2025.4.2

大阪・関西万博で見るべき13組のパブリック・アート

大阪・夢洲の大阪・関西万博会場内各所に、野外彫刻や壁画、ミューラルといったパブリックアートを展示する「Study:大阪関西国際芸術祭 / EXPO PUBLIC ART」が開催される。会期は4月11日〜10月13日。各作品を開幕に先んじてレポートする。

文・撮影=安原真広(ウェブ版「美術手帖」副編集長)

会場風景より、森万里子《Cycloid Ⅲ》(2015)
前へ
次へ

 大阪・関西万博の会期中に、大阪各所を舞台に開催される芸術祭「Study : 大阪関西国際芸術祭」(4月11日〜10月13日)。同芸術祭が、夢洲の万博会場内各所に、野外彫刻や壁画、ミューラルといったパブリックアートを展示する「Study:大阪関西国際芸術祭 / EXPO PUBLIC ART」を実施する。

 参加アーティストは奥中章人、金氏徹平、COOK、SceNEプロジェクト(地球研)、田﨑飛鳥(株式会社ヘラルボニー)、DONECY、冨長敦也、中島麦、BAKIBAKI、ハシグチリンタロウ檜皮一彦ミヤケマイ、森万里子の13組。各作家の作品を抜粋して紹介したい。

会場風景より、COOK《WORLD EXPO 2025》(2025)

 第47回ヴェネチア・ビエンナーレ(1997)を筆頭に、世界各国で作品を展開してきた森万里子は、夢洲駅から万博会場へと入っていく東ゲート近くにアルミニウム製の彫刻作品《Cycloid Ⅲ》(2015)を展示。「Cycloid(サイクロイド)」とは、規則のもとで円が回転するときに描く軌跡のことで、始まりも終わりものない宇宙の躍動を表現している。本作は万博会場のアイコンである、藤本壮介の設計による「大屋根リング」の円環に呼応するように設置されている。

会場風景より、森万里子《Cycloid Ⅲ》(2015)

 90年代よりグラフィティ・ライターとして活動をしてきたCOOKは東ゲートゾーンの休憩所の壁面に壁画《WORLD EXPO 2025》を描いた。万博をコンセプトに「世界中の人が仲良く平和に生きられるように」という願いを作品化。虹はSDGsを、たくさんの花は多彩な国々を表現したという。

会場風景より、COOK《WORLD EXPO 2025》(2025)

 「書」の可能性を拡張してきたハシグチリンタロウは、食堂やコンビニが入っている「ウォータープラザマーケットプレイス東」に、アルミ樹脂複合板による壁画《anima harmonizer》を設置。作品名は「たましいを調和し、奏でる者」という意味を込めた造語であり、生命体のような文字でエネルギーを表現した。

会場風景より、ハシグチリンタロウ《anima harmonizer》(2025)

 東洋哲学にもとづき、表現を通じて本質や普遍を問いかける美術家・ミヤケマイは、万博会場の中心にある「静けさの森」の服部大祐+新森雄大による休憩所で作品《水心》を展開。波を彷彿とさせるデザインのこの休憩所に、ガラス素材によるモザイクでタコをはじめとしたモチーフをあしらい、静けさのなかにある豊かさが表現された。

会場風景より、ミヤケマイ《水心》(2025)
会場風景より、ミヤケマイと《水心》(2025)

 体験的な巨⼤作品やワークショップ開発を市民とともにつくる美術家・奥中章人。これまでも「Study : 大阪関西国際芸術祭」などで展開してきた、輝くフィルムで覆われた繭状の作品《Cocooner》を会場に設置。内部には人が入ることができ、空気が入った柔らかなクッションによって来場者を包み込むような空間となっている。

会場風景より、奥中章人《INTER-WORLD/Cocooner:Apparent motion of celestial bodies》(2025)
会場風景より、奥中章人《INTER-WORLD/Cocooner:Apparent motion of celestial bodies》(2025)

 抽象絵画を制作する中島麦は、カフェやアパレルの入る「ウォータープラザマーケットプレイス西」の壁面に《DIVING to sky water》をペイント。塗料が流れ落ちていくことで生まれる自然な色彩が表現され、太陽光を浴びて様々な色に輝く。

展示風景より、中島麦《DIVING to sky water》(2025)

 自身も移動に用いる車イスなどを素材に、身体性をテーマとした映像制作やパフォーマンスを行う檜皮一彦は、大屋根に上るエスカレーターの下に作品《HOWADROME:type_ark_spec2》を展開した。白く塗られた車イスを立体的に構築しライトアップする本作は、万博会場が本当に誰にも訪れやすいものになっているのか、という問いを喚起する。

会場風景より、檜皮一彦と《HOWADROME:type_ark_spec2》(2025)

 身の回りの事物をコラージュ的に組み合わせる金氏徹平は西ゲート近くのう通路上に《Hard Boiled Daydream(Sculpture/Spook/Osaka)》を展示。マンガやイラストに使われるモチーフを巨大化させ立体作品とすることで、虚構と現実の領域をかき乱す作品だ。

会場風景より、《Hard Boiled Daydream(Sculpture/Spook/Osaka)》(2021-25)

 21世紀における和柄を提案するBAKIBAKIは、西ゲート付近で壁画《希望の系譜》を描いた。歌川国芳《讃岐院眷属をして為朝をすくふ図》を元絵に、大衆芸術へのリスペクトを示した。

会場風景より、BAKIBAKI《希望の系譜》(2025)

 石を磨くパフォーマンスを世界中で展開してきた冨長敦也は、アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、アジア、オセアニアの五大陸から掘り出された石を使用して《Love Stone Project EXPO 2025》を展開。会期中、冨長はこれらの石をヤスリで磨き続け、鏡面のように仕上げていくという。この石を磨く行為によって、世界の人々が力を合わせ平和な未来の輝きを創出することを目指す。

会場風景より、冨長敦也《LIVE Atone Project EXPO 2025》(2025)
冨長敦也による《LIVE Atone Project EXPO 2025》(2025)

 総合地球環境学研究所(地球研)の超学際的プロジェクト「SceNEプロジェクト」は、《海の記憶:喜界島 サンゴの方舟》を西ゲート近くに設置。サンゴ礁が隆起してできた鹿児島県・喜界島で、科学者、アーティスト、地域住民が協働して環境問題を提起する同プロジェクト。会場には同島のサンゴが置かれ、リアルタイムで配信される島の音とともに、QRコードを経由して島の映像を展開。小さいながらも臨場感のある喜界島が出現している。

会場風景より、SceNEプロジェクト《海の記憶:喜界島 サンゴの方舟》(2025)

 このほか、DONECYによるステンレス彫刻と、田崎飛鳥による壁画作品が本プロジェクトのパブリックアートとして展示される予定だ。

 なお、会期中は各パブリックアートをめぐるスタンプラリーも実施予定。会場のパビリオンを回るだけではなく、道中のアートも楽しむことができる試みとなっている。