2025.5.15

古美術鑑賞入門シリーズの第6弾。根津美術館で企画展「はじめての古美術鑑賞-写経と墨蹟-」が開催

東京・南青山の根津美術館で、「はじめての古美術鑑賞」シリーズの第6弾となる、企画展「はじめての古美術鑑賞-写経と墨蹟-」が開催される。会期は5月31日〜7月6日。

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 東京・南青山の根津美術館で、企画展「はじめての古美術鑑賞-写経と墨蹟-」が開始される。同館で2016年から開催されている、古美術鑑賞の入門編となるような展覧会である「はじめての古美術鑑賞」シリーズの第6弾となる。会期は5月31日〜7月6日。

 若い世代の仏像や刀剣、琳派への注目度の高まりを背景に、同館で始まった「はじめての古美術鑑賞」シリーズ。敷居が高いと思われがちな古美術の専門用語を作品例とともに解説し、古美術の面白さを体感できるような機会をつくることを目的としている。過去には、「絵画の技法と表現」(2016)、「紙の装飾」(2017)、「漆の装飾と技法」(2018)、「絵画のテーマ」(2019)、「人をえがく」(2021)の計5回の展示を行っている。

 第6弾となる本展では、仏教に基づく古美術の重要なジャンルである写経と墨蹟(ぼくせき)を取り上げる。展示室を二分して写経と墨蹟を並べ、その違いを比較できるような展示構成となる。展示作品は同館が所蔵する国宝、重要文化財が中心となり、書としての見どころや歴史的な重要性などの鑑賞ポイントを、専門用語の解説とともに知ることができる。

 例えば平安貴族が功徳を求めてつくらせた壮麗な写経の遺品からは、その料紙装飾や書風を通じて当時の美意識を知ることができるだろう。

国宝 観普賢経(無量義経・観普賢経のうち)(部分)日本・平安時代 11世紀 根津美術館蔵

   また、奈良時代の現存する唯一の紺紙銀字経である、60巻本の「華厳経」を書写した二月堂焼経も展示。本作は火災にあいながらも巻首から巻末まで本紙が遺っている貴重なものである。

重要文化財 華厳経 巻第四十六(二月堂焼経)(部分)日本・奈良時代 8世紀 根津美術館蔵

 また、主に禅宗の僧である師から修行増へ、修行の進捗や達成の証として与えられてきた墨蹟も展覧される。書き手である高僧の精神が表れたような個性的な書風が見どころとなる墨蹟は、やがて茶室の床の間を飾る格の高い掛物として位置づけられるようになる。

重要文化財 一山一寧墨蹟 進道語 日本・鎌倉時代 正和5年(1316) 根津美術館蔵
重要文化財 無学祖元墨蹟 附衣偈断簡 日本・鎌倉時代 弘安3年(1280) 根津美術館蔵

 なお同館では、担当学芸員が展覧会の見どころを解説するスライドレクチャーも開催される。また同時開催展として、展示室2で京都と大津を結ぶ街道の土産物として親しまれた大津絵をまとめた展示「大津絵 つくられ方・たのしみ方」や、展示室5で収納箱を主役にした「特別仕様の美術品収納箱」、展示室6で旧暦6月を表す風待月の季節にあった茶道具約20点を集めた「風待月(かぜまちつき)の茶」が開催される。