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PARALLEL MODE オディロン・ルドン ―光の夢、影の輝き

オディロン・ルドン 神秘的な対話 1896年頃 岐阜県美術館

 パナソニック汐留美術館で「PARALLEL MODE オディロン・ルドン ―光の夢、影の輝き」が開催される。

 オディロン・ルドンは1840年フランス南西部のボルドー生まれ。幼少期をボルドー近郊の自然豊かなペイルルバードで過ごす。55年、地元の画家スタニスラス・ゴランに師事しロマン主義の芸術観に触れる。青年期には、57年頃出会った植物学者アルマン・クラヴォーとの交友を介して、科学や文学から刺激を受けた。

 64年、パリで短期間アカデミスムの画家ジャン=レオン・ジェロームの門下生となる。翌年ボルドーに戻り、版画家ロドルフ・ブレスダンのもとで版画技術を学ぶなどした後、70年以降は、同時代のアカデミスムや印象派とも異なる独自の幻想的なイメージを木炭画と石版画の黒の世界を通して表現した。

 90年頃より、本格的に油彩とパステルを使うようになったルドンは、ド・ドムシー男爵の城の食堂を飾る装飾画連作を手がける。以降、屏風などの装飾作品の制作も増えていく。晩年には、鮮やかな色彩で花の絵や神話画などを描き、輝きに満ち溢れた神秘的な色彩世界を探求。1913 年には、アメリカで開催されたアーモリー・ショーに出品し、国際的な名声も獲得していった。

 日本においても、ルドンの生前から彼の作品と芸術は紹介され、現代に至るまで、美術や文学、音楽、漫画など、幅広い分野でインスピレーションを与え続けている。ルドンが生きた時代の欧州では、アカデミックな芸術に対して印象派や象徴主義などの新たな芸術潮流が次々と起こり、さらにはフォーヴィスムやキュビスムなどの様々な前衛美術が台頭した。

 また、この時代には、科学の発展による技術革新が社会構造や思想に多大な変化をもたらした。ルドンは、こうした変貌する社会と移り変わる芸術傾向と併走するかのように、作品発表の場や人脈を広げ、新しい画題に取り組み、木炭画や石版画からパステル画や油彩画へと表現媒体を変えていく。

 本展は、世界有数の岐阜県美術館のコレクションを中心に、国内外の選りすぐりの作品を加えた約110点のパステル画、油彩画、木炭画、版画などにより、近代美術の巨匠ルドンの豊穣な画業の全容を概観。伝統と革新の狭間で、独自の表現を築き上げていく姿を紹介する。