2025.12.1

オランダ写真美術館、2026年2月に新拠点オープン。歴史的サントス倉庫が文化施設として再生

オランダ写真美術館が、650万点を超える世界最大級のコレクションを収蔵する新拠点をロッテルダム港湾地区に開館する。歴史的なサントス倉庫を改修した新館は、展示・保存・教育を一体化した写真文化の新たな発信地となる。

オランダ写真美術館の外観 © Photo Studio Hans Wilschut
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 オランダ・ロッテルダムのオランダ写真美術館(Nederlands Fotomuseum)が2026年2月7日、歴史的建造物であるサントス倉庫を改修した新拠点を一般公開する。

 同館はオランダを代表する写真専門美術館であり、総点数650万点を超える世界最大級の写真コレクションを所蔵する。サントス倉庫は、ロッテルダム港湾地区ライインハーフェンに位置し、1901〜02年に建設された国家指定記念物。ブラジルのサントス港から輸入されるコーヒーの倉庫として利用された後、長年空き家となっていたが、RENNER HAINKE WIRTH ZIRN ARCHITEKTENおよびWDJARCHITECTENによる大規模改修を経て、最新設備を備えた文化拠点として再生した。移転はDroom en Daad財団の支援によって実現した。

サントス倉庫 設計=建築家 J.P. ストーク & J.J. カンターズ Photo credit to Graafland, 1917

 9階建ての新館には、展示室に加え、欧州最大級のフォトブック・ライブラリー、保存修復アトリエ、公開収蔵庫、暗室、教育スペース、スタジオ、さらに港湾を見渡すカフェやレストランが設けられる。館内にはガラス越しに収蔵品の管理や修復の様子を見学できる「見える収蔵庫」が導入され、写真制作やアーカイヴのプロセスを体験的に学べる構成となっている。

オランダ写真美術館 アトリウムと中央階段室 © Photo Studio Hans Wilschut
オランダ写真美術館 © Photo Studio Hans Wilschut

 開館に合わせ、2つの主要展覧会が開催される。ひとつは「Rotterdam in Focus: The City in Photographs 1843–Now」。1843年から現在まで約180年にわたるロッテルダムの都市景観の変遷を、300点以上の作品を通して紹介する。ハンス・アールスマン、エーファ・ベスニョー、カス・オールトハイス、オットー・スヌークなど、同市ゆかりの写真家の代表作が並ぶ。

カス・オールトハイス Vondelingenweg 1957-58
Nederlands Fotomuseum © Cas Oorthuys/Nederlands Fotomuseum

 もうひとつは「Awakening in Blue: An Ode to Cyanotype」。古典技法サイアノタイプに焦点を当て、19世紀の初期作品とあわせて、エコロジー、植民地史、身体表現などをテーマとする現代アーティスト15名の新作を展示する。

J.J. カンターズ&J.P. ストーク設計 Santos warehouse, front façade Rijnhaven side 1901
Collection Rotterdam City Archives

 また、オランダ写真史を代表する99点を紹介する「Gallery of Honour of Dutch Photography」も新展示として再公開される。アントン・コービン、ダナ・リクセンバーグ、エド・ファン・デル・エルスケン、リネケ・ダイクストラ、エルウィン・オラフらの重要作品が揃い、100点目のみ来館者投票によって選出される。

 オランダ写真美術館は2003年の開館以来、オランダ写真の保存・研究の中心を担い、とくに20世紀のアナログ写真およびドキュメンタリー写真を軸に25年以上にわたりコレクションを拡充してきた。収蔵点数は2028年までに750万点に達する見込みで、世界でも屈指の規模となる。

 今回の移転により、同館はコレクション公開の拡充、保存環境の強化、市民・地域コミュニティとの連携深化を図り、「誰もがアクセスできる写真文化プラットフォーム」としての役割をさらに高めていく方針だ。