2026.8.25

豪州最大級の新美術館。「パワーハウス・パラマタ」が11月、シドニーに開館へ

オーストラリア・シドニー西部に建設中の「Powerhouse Parramatta(パワーハウス・パラマタ)」が、11月7日に開館する。総工費9億1500万豪ドル(約1044億円)、延床面積約3万平米の大型文化施設で、開館展にはジェームズ・タレルの巨大な没入型作品を含む5つの展覧会が予定されている。

シドニーに建設中の「パワーハウス・パラマタ」の外観(2026年5月) Image by Rory Gardiner
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 オーストラリア・シドニー西部のパラマタに建設中の新たな文化施設「Powerhouse Parramatta(パワーハウス・パラマタ)」が、11月7日に開館することが発表された。

 パラマタ川沿いに位置する同館は、170以上の国・地域にルーツを持つ人々が暮らす西シドニーで初となる州立文化施設。総工費は9億1500万豪ドル(約1044億円)、延床面積は約3万平米。シドニー・オペラハウス以来、オーストラリアにおける文化施設への公共投資として最大規模となる。

パワーハウス・パラマタ Image courtesy of Powerhouse Studio

 パワーハウスは、1879年設立の応用芸術科学博物館(Museum of Applied Arts and Science)を起源とし、現在はシドニー各地に4拠点を展開するオーストラリア最大のミュージアムグループ。50万点以上におよぶコレクションを擁し、アート、デザイン、科学、テクノロジーを横断してきた。パワーハウス・パラマタの開館は、現存施設の改修や拡張などを含む総額13億豪ドル規模の再整備計画の中核に位置づけられている。

 パワーハウス・パラマタの設計は、パリを拠点とするフランスと日本の建築家ユニット、モロー・クスノキがリードデザイナーを務め、オーストラリアのGentonとArupが参画した。開館時にはパワーハウスのコレクションから約1600点を含む3000点以上の作品・資料を紹介する。さらに14ヶ国にまたがる45点以上の新作コミッションも展開され、そのうち7点はオーストラリアの先住民族(ファースト・ネーションズ)の文化的実践を支援する「Community Commissions」となる。

パリを拠点とするフランスと日本の建築家ユニット、モロー・クスノキがリードデザイナーを務める Image by Rory Gardiner
延床面積は約3万平米。シドニー・オペラハウス以来、オーストラリアにおける文化施設への公共投資として最大規模となる Image by Rory Gardiner

宇宙への探究から「ショッピングモール」まで

 開館時には5つの展覧会が開催される予定で、今回そのうち3展の概要が発表された。なかでも大規模なものが、人類の飛行と宇宙への探究をテーマとする「Task Eternal」だ。中国系アメリカ人SF作家テッド・チャンの小説『Tower of Babylon(バビロンの塔)』(1990)から着想を得て、ファースト・ネーションズに伝わる天空の知識や初期の航空史から、最先端の航空宇宙技術までを850点以上の資料を通してたどる。展示空間はOPEN Architectureが手がける。

アポロ司令船ボイラープレート #1224 NASAからスミソニアン国立航空宇宙博物館へ移管(L5797.2) Courtesy of Smithsonian National Air and Space Museum
トルラップ・ラープジャロエンスック《Vehasayan》(2025-26) Comissioned by Powerhouse Museum for Task Eternal

 NASAやスミソニアン国立航空宇宙博物館、大英博物館、MIT、オーストラリア宇宙庁など国内外の機関から作品・資料が集結。航空機のデータを記録するオーストラリア発祥の「ブラックボックス」に加え、ジェームズ・タレルによる巨大な没入型作品《Shangri La (Over the Hump)》(2026)も公開される。同作では、空間全体を変化する鮮やかな色彩で包み込み、場所や時間をめぐる来場者の知覚を揺さぶる。

ジェームズ・タレル《Shangri La (Over the Hump)》(2026)。「Immersive Light」展(龍美術館・西岸館、上海、2017)の展示風景より Photog by Yang Jiaxi, Zhu Zhe. Courtesy of Long Museum, Shanghai

 いっぽう「The Mall」は、OMA/AMOとの協働によって構成され、近代以降の生活を大きく変えてきた建築類型として「ショッピングモール」を考察する展覧会だ。パワーハウスのコレクションと国内外からの借用作品をあわせた560点以上に加え、18の新作コミッションを展示。アメリカにおけるショッピングモール設計の先駆者ヴィクター・グルーエンのアーカイヴから、リーバイス、ナイキ、パタゴニア、スピードなどの関連資料、香港のM+と共同でコミッションした韓国人アーティスト、キム・アヨンの作品までを通じ、消費をめぐる文化や社会、建築の変遷を読み解く。

キム・アヨン《Dancer in the Mirror Field》(2025)スチール Co-commissioned with M+, Hong Kong, 2025. Courtesy of Ayoung Kim

美術館に「滞在」して学ぶ新たな文化拠点

 子供を対象とする「The Dark」は、従来の教育的な展覧会とは異なるアプローチを試みる。オーストラリアの演出家キップ・ウィリアムズとアーティスト/デザイナーのエリザベス・ギャズビーが手がける会場には、パワーハウスが所蔵する隕石の鋳型から着想を得た巨大な「隕石」が出現。暗闇のなかで知覚の限界を試すことで、子供たちを受動的な鑑賞者ではなく、未知の知識を探索する主体として位置づける。

 また、館内にはそれぞれ異なる特徴を持つ7つの展示空間に加え、ショップ、カフェ、レストランなどを整備。さらに年間1万人の学生が館内に宿泊しながら学ぶことのできる「Lang Walker Family Academy」、食文化と食をめぐる科学・テクノロジーを扱う「Vitocco Family Kitchen」、屋上天文台、先住民の植物を育てる庭園なども設けられる。国内外の研究者や学者、産業・コミュニティのリーダーら最大30名を受け入れる滞在施設も備え、展覧会を見るための美術館にとどまらず、研究、教育、交流、滞在を組み合わせた文化拠点を目指す。