2025.11.7

今週末に見たい展覧会ベスト11。藤本壮介の建築展から横尾忠則の個展、正倉院にまつわる展示まで

今週閉幕する/開幕した展覧会のなかから、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。なお、最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。

「藤本壮介の建築:原初・未来・森」 セクション1「思考の森」の展示風景より
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もうすぐ閉幕

「藤本壮介の建築:原初・未来・森」(森美術館

展示風景より、《仙台市(仮称)国際センター駅北地区複合施設》模型

 日本を代表する建築家のひとり、藤本壮介による初の大規模個展「藤本壮介の建築:原初・未来・森」が11月9日に閉幕する。

 先月、7ヶ月に及ぶ会期を終えた2025年大阪・関西万博において《大屋根リング》を設計し、会場デザインプロデューサーを務めた藤本。本展は、約30年にわたる藤本の活動を8つのセクションに分けて網羅的に紹介しながら、建築の本質を身体で体験できる空間として構成されている。会場では、模型や図面、写真といった建築展の枠を超え、インスタレーションや大型模型、モックアップなどを駆使し、鑑賞者が空間に身を置きながら藤本建築の本質に迫ることを試みている。会場レポートはこちら

会期:2025年7月2日~11月9日
会場:森美術館
住所:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階
電話番号:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10:00~22:00 ※入館は閉館30分前まで
休館日:会期中無休
料金:[平日]一般 2300円 / シニア(65歳以上)2000円 / 学生(高校・大学生)1400円 / 中学生以下 無料
[土日・休日]一般 2500円 / シニア(65歳以上)2200円 / 学生(高校・大学生)1500円 / 中学生以下 無料

「正倉院 THE SHOW ー感じる。いま、ここにある奇跡ー」(上野の森美術館

展示風景より、《螺鈿紫檀五弦琵琶》

 奈良・東大寺旧境内にあり、9000件もの宝物を1300年近く守り伝えてきた正倉院。毎年秋に宝物を一般公開する「正倉院展」は、多くの人々で賑わうことで知られている。その「宝物」をこれまでにない方法で紹介する展覧会「正倉院 THE SHOW -感じる。いま、ここにある奇跡-」が、上野の森美術館で11月9日まで開催されている。

 本展キーワードとなるのは、3Dデジタルデータ、再現模造、そしてアーティストコラボレーションだ。会場では3Dデジタルデータに演出を施した展示により、宝物の細部や質感をよりリアルに紹介しているほか、《螺鈿箱》や《螺鈿紫檀五弦琵琶》など10点以上の「再現模造」が展示。また、伝説の香木である「蘭奢待(らんじゃたい)」の香りも再現されている。会場レポートはこちら

会期:2025年9月20日~11月9日
会場:上野の森美術館
住所:東京都台東区上野公園1-2
電話番号:03-3833-4191 
開館時間:10:00~17:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:会期中無休
料金:一般 2300円 / 高校・大学生 1700円 / 小・中学生 1100円

「横尾忠則 未完の自画像 - 私への旅」(グッチ銀座 ギャラリー)

展示風景より

 グッチ銀座 ギャラリーで開催されている横尾忠則の個展「横尾忠則 未完の自画像 - 私への旅」が11月9日で閉幕する。

 グッチと横尾のつながりは、2020年にグッチ渋谷 ミヤシタパークのオープニングを飾ったウィンドウ アートプロジェクトまで遡る。本展はそのコラボレーションをさらに発展させたものだ。本展のテーマである「未完」は、芸術の創造性は完成された瞬間よりも、むしろ未完成であることにこそ宿るという、横尾の美学に基づいている。

