EXHIBITIONS

藤原和通―そこにある音

2024.09.21 - 11.10

藤原和通 音響標定「サウンド・ロケ第4」 1972 個人蔵 撮影:山崎博

 岡山県立美術館で「藤原和通―そこにある音」が開催されている。

 音の出ないコンサート、音を見るオブジェ、音に触れる機械。岡山県倉敷市出身の藤原和通(1944〜2020)が手がけた仕事は、多岐にわたりながらもその中心にはつねに"音"があった。今回、岡山県立美術館では、音に対して幅広いアプローチを行ったアーティスト・藤原和通の特別展示を開催。

 藤原は、1960年代末ごろから、石(コンクリート)と木で制作された巨大な楽器を「音具」と名付け、多くの人で擦りあわせる観衆参加型のコンサート《音響標定(エコー・ロケーション)》を開催し、1976年ヴェネツィア・ビエンナーレに招待されるなど注目を集める。一時期をイタリアで過ごし、1988年に帰国した後は、当時流行していたウォークマンとの出会いから、音の世界の拡がりを感じ、それが機械を通して記録されるということに関心を向けるようになる。

 自身で高性能の録音用マイクを開発し、世界中を飛び回り様々な音の記録を行った。1992年から1994年まで放送されたテレビ番組『ウゴウゴルーガ』で「おとのはくぶつかん」のコーナーを担当。2003年には京都に音を販売するショップ「オトキノコ」をプロデュースするなど、美術の枠を超えて活動の幅を拡げていった。2007年には音を触覚へと変換できるコミュニケーター《dayon》を商品化して一般発売するが、そのコンセプトからは藤原の活動初期から変わらない、音の存在を知覚し楽しもうとする意識が感じ取れる。

 本展では、藤原の作品や手がけたプロダクト、記録された音に加え、当時の活動を伝える写真や資料などを紹介し、藤原が伝えようとした音の魅力に迫る。