EXHIBITIONS

鄭梨愛「私へ座礁する」

朝鮮大学校
2025.06.27 - 07.16

鄭梨愛 drawing(一部) 2023

 朝鮮大学校美術棟1階展示室で、鄭梨愛による個展「私へ座礁する」が開催されている。

 本展では、鄭が2015年から近年にかけて制作した絵画や映像、インスタレーションを展示。

 鄭は、11年から16年頃まで自身の祖父を対象に絵画作品の制作を行なってきた。15年に祖父が亡くなり、その数ヶ月後、映像作品《ある所のある時におけるある一人の話と語り聞かせ》を制作し発表した。同作品は、生前祖父が親の墓参りのため韓国へ訪れたときの記録映像をもとに制作したものだ。この訪韓に同行した母(=娘)が祖父(=父)を撮り、その記録映像を鄭が編集した。それ以降、制作の関心は次第に絵画作品で取り組んでいた「肖像」から、その背後に広がる「個人史」へと変化していき、扱うメディアも映像やインスタレーションなどに変化していく。祖父の個人史を扱う作品のほかに、墓地まで棺を担ぎ運ぶときに歌う韓国の伝統的な葬列歌「喪輿歌(サンヨソリ)」、朝鮮の歌「鳳仙花」などを引用した作品の制作も行なっている。

 今回の展示では、映像作品《ある所のある時におけるある一人の話と語り聞かせ》から始まり、祖父の死後である2015年以降に手がけた作品群に着目している。

 残された写真や映像、言葉、記憶などから、過去の出来事が現在に想起され作家自身の経験へと置き換えられる感覚を、本展ではタイトルとなっている「座礁」と言い表した。時間や場所を超えたその「座礁」にいかに対峙するかを問いながら、現在に連なる思考を見出す試みを行う。