 キュレーションは美術評論家・南雄介が担当しており、「Y字路」シリーズを含む、「旅」を想起させるテーマを描いた作品を中心に約30点が並ぶ。会場レポートはこちら

会期:2025年4月23日〜11月9日
会場:グッチ銀座 ギャラリー
住所:東京都中央区銀座4-4-10 グッチ銀座 7階
開館時間:11:00〜20:00 ※最終入場は19:30
休館日:会期中無休
料金:無料(予約優先) ※屋上スペースの展示は天候・時間によって観覧不可の場合あり

「カルン・タカール・コレクション インド更紗 世界をめぐる物語」(東京ステーションギャラリー

白地チューリップ虫文様更紗裂 1700〜30年頃 Karun Thakar Collection, London. Photo by Desmond Brambley

 東京ステーションギャラリーで開催中の「カルン・タカール・コレクション インド更紗 世界をめぐる物語」展が11月9日までの会期となっている。

 インドで生まれた更紗はその誕生から数千年の歴史のなかで、衣服や宗教儀式、室内装飾など様々な用途に使われてきた。貿易を通して他国の要望に応じたデザインを自在に展開しつつも、力強いインドの美意識を内包するこれらは、装飾美術から服飾まで世界中のあらゆる芸術に多大な影響を与えた。

 本展では、インド国内向けにつくられた最長約8メートルの完全なかたちで残る更紗の優品から、アジアとヨーロッパとの交易で生み出されたデザインを伝える掛布や服飾品、そして国内のコレクションも交えた日本での展開を伝える貴重な作品を展覧。また、世界屈指のコレクター、カルン・タカールのコレクションも日本で初めて紹介している。

会期:2025年9月13日〜11月9日
会場:東京ステーションギャラリー
住所:東京都千代田区丸の内1-9-1
電話番号:03-3212-2485 
開館時間:10:00〜18:00(金〜20:00) ※入館は閉館30分前まで 
休館日:月
料金:一般 1500円 / 大高生 1300円 / 中学生以下 無料

「ミケル・バルセロ:信楽焼」(ファーガス・マカフリー東京

Fish and Crabs(⿂と蟹) 2023 ⼟ 49x45x47cm Photo by Ryuichi Maruo

 東京・北青山にあるファーガス・マカフリー東京で、スペインを代表する現代アーティスト、ミケル・バルセロによる個展が11月9日まで開催中だ。

 若き⽇からアフリカやアジアを旅し、マリのドゴン族の⽂化や⽇本の縄⽂⽂化などにも親しんできたバルセロ。その知識をもとに、絵画、陶芸、彫刻において独⾃のスタイルを確⽴し、荒削りな⼒強さと圧倒的な物質性を備えた作品を⽣み出してきた。その絵画作品は、1981年のサンパウロ・ビエンナーレ、82年のドクメンタ7をきっかけに世界的に知られるようになる。いっぽう、94年のアフリカ・マリ滞在では、ドゴン族の伝統的な⼟器に触れ、初めて⼟を使った制作をスタート。これまで4000点を越える陶作品を⽣み出し、あらゆる地域の陶芸について学んできたという。

 バルセロにとって同ギャラリーにおける初の発表となる本展では、2023年に信楽の陶芸家・古⾕和也との共同制作から⽣まれた14作品が展示されている。アーティストのインタビューはこちら

会期:2025年9月9日〜11月9日
会場:ファーガス・マカフリー東京
住所:東京都港区北青山3-5-9
開館時間:11:00~19:00 
休館日:日月祝(11月9日は開廊) 
料金:無料

「『白樺』 日本における西洋美術の導入と広がり」(茅ヶ崎市美術館

岸田劉生『白樺 十週年記念号』第10年4月号表紙 1919 紙に木版多色 茅ヶ崎市美術館蔵

 武者小路実篤や志賀直哉ら学習院同窓を中心に、1910年から23年まで刊行された雑誌『白樺』。その展覧会「『白樺』 日本における西洋美術の導入と広がり」が、茅ヶ崎市美術館で11月9日まで開催されている。

