2026.3.5

マルタン・マルジェラ、京都で個展を開催へ。タカ・イシイギャラリー 京都で近作約14点を発表

タカ・イシイギャラリー 京都で、マルタン・マルジェラの個展が4月17日〜5月16日に開催される。2018〜25年に制作された約14点の近作が紹介される予定だ。

手前はマルタン・マルジェラ《BARRIER Sculpture (white)》(2024)、壁面は《BARRIER Mural (white)》(2024) © Martin Margiela. Courtesy of Bernier/Eliades and Taka Ishii Gallery / Photo: “We Document Art”
前へ
次へ

 タカ・イシイギャラリー 京都で、マルタン・マルジェラの個展が4月17日〜5月16日に開催される。

 本展は、東京・九段ハウスで同時期に開催されるマルジェラの個展「MARTIN MARGIELA AT KUDAN HOUSE」(4月11日〜29日)とともに、作家にとって日本初となる展覧会。会場では、2018年〜25年に制作された約14点の近作が紹介される予定だ。

 マルジェラは1957年ベルギー・ルーヴェン生まれ。シントルーカス芸術学校で学んだ後、1977年にアントワープ王立芸術学院に入学した。ファッションデザイナーとして国際的な評価を確立した後、2009年以降は視覚表現の領域をファッションの外へと拡張し、美術作品の制作に本格的に取り組んできた。これまでにBernier/Eliades(アテネ、ブリュッセル、2024)、ロッテミュージアム(ソウル、2022)、M WOODS(北京、2022)、ラファイエット・アンティシパシオン(パリ、2021)などで個展を開催している。

 その制作の根底には、人間の身体に対する継続的な探究がある。マルジェラは身体を、視覚と触覚という異なる知覚の枠組みが交差する場として捉え、作品は顕在化と秘匿、露見と保護といった相反する要素のあいだに生じる緊張関係を浮かび上がらせる。

 本展で発表される「Tops & Bottoms」シリーズは、ルーヴル美術館に収蔵されている古典彫刻を参照しながら、裸体像の一部を現代の下着の形状によって切り取ったもの。下着という本来は身体を覆い隠す衣服の形態を通して内部を露出させることで、作品は魅惑と違和感のあいだに独特の緊張を生み出す。また、カーペットやシリコンなどの素材を用いることで、作品は触覚的なテクスチャーを強く帯び、身体への感覚的な想像力を喚起することになるだろう。

マルタン・マルジェラ TOPS & BOTTOMS (Faun / top) 2023
© Martin Margiela. Courtesy of Bernier/Eliades and Taka Ishii Gallery / Photo by “We Document Art”

 日常的な物体への関心も、マルジェラの創作に通底する特徴のひとつだ。《Barrier Sculpture》では、都市空間で見られる保護バリケードの形状が用いられるが、その表面はフェイクファーで覆われている。こうした再文脈化によって、ありふれた物体は本来の機能から切り離され、詩的で不可解なアーティファクトへと変容する。ファウンド・オブジェクトをレディメイドとして扱いながら、最小限の介入によって物体の潜在的な意味や可能性を引き出す点も見どころだ。

 断片化や不在のモチーフも、マルジェラの作品に繰り返し現れる要素だ。会場入口近くに展示される予定の《Black Nail Polish》は、ニンフェンブルク磁器製の焼成用具を爪のかたちに見立てた5点のオブジェで構成されるが、本来そこから生まれるはずの物体は存在しない。また、《Kit (Black)》は未組立のプラモデルを思わせる構造を持ち、完成していない形態を鑑賞者の想像力のなかに投影させる。

 見えないものや欠落したものに対するこうした関心は、作品の意味を固定するのではなく、新たな解釈や想像を生み出す契機として機能する。マルジェラの作品は、不完全性や沈黙、存在と空虚のあいだにある曖昧な境界を提示しながら、物体や身体をめぐる鑑賞者の認識を改めて問い直すものとなりそうだ。