EXHIBITIONS

青木野枝「ふりそそぐものたちー2025」

2025.05.31 - 06.28

「そこに光が降りてくる 青木野枝/三嶋りつ惠」展示風景 2024 東京都庭園美術館 撮影:山本糾

 ANOMALYで、青木野枝による個展「ふりそそぐものたちー2025」が開催されている。

 鉄を主な素材とする青木の作品は、工業用の鉄板を自らの手で、丸や線といったシンプルな形に、時には数千個にも及ぶパーツとして切り出す「溶断」から始まる。この工程が全体の約80パーセント以上を占め、その後、切り出された部材を溶接することで作品が完成する。鉄は人の体内、そして地球上にもっとも多く存在する元素のひとつであり、4000年にもわたり人間の文明社会の発展とともにあった。その素材が連続してできた青木の有機的な彫刻は、人々の身体とその作品が置かれた空間、さらには地球とがともにあるような体感をもたらす。

 青木はコロナ禍の2021年にANOMALYで開催した個展「Mesocyclone」以降も精力的な活動を続けている。2023年の千葉・市原湖畔美術館での個展「光の柱」では、高さ9メートルを超える吹き抜けの空間に、湖底に沈んだ土地とその生活に思いを馳せた新作を展示した。また、今年1月には阪神・淡路大震災復興30周年の節目として、安藤忠雄設計による兵庫県立美術館の山と海をつなぐ屋外空間に《Offering / Hyogo》を恒久設置。もっとも記憶に新しい東京都庭園美術館での展覧会では、アール・デコ様式の建築とその歴史的背景をふまえた作品を発表、別館の妹島和世設計の白い空間では、現在を生きる者としての思いを込めた作品で展示を完結させた。

 本展では、昨年の東京都庭園美術館での展示から、今年3月の長野・Gallery MAZEKOZEでの個展を経て発展した最新作を発表。また、兵庫県立美術館の恒久設置作品にあわせて制作された新作の銅版画《Offering / Hyogo》を初めて東京で公開している。