2026.1.17

「劇場アニメ ルックバック展 ―押山清高 線の感情」(麻布台ヒルズギャラリー)開幕レポート。アニメーターの線への思いを映画と重ねて

東京・虎ノ門の麻布台ヒルズ ギャラリーで「劇場アニメ ルックバック展 ―押山清高 線の感情」が開幕した。会期は3月29日まで。会場の様子をレポートする。

文・撮影=安原真広(ウェブ版「美術手帖」副編集長)

展示風景より、京本が羽織り続けた藤野のサイン入りの半纏
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 東京・虎ノ門の麻布台ヒルズ ギャラリーで「劇場アニメ ルックバック展 ―押山清高 線の感情」が開幕した。会期は3月29日まで。

 本展は、藤本タツキによる同名作品を原作とした劇場アニメ『ルックバック』の展覧会だ。監督の押山清高が自ら展覧会を監修し、解説を手がけている。

3「シーンエリア」展示風景

 『ルックバック』は、絵を描くことに純粋に向かい合う二人の少女の物語だ。学年新聞で4コマ漫画を描き、自信満々だった小学4年生の藤野は、ある日、不登校の同級生・京本の卓越した画力に衝撃を受け、挫折して漫画を諦めてしまう。しかし卒業の日、証書を京本に渡しに行った藤野は、京本から「ずっとファンだった」と打ち明けられた。これをきっかけに、二人は漫画を通じてつながり、ともに創作を始める。異なる道を歩みながらも、ともにマンガへの情熱で結ばれていた二人だったが、やがてその日常を根底から揺るがす出来事が訪れる。

3「シーンエリア」展示風景

 監督を務めた押山は1982年福島県生まれ。2004 年よりアニメーターとして活動を開始し、『電脳コイル』(2006)で作画監督を務める。その後も数々の作品で監督・脚本・デザインなどを手がけ、2017年にアニメーション制作会社・スタジオドリアンを設立。短編『SHISHIGARI』を制作した。劇場アニメ『ルックバック』では、監督・脚本・キャラクターデザイン・作画監督・原画を務めている。

展示風景より、メインビジュアルのセル画

 会場は5つのエリアによって構成されており、各エリアには、押山による開設コメントがつづられている。これにより、たんなる資料展示を超えて、制作の際につくり手がどのような思考を働かせていたのかを辿ることができる構造となっている。

会場のエントランス

 1「映像エリア」では、パラパラ漫画、静止画、スケッチブックなど「描く」ことに焦点を当てた本展のコンセプトを象徴する映像が上映されている。

1「映像エリア」展示風景より

 2「作画エリア」は原画の数々が壁のみならず、様々な場所から吊るされて紹介されている。本展はメモや設定画、原画など、制作過程において生まれた成果物が数多く並ぶが、各カットには原動画や背景を担当したスタッフの名前が記されており、スタッフ一人ひとりへの深いリスペクトが感じられるだろう。

2「作画エリア」展示風景より
2「作画エリア」展示風景より

 3「シーンエリア」は、作中の印象的なシーンを分解しながら紹介するエリアだ。絵コンテ、レイアウト、原画、背景美術、色彩設計といった、アニメにおけるシーンを構成する各要素において、制作者たちがどのような試行錯誤を行い、思考したのか、その痕跡を見ることができる。

3「シーンエリア」展示風景

 4「京本家の廊下」は、作中の京本の部屋へと進む廊下を再現した展示だ。ドアの外にはスケッチブックが積み重なり、廊下の向こうで絵を描き続ける京本と、その存在によって再び絵の道を歩もうとする藤野が工作する場が表現されている。

4「京本家の廊下」展示風景

 5「藤野の部屋」は藤野の部屋を再現した展示だ。藤野と京本が互いにマンガを描くことに邁進した場所であり、隣に展示されているの京本が羽織り続けた藤野のサイン入りの半纏とともに互いの友情を体感できる。

5「藤野の部屋」展示風景
展示風景より、京本が羽織り続けた藤野のサイン入りの半纏

 そして最後となる6「特別映像エリア」は、藤野と京本の言葉、そして押山自身が描く姿を重ねながら、「人が線を引く」という原初的な喜びを表現した特別映像が上映されている。

 劇場アニメ「ルックバック」に込められていた絵を描くことの喜びと苦しみ、そして線を描くといういつの時代も人を惹きつけてきた行為の純粋さを、正面から表現しようとした展覧会となっている。