 明治から大正にかけての日本は西洋から多様な文化や価値観・思想が流入し、印刷技術も飛躍的な発展を遂げた時代であり、多彩な雑誌が次々と生まれた。そのなかで『白樺』は、実篤や直哉ら自身の小説や批評を発表する場であると同時に、レンブラント・ファン・レインジョルジュ・ルオーといった西洋の画家や作品を図版や評論を通して紹介。その芸術表現の背景にある精神性にも焦点を当てた点が大きな特徴だ。

 本展は、小説家でありながら美術へも強い関心を抱き自身も絵筆を取っていた実篤と、『白樺』の表紙を多く手がけた岸田劉生にそれぞれ焦点を当て、近代日本における西洋美術受容の一側面を探る。また、貴重な実篤の油彩画のスケッチブックや、白樺派が主催した西洋美術の展覧会や同時期に生まれた美術雑誌、文芸雑誌なども紹介されている。

会期:2025年9月2日〜11月9日
会場:茅ヶ崎市美術館
住所:神奈川県茅ヶ崎市東海岸北1-4-45
開館時間:10:00〜17:00 ※入館は16:30まで 
休館日:月
料金:一般 800円 / 大学生 600円 / 市内在住65歳以上 400円

「平子雄一展 ORIGIN」(岡山県立美術館

展示風景より

 人間と植物との関係をテーマに作品を制作してきたアーティスト・平子雄一の個展「平子雄一展 ORIGIN」が11月9日に閉幕する。なお、本展は香川、岡山、兵庫の3県8つの美術館で、日本人の現代美術家による作品を中心とした展覧会を開催する、瀬戸芸美術館連携プロジェクトのひとつ。

 本展は平子の故郷である岡山県で初の大規模個展となり、展示室のみならず、屋内広場や中庭など、美術館の建築を活かした展示が展開されている。会場レポートはこちら

会期:2025年9月16日〜11月9日
会場:岡山県立美術館
住所:岡山市北区天神町8-48
電話番号:86-225-4800
開館時間:9:00〜17:00
料金:一般 1500円 / 65歳以上・大学生 1300円 / 高校生以下無料

「瀬戸内国際芸術祭2025」

展示風景より、五十嵐靖晃による「そらあみ」の作品

 瀬戸内海の直島をはじめとする複数会場で展開される「瀬戸内国際芸術祭」。その第6回となる「瀬戸内国際芸術祭2025」の秋会期は11月9日までとなっている。

 2010年の初開催以来、毎回100万人前後の来場者を記録してきた瀬戸内国際芸術祭。「瀬戸内国際芸術祭2025」も、これまで同様、春(4月18日〜5月25日)・夏(8月1日〜8月31日)・秋(10月3日〜11月9日)の3会期(計107日間)にわけて芸術祭を開催。直島、豊島、女木島、男木島、小豆島、大島、犬島、高松港、宇野港に加え、春会期に瀬戸大橋、夏会期に志度・津田、引田、秋会期に本島、高見島、粟島、伊吹島、宇多津を合わせた計17のエリアが会場となっている。なお、宇多津エリア、志度・津田エリア、引田エリアは今回新たに加わるエリアとなり、また直島では今春開館した直島新美術館も会場となっている。春会期のレポートはこちら。夏会期のレポートはこちら

春会期:4月18日〜5月25日
夏会期:8月1日〜8月31日
秋会期:10月3日〜11月9日
会場:直島、豊島、女木島、男木島、小豆島、大島、犬島、高松港、宇野港、瀬戸大橋、志度・津田、引田、本島、高見島、粟島、伊吹島、宇多津
住所:香川県香川県高松市サンポート1-1-3F(高松港)
電話:087-813-2244(瀬戸内国際芸術祭総合案内所)
開館時間:会場によって異なる
休館日:会場によって異なる
観覧料:[3シーズンパスポート]一般 5500円 / 16〜18歳 2500円(要身分証) / 15歳以下 無料
[1シーズン(春・夏・秋)パスポート]一般 4500円

