小山田邦哉

《ファット・ハウス》や《ファット・カー》などの作品で知られるオーストリアのアーティスト エルヴィン・ヴルムの日本初個展が、青森の十和田市現代美術館で4月12日に開幕。

 ヴルムは彫刻の概念を徹底的に拡張し、時間、質量と表面、抽象と表現の概念について問いかけてきた。その作品は身の回りの日用品を用いて、社会に存在する規範・制度・権力の構造を面白おかしく炙り出し、鑑賞者に様々な問いを提示する。

 本展では、最新作の《学校》を初公開。歪められた学校の教室の内部には、過去に使用されていた「時代遅れ」の教材が掲示され、学校という制度が持つ権力や「正しさ」が曖昧であることが示されるという。また、聖職者が奇妙なポーズで写る「司祭と修道女」の写真シリーズや、近年制作された「皮膚」や「平らな彫刻」など、様々な技法からなる作家の作品が紹介される。

会期:2025年4月12日〜11月16日
会場:十和田市現代美術館
住所:青森県十和田市西二番町10-9
電話番号:0176-20-1127 
開館時間:9:00〜17:00 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月(祝日の場合は翌日)
料金:一般 1800 円(常設展含む) / 高校生以下無料

「鴨治晃次 展|不必要な物で全体が混乱しないように」(ワタリウム美術館)

展示風景より、「静物」シリーズ

 東京・外苑前のワタリウム美術館で、ポーランドを拠点に活動を続ける美術家・鴨治晃次による日本初の展覧会「鴨治晃次 展|不必要な物で全体が混乱しないように」がスタートした。会場レポートはこちら

 鴨治は1935年東京生まれ。1953年から58年にかけて武蔵野美術大学で麻生三郎、山口長男に師事した。60年にポーランドのワルシャワ美術アカデミー入学し66年に修了。アカデミー卒業後の67年にはフォクサル・ギャラリーで活動を始めた。その活動はポーランドの現代美術の発展史において重要な役割を果たしており、現在もポーランドを拠点に活動を続けている。

 本展は、3月31日に90歳を迎えた鴨治晃次による66年ぶりとなる帰国展でもあり、ポーランドのザヘンタ国立美術館とアダム・ミツキェヴィチ・インスティテュート(IAM)によって企画されたもの。会場では、60年代から今日までに制作された約20点の絵画、9点の立体作品、80点のデッサン、3点のインスタレーションが同館2階から4階にわたって展示されている。

会期:2025年4月8日〜6月22日
会場:ワタリウム美術館
住所:東京都渋谷区神宮前3-7-6
電話番号:03-3402-3001
開館時間:11:00〜19:00
休館日:月(5月5日は開館) 
料金:大人 1500円 / 大人ペア 2600円 / 学生(25歳以下)・高校生 1300円 / 小中学生 500円

「PARALLEL MODE オディロン・ルドン ―光の夢、影の輝き」(パナソニック汐留美術館

オディロン・ルドン 神秘的な対話 1896頃 岐阜県美術館

 東京・新橋のパナソニック汐留美術館で「PARALLEL MODE オディロン・ルドン ―光の夢、影の輝き」が4月12日より開催される。

 オディロン・ルドンは1840年フランス南西部のボルドー生まれ。70年以降は、同時代のアカデミスムや印象派とも異なる独自の幻想的なイメージを木炭画と石版画の黒の世界を通して表現。90年頃より、本格的に油彩とパステルを使うようになり、装飾作品の制作も増えていく。晩年には、鮮やかな色彩で花の絵や神話画などを描き、輝きに満ち溢れた神秘的な色彩世界を探求した。

 本展は、世界有数の岐阜県美術館のコレクションを中心に、国内外の選りすぐりの作品を加えた約110点のパステル画、油彩画、木炭画、版画などにより、近代美術の巨匠ルドンの豊穣な画業の全容を概観。伝統と革新の狭間で、独自の表現を築き上げていく姿を紹介する。

