2025.9.24

「第3回BUG Art Award ファイナリスト展」が開催。6名の作家がBUGを舞台にプレゼンテーション

東京・八重洲のBUGで、「第3回BUG Art Award ファイナリスト展」が開催される。今回の「BUG Art Award」のファイナリスト選出されたのは、沖田愛有美、徐秋成、善養寺歩由、髙橋瑞樹、吉原遼平、里央の6名。会期は9月23日〜10月19日。

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 リクルートホールディングスが運営する、東京・八重洲のBUGで、「第3回BUG Art Award ファイナリスト展」が開催される。会期は9月23日〜10月19日。

 「BUG Art Award」は、制作活動年数が10年以下のアーティストを対象にしたアワード。審査員からのフィードバックの提供や、展示・設営に関する相談会の開催などのサポートを行い、審査の過程でアーティストの成長を支援するものだ。BUGの前身であるガーディアン・ガーデンが31年間実施してきた『ひとつぼ展』(1992〜2008)、「1_WALL」(2009〜23)を引き継ぎ、新しい表現への挑戦やアーティストのキャリア形成をバックアップしている。

展示風景より

 会期中の9月30日には、グランプリ1名を選出するための公開最終審査を実施。グランプリ受賞者は、約1年後にBUGにて個展を開催し、設営撤去をあわせた作品制作費上限300万円と別途アーティストフィーが支給される。展示・設営に関する相談会の開催などのサポートを行い、審査にまつわる過程でアーティストの成長を支援。また、会期中の9月24日及び10月18日の各日19時からは、ファイナリスト6名による展示ツアーとトークイベントを開催。当日はファイナリストによる作品説明のほか、BUG Art Awardへの応募きっかけや、普段の制作活動についてなど、様々なテーマから6名を知ることができる。

 審査員を務めるのは菊地敦己(アートディレクター/グラフィックデザイナー)、中川千恵子(トーキョーアーツアンドスペース・学芸員)、横山由季子(東京国立近代美術館研究員)と、今回から新たに審査員となった百瀬文(美術家)、やんツー(美術家)。9月30日には6名のファイナリストが、バグ展の展示内容とグランプリを受賞した際の個展プランについてプレゼンテーションを行う公開最終審査を実施。その内容をもとにグランプリが決定する。なお、審査の様子は予約者にオンライン配信を通じて公開される。

 今回選出されたのは、沖田愛有美、徐秋成、善養寺歩由、髙橋瑞樹、吉原遼平、里央の6名。それぞれの表現は絵画、工芸、インスタレーション、映像、メディアアート、ランドアートなど多岐にわたり、本展はファイナリスト6名の話し合いにより展示位置を決め、BUGの空間を使って展示・設営のシミュレーションなどを行いながら最終の展示プランを決定した。

 ファイナリストの詳細は以下。沖田愛有美は1994年岡山県生まれ。2024年、金沢美術工芸大学博士後期課程修了。石川県金沢市を拠点に、漆をメディウムとした絵画制作を行う。植物の樹液であり、制作者の予想を超えた変化をする漆を、人と自然をつなぐ媒介者であるととらえ、人間と非人間的な存在との関わりを見つめる。近年では、自然環境と人の営みの相互作用、さらにそれらの関わりの中で紡がれてきた民俗や神話にも関心を広げている。

沖田愛有美《実りについて》
沖田愛有美《実りについて》より《枝に宿る授受の賜物、樹々を滴る産みのたま》

 徐秋成は1993年中国河南省生まれ。東京を拠点として活動している。多摩美術大学メディア芸術コースを卒業、東京藝術大学大学院先端芸術表現科を修了。主にゲームエンジンを使って映像やゲームを制作。死後の世界や夢、記憶、ポストメモリーをゲームと演劇の手法で表現する。

徐秋成《さざ波:200年後の大地震》
徐秋成《さざ波:200年後の大地震》

 善養寺歩由は1999年生まれ、東京都出身、東京都在住。2023年10月-2024年3月ドイツ ハレ・ギービッヒェンシュタイン城・芸術・デザイン大学ガラス・ペインティング学科留学、2025年3月東京藝術大学美術学部デザイン科卒業。AI、メディア、広告などの視覚文化を通じて無意識に再生産されるジェンダー規範や生産消費社会と美の関係性に批評的な視線を向け、ステッカーやマシン、映像、ステンドグラスなど、多様な技法とユーモアを交えたアプローチでそれらの構造を可視化する。排除された身体性や、匿名化された顔の記号性に着目した作品を制作している。

善養寺歩由《Generated Pimples》
善養寺歩由《Generated Pimples》

 髙橋瑞樹は1999年生まれ。誰も見たことないものを見てみたいという漠然とした思いからドローイングマシンを制作している。制御可能な自分以外の他者を介することで、自分自身の想像を超える何かが生み出される瞬間を誘発できると信じており、ドローイングマシンに作用する作者の創造的介入を限りなく薄めたその最果てに、誰も見たことがないものが生み出される瞬間が訪れると考える。

髙橋瑞樹《壊れた時計の針を見つめる》
髙橋瑞樹《壊れた時計の針を見つめる》

 吉原遼平は広島県出身。シラパコーン大学交換留学。多摩美術大学美術学部絵画学科卒業。ダブルスクールで美学校「現代アートの勝手口」修了。アートサロンえん川設立。東京藝術大学美術研究科絵画専攻壁画研究領域修了。近年は富士塚について調べている。

吉原遼平《五大湖 The Great Lakes》
吉原遼平《五大湖 The Great Lakes》

 里央は1996年長野生まれ、東京育ち。ギリシャ・アテネでの留学を経て、2023年に東京藝術大学美術学部先端芸術科を卒業。クイアとして人種・ジェンダー等の人間の属性をめぐる世の中に対する問題意識をテーマに、フィクションとノンフィクションを往来するマルチメディア作品を制作している。現在は植民地主義をめぐる問題を考えるために沖縄に在住。

里央《Purple Back》
里央《Purple Back》