「死と再生の物語(ナラティヴ)」(泉屋博古館東京)開幕レポート。中国古代のデザインに見る死と再生の世界
京都の泉屋博古館が所蔵する中国古代青銅器の優品をもとに、古代の神話や宇宙観を視覚的に読み解く展覧会「死と再生の物語(ナラティヴ)―中国古代の神話とデザイン―」が、泉屋博古館東京で開幕した。

東京・六本木の泉屋博古館東京で、企画展「死と再生の物語(ナラティヴ)―中国古代の神話とデザイン―」が始まった。会期は7月27日まで。
本展は、京都・鹿ヶ谷の泉屋博古館が所蔵する中国古代の青銅鏡をはじめとした文物を通して、その優れた造形美と背景にある神話的世界観を紹介するもの。担当学芸員は山本堯(泉屋博古館学芸員)。
展覧会では、「動物/植物」「天文」「七夕」「神仙へのあこがれ」といった4つの観点を軸に、中国古代において文物のデザインがいかなる思想や信仰に基づいて生み出されてきたのかを読み解きつつ、それらが後世の日本美術に与えた影響にも目を向ける構成となっている。
第1章「天地つなぐ動物たち」
古代中国の文物には、現実の動物から空想上の神獣に至るまで、様々な動物の姿が表されている。とくに注目されるのは、それらがたんなる装飾や自然観察の成果ではなく、天と地をつなぐ媒介的存在として神聖視されていた点にある。

第1章「天地つなぐ動物たち」では、夜行性の猛禽であるフクロウ・ミミズク(鴟鴞/しきょう)をかたどった青銅器《鴟鴞尊》や、2羽のミミズクが背中合わせになったかたちをとる《戈卣(かゆう)》などが展示されている。これらは墓に副葬されることが多く、死者が安寧な世界へと導かれることを願った意匠とみられる。


また、龍や鳳凰などの神獣は、後の時代に瑞獣(吉兆をもたらす動物)として語られるようになる以前から、天と地をつなぐ存在として重要視されていた。夜の世界に通じるとされたフクロウの鋭い感覚や飛翔能力も、死後の世界への案内役としての機能を担うものとして解釈されている。
山本学芸員は、「細部に注目して作品を鑑賞することで、込められた意味が浮かび上がってくる」と語り、デザインの背景にある神話的世界観への着目を促している。