会期:2025年4月12日~6月22日
会場:パナソニック汐留美術館
住所:東京都港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4階
電話:050-5541-8600
開館時間:10:00~18:00(5月2日、6月6日、6月20日、6月21日は〜20:00) (入館は各閉館時間の30分前まで)
休館日:水(ただし6月18日は開館)
観覧料:一般 1300円 / 65歳以上 1200円 / 大学生・高校生 800円 / 中学生以下 無料

「士郎正宗の世界展 ~『攻殻機動隊』と創造の軌跡~」(世田谷文学館

 世田谷文学館で「士郎正宗の世界展 ~『攻殻機動隊』と創造の軌跡~」が4月12日より開催される。

 士郎正宗は兵庫県生まれ。漫画家・イラストレーターとして活動している。1980年にマンガやイラストの分野で活躍開始し、85年に『アップルシード』で商業デビュー。89年に代表作『攻殻機動隊』の連載を開始した。アニメ作品『ブラックマジックMー66』には共同監督として参加。そのほか、ゲームや画集など様々な制作分野で活躍している。 

 本展では、多様な広がりをみせる作品群と現在の活動までを、「アナログ原稿」「デジタル出力原稿」で辿るとともに、作家の蔵書やコメントもふんだんに紹介し、「士郎正宗」のパーソナルな部分にも迫る。開館30周年を迎える世田谷文学館が、これまで取り組んできた「漫画」「SF(サイエンス・フィクション)」展示の集大成となる、「士郎正宗」初の大規模展覧会となる。

会期:2025年4月12日~8月17日
会場:世田谷文学館
住所:東京都世田谷区南烏山1-10-10
電話:03-5374-9111
開館時間:10:00~18:00 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月、5月7日、7月22日、8月12日(ただし5月5日、7月21日、8月11日は開館)
観覧料:一般 1500円 / 65歳以上・大学・高校生 900円 / 小・中学生 450円

「TOPコレクション 不易流行」(東京都写真美術館

展示風景より、石内都「mother’s」シリーズ

 東京・恵比寿の東京都写真美術館で、2期にわたって7名の学芸員が10のテーマで構成するオムニバス形式の展覧会「総合開館30周年記念 TOPコレクション」の第1期「不易流行」が開幕した。会期は6月22日まで。会場のレポートはこちら

 「不易流行」は5室構成で、それぞれ同館学芸員の佐藤真実子、大﨑千野、室井萌々、山﨑香穂、石田哲朗が担当している。同館のコレクションを改めて振り返り、時代を象徴する名作をテーマごとに交えつつ、ゆるやかに写真史をたどることができる展覧会だ。

会期:2025年4月5日~6月22日
会場:東京都写真美術館
住所:東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
電話番号:03-3280-0099
開館時間:10:00~18:00(木金〜20:00)※入館は閉館30分前まで
休館日:月、5月7日(ただし5月5日は開館)
料金:一般 700円 / 中学生以下 無料

「ととのう展 ~ヘルスケアにつながる美術館~」(諸橋近代美術館

 福島・北塩原村の諸橋近代美術館で「ととのう展 ~ヘルスケアにつながる美術館~」が開催される。会期は2025年4月12日〜6月29日。

 景勝地である裏磐梯・五色沼入口の諸橋近代美術館で、サルバドール・ダリの作品を中心に、ピエール=オーギュスト・ルノワール、アンリ・マティス、パブロ・ピカソ、マルク・シャガールなどを所蔵。また、ダリの彫刻39点は、世界でも類を見ないコレクション数となっている。

 「ととのう展 ~ヘルスケアにつながる美術館~」は、アートを通して「ととのう」を提案する新感覚の展覧会となる。ストレス社会における美術館の新しい活用方法として、近年の流行語「ととのう」をキーワードに、「ココロとカラダがととのう美術館」を提案するものだ。

会期:2025年4月12日~6月29日
会場:諸橋近代美術館
住所:福島県耶麻郡北塩原村大字桧原字剣ヶ峯1093-23
電話番号:0241-37-1088
開館時間:9:30〜17:00 ※入館は閉館の30分前まで 
休館日:会期中無休 
料金:一般 1300円 / 高校・大学生 500円 / 中学以下無料