「第77回 正倉院展」(奈良国立博物館

展示風景より、《瑠璃坏》

 毎年秋に封が解かれ、宝物の点検が行われる正倉院宝庫。この時期にあわせて宝物を一般に公開する正倉院展が、今年も奈良国立博物館で11月10日まで開催されている。

 正倉院宝庫には様々な経緯で宝物が納められたと考えられている。大きくは天平勝宝8歳(756年)6月21日以降の5回にわたり、光明皇后によって東大寺の大仏に献納された聖武天皇の遺愛品、東大寺での法要にまつわる品々、東大寺の造営に当たった造東大寺に関連する品々に分類することができる。ほかにも宮中儀式具や武器・武具なども残っており、宝物の入庫には様々ないきさつがあったことが推定されている。

 今年の出陳宝物は67件、うち6件は初出陳。シルクロードを経て東アジアにもたらされた《瑠璃坏》や、「蘭奢待(らんじゃたい)」の名でもよく知られている《黄熟香》なども展示されている。会場レポートはこちら

会期:2025年10月25日~11月10日
会場:奈良国立博物館
住所:奈良県奈良市登大路町50(奈良公園内)
電話:050-5542-8600
開館時間:8:00~18:00(金土日祝〜20:00) ※入館は閉館の60分前まで
休館日:会期中無休
観覧料:一般 2000円 / 大学・高校生 1500円 / 小中学生 500円 ※日時指定券

今週開幕

「alter. 2025, Tokyo」(日本橋三井ホール)

キービジュアル

 日本のプロダクトデザインに革新を促すイベント「alter. 2025, Tokyo(アルター. 2025, トーキョー)」が、日本橋三井ホールで初開催される。会期は11月7日〜9日。

 同企画は、次世代を担う多様な領域のクリエイターによるプロトタイピングやコラボレーションを促進し、オルタナティブなプロダクトデザインの在り方を提示する実験的なデザインイベントとなる。グローバルのデザインシーンを牽引するコミッティメンバーに選抜された11組のプロジェクト、計56名のクリエイターらがプロダクト作品を展示。これらの制作・展示には最大300万円の助成が設けられ、通常は実現が難しいような独創的なアイディアのプロトタイプ化を支援し展示・紹介することで、日本のプロダクトデザインに革新を促すことを試みるという。

会期:2025年11月7日〜9日
会場:日本橋三井ホール
住所:東京都中央区日本橋室町 2-2-1 COREDO 室町1  4、5階
開館時間:11:00〜20:00(最終日〜17:00)
休館日:無休 
料金:[1日券]一般 2000円 / 学生 1000円[3日通し券]一般 3000円 / 学生 2000円

「EASTEAST_TOKYO 2025」(科学技術館)

「EASTEAST_TOKYO 2023」の様子 Photo by Yuki Aizawa. Courtesy of EASTEAST_

 2020年に始動したアートフェア「EASTEAST_TOKYO 2025」が、11月8日〜10日の会期で東京都千代田区の科学技術館で開催される。

 「EASTEAST_TOKYO」は、2020年の第1回でコロナ禍におけるアートフェアのあり方を問い直し、実験的な試みとして始動した。23年の第2回からは科学技術館を会場とし、約1万人を動員。東京のカルチャーシーンと国内外のアーティストやコミュニティを結びつける場を提供してきた。

 第3回目となる今回は、日本およびアジアを中心に約25のギャラリーやアートスペースが参加する。

会期:2025年11月8日〜10日 ※プレビューは11月7日(招待者と報道関係者のみ)
会場:科学技術館
住所:東京都千代田区北の丸公園2‐1
開館時間:12:00〜19:00(11月10日〜17:00)
料金:[1日券]一般 2000円 / 23歳以下 1000円
[3日通し券]一般 5000円 / 23歳以下 2500円