EXHIBITIONS

上野悠河「独奏・曲・のための・奏者」

2025.05.09 - 06.01

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 あをば荘で、上野悠河による個展「独奏・曲・のための・奏者」が開催されている。

 上野は、幼少期より続く現代音楽への関心、高校生までオーケストラの打楽器に所属していた経験から1960年代から70年代の美術史研究を経て、現代における人間やものの相互作用に潜む複雑な問題を再考するために、完璧な関与が難しい対象とその振る舞いや関係性、有限性に焦点をあてた作品を発表してきた。レディ・メイドの道具や機材、その機能を実際に利用し組みあわせたサウンド・アートやインスタレーション・アートを主軸に表現しているほか、ミュージシャン「Mus’c」(ムスク)としても活動。

 主な展示に、個展「ものたちは、歌い、蔑み、愛し合った」(千葉市民ギャラリー・いなげ、旧神谷傳兵衛稲毛別荘、千葉)、「SICF23 EXHIBITION部門 受賞者展」 (スパイラル、青山)、「ZOU-NO-HANA FUTURE SCAPE PROJECT 2022」(象の鼻テラス、横浜)など。「ClafT(中央線芸術祭)」に2021年から参加・出展、千葉国際芸術祭2025「ソーシャルダイブ」に選出・出展予定。また「SICF23」大巻伸嗣賞、「第二回ISAC国際作曲コンテスト」Special Prize(Special Mentioned)、「島村楽器 録れコン2022」グランプリなど。

 以下、本展の展覧会ステートメントとなる。

「オーケストラの打楽器奏者の経験、シート・ミュージックや打ち込み音楽(DTM)の作曲経験から現代美術の表現方法を見つけ出し、1960年代から70年代の美術や音楽、とくに『もの派』のリサーチと実践を経て、自然とおのれの身体にもインストゥルメント―楽器や道具と対等に、負荷を被ろうと試みるようになった。『試練なき人生は生きるに値しない』というソクラテスの格言をプレイヤーとインストゥルメントの両方にしたがわせたとき、人のみならず"もの"に対しても、死への欲動・有限性を発現させられるのではないかと考えるようになった。

 もの/対象の選択(制作)は同時に、初めに選択する主体としての人間=身体を排せない宿痾があるとして、身体そのものや生成物を素材の契機にくわえることもあった。これは、ClafT(中央線芸術祭)2024 上野悠河個展「閉鎖的解放」(*)においてその傾向があらわれ始めた。本展では、身体にまで及んだ"対象"たちをさらに均す試みとして、身体が記憶しているほどに経験された音楽と物性の手掛かりから現象を拾い、組み換え、作品そして問いを導き出す」(展覧会ウェブサイトより)。

*──2024年10月16日から10月20日のあいだ、Open Art Platform「iru」で開催された展覧会。