EXHIBITIONS

令和4年度第1期 原画公開

〈黒書院〉の桜と山水

対面所に見る和漢の競演

「黒書院」二の間障壁画 桜花雉子図(部分)

「黒書院」二の間障壁画 楼閣山水図(部分)

 重要文化財《二の丸御殿障壁画》を保存する二条城障壁画 展示収蔵館が、「〈黒書院(くろしょいん)〉の桜と山水 ~対面所に見る和漢の競演~」展を開催している。年4期にわたって行われる《二の丸御殿障壁画》原画公開の初回。本展では、将軍と高位の人々が対面した二の丸御殿「