2025.8.21

「ドクメンタ16」、史上初の女性のみのキュレーション・チーム発表

2027年にドイツ・カッセルで開催される「ドクメンタ16」。その中心を担うキュレーション・チームが発表され、史上初めて全員が女性で構成されることが明らかになった。

「ドクメンタ16」のキュレーション・チーム。左からロミ・クロフォード、マイラ・A・ロドリゲス=カストロ、ウェン・シャオユー、カーラ・アセベド=イェイツ、ナオミ・ベックウィズ(カッセル、2025) Photo by Nicolas Wefers

 2027年にドイツ・カッセルで開催される「ドクメンタ16」。そのキュレーション・チームが発表された。

 参加するのは、昨年12月に国際的な選考委員会によって芸術監督に任命されたナオミ・ベックウィズに加え、カーラ・アセベド=イェイツ、ロミ・クロフォード、マイラ・A・ロドリゲス=カストロ、ウェン・シャオユー(翁笑雨)の合計5名。同展史上初めて全員が女性によるキュレーション・チームとなり、展覧会や出版物、プログラムの企画をベックウィズとともに担う。

 ベックウィズは今回の発表に際し、「このチームとともにドクメンタ16をかたちづくることを大変光栄に思う。それぞれが独立した精神と思想を持ち、同時にアーティストや観客への寛容さを備えている。私たちはともに、多様な芸術実践の領域を横断し、地球規模で進行する社会的・文化的課題と向き合っていきたい」とコメントしている。

 チームの顔ぶれは、国際的かつ多分野にわたる経歴を持つ人物で構成される。アセベド=イェイツはカリブ海やラテンアメリカを中心にアメリカ大陸の現代美術を研究・キュレーションしてきた専門家で、これまでシカゴ現代美術館などで展覧会を企画している。クロフォードはシカゴ美術館附属美術大学の教授で、アートの制作や教育現場から生まれる知の方法論を重視し、ブラック・アーツ・ムーブメントを基盤とした教育プログラムの立ち上げにも関わってきた。

 また、作家・編集者のロドリゲス=カストロは、オードリー・ロードやフランソワーズ・ヴェルジェスといった思想家・詩人の言葉を編集・出版するなど、言語と記録を通じた文化的実践を展開している。さらに、キュレーターのウェン・シャオユーは、グッゲンハイム美術館やオンタリオ美術館などで活動してきたほか、国際的なビエンナーレや独立プロジェクトでも幅広く実績を持つ。

 ドクメンタ16をめぐっては、2023年11月に選考委員会のメンバー6人が相次いで辞任する異例の事態が発生。その後、2024年に改めて国際的な専門家による委員会が構成され、森美術館館長の片岡真実を含む6人が新たに任命された経緯がある。こうした紆余曲折を経て正式に選出されたベックウィズが中心となり、ようやく本格的な準備が動き出したかたちだ。