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2025.5.30

写真と映像で綴る家族とクィアの記憶。マンボウ・キー個展「居家娛樂|Home Pleasure」がPARCO MUSEUM TOKYOで開幕

台湾を拠点に国際的に活躍するアーティスト、マンボウ・キー(登曼波)による個展「居家娛樂|Home Pleasure」が、渋谷PARCO 4階のPARCO MUSEUM TOKYOで開幕した。会期は6月9日まで。

展示風景より
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 渋谷PARCO 4階のPARCO MUSEUM TOKYOにて、台湾出身のアーティスト、マンボウ・キー(登曼波)による個展「居家娛樂|Home Pleasure」が始まった。

 本展は、東京都現代美術館の藪前知子をキュレーターに迎え、写真、映像、インスタレーションを通じて、家族やジェンダー、セクシュアリティ、そしてクィア・アイデンティティといったテーマを一貫して探求するマンボウ・キーの表現世界を紹介するもの。代表作に加えて未発表作や日本未公開作が展示されるほか、客家系民族として日本統治下の台湾で育った祖母をモチーフとした作品も展示されている。

展示風景より
展示風景より

 また、『Vogue Taiwan』や『Marie Claire』などでファッションフォトグラファーとして発表してきた作品群や、本展のために新たに撮り下ろされた写真も初公開される。さらに、日本初の写真集『Home Pleasure』(PARCO出版)も刊行され、展覧会とあわせてマンボウ・キーの活動を多面的に紹介する機会だ。

 マンボウ・キーは、写真や映像、音楽など多様なメディアを横断しながら、「家族の記憶」や「アイデンティティ」を中心的テーマとして作品を制作してきたアーティスト。2019年には「Father’s Videotape」で台北美術賞のグランプリを受賞し、台湾のアートシーンで注目を集めた。作品《Plastic Ceremony(塑の儀式)》では、客家のルーツとジェンダー/セクシュアリティの問題を交錯させた儀式的な表現を提示している。

展示風景より
展示風景より

 展覧会タイトル「居家娛樂(Home Pleasure)」は、「Father’s Videotape」の制作過程で、父親から譲り受けた50本以上のホームビデオの中から見つかった言葉に由来する。これらのビデオには、1980年代から2000年代にかけての父親の性生活や娯楽、旅行、そして「大陸の夢」への憧れが収められており、私的な記録であると同時に、他者に見せることを意図した映像でもあったという。

 マンボウ・キーは、これらの映像を出発点としながら、記録された時代の背景を解体し、自身が生きる現代の視点と交差させることで、個人的かつ社会的な問題を再構築する。家族との関係性や、トランスジェンダーとしての自身の存在、そしてアジア人の身体性をめぐる問いを、写真や映像の中に投影する手法は、観客に多層的な視点を投げかける。

展示風景より

 本展は、マンボウ・キーのこれまでの活動の集大成であると同時に、東京という新たな文脈の中でその表現を更新する試みでもある。クィア・カルチャー、記憶、身体、そしてアイデンティティの交差点に立つこの展覧会は、現在進行形の問いを鑑賞者に投げかける貴重な機会となるだろう。

展示風景より
展示風景より
展示風景より