2025.5.21

勅使河原宏の生誕100周年記念プロジェクトが始動。開幕展「SA NI HA|さには」が草月会館で開催

いけばな草月流第三代家元であり、美術、映画、舞踏、陶芸、書など幅広い分野で活躍した勅使河原宏。その生誕100周年を記念したプロジェクト「Hiroshi Teshigahara : Visionary Worlds」が始動。開幕展として「SA NI HA|さには」が、東京・赤坂の草月会館で開催される。会期は6月7日〜7月6日。

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 いけばな草月流第三代家元である勅使河原宏の生誕100周年を記念したプロジェクト「Hiroshi Teshigahara : Visionary Worlds」が始動。開幕展として「SA NI HA|さには」が、東京・赤坂の草月会館で開催される。会期は6月7日〜7月6日。

 勅使河原宏は1927年東京生まれ。草月流の創始者・勅使河原蒼風の長男。東京藝術大学で油絵を学び、在学中より岡本太郎や安部公房による前衛芸術グループ「世紀」に参加。その後、表現の場を映画に移し、映画『砂の女』(1964)でカンヌ映画祭審査員特別賞を受賞。映画制作に加えて、1958年に発足した草月アートセンターのディレクターとしても活躍する。1980年に第三代家元に就任。その後、国外では韓国・ソウルの国立現代美術館(1989)や、イタリア・ミラノのパラッツオ・レアーレ(1995)、アメリカ・ワシントンのケネディセンター(1996)、 国内では丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(1994)や広島市現代美術館(1997)など、様々な場で竹を自在に使った大規模な個展を開催し、いけばなの枠を超えた表現を行った。また、竹で構成した舞台美術と演出によるオペラ「トゥーランドット」(1992仏・リヨン、1996スイス・ジュネーブ)、創作能「スサノオ」(1994、アビニョン演劇祭)、チャンドラ・レーカ舞踏団の「スローカ」(1999)、創作舞踊野外劇「すさのお異伝」(1999)などを幅広く手がけた。陶芸や書にも才能を発揮し、ジャンルにとらわれない創作活動を晩年まで展開。90年代からは「連花(れんか)」という、新たな手法による即興創作を提唱。2001年に死去した。

 草月はこうした勅使河原宏の活動の現代的意義を再発見することを目指し、「Hiroshi Teshigahara: Visionary Worlds|勅使河原宏の世界 生誕100周年」プロジェクトを始動。戦後東京で前衛芸術の拠点となった「草月アートセンター」の精神を受け継ぎ、その活動を改めて世界へ発信するために、展覧会、上映、パフォーマンス、映像インスタレーション、トークイベント等を通して多層的に展開する。

 プロジェクトの第1弾となる開幕展 「SA NI HA|さには」では、陶と書の筆跡を軸に、イサム・ノグチの石庭と対峙する勅使河原宏の造形的思考をたどる。80年に草月プラザ「天国」にて開催された「イサム・ノグチ 勅使河原宏 二人展」にて宏が出品した陶作品を、当時のレイアウトを参照し設置。また、石庭「天国」と勅使河原宏の「陶」をつなぐ要素として越前和紙にしたためられた、宏による書の筆跡をコラージュしたバナーを使用し展示する。

 同展のディレクターを務める勅使河原季里は本展について、次のようにコメントしている。

 勅使河原宏が生涯を通じて追求した芸術の境界を越える精神を具現化したものであり、陶芸と書の筆跡という二つの表現手段を通じて彼の芸術哲学に触れる貴重な機会です。特に、イサム・ノグチの「天国」という舞台に勅使河原の陶芸と書の筆跡が融合することで、二人のアーティストの対話が生まれ、私たちに新たな感覚の体験をもたらします。
 また、本展は単なる展示にとどまらず、彼の作品が今日においてもなお問いかけ続けるテーマについて、観る者に静かな対話を促す空間となっています。勅使河原宏の作品が持つ力強さと繊細さ、そしてその内に宿る精神性を感じ取っていただければ幸いです。

 なお、今後も本プロジェクトは主に草月会館を会場として、勅使河原宏展第2弾のほか、国内外の様々なアーティストとのコラボレーション企画展等の開催を予定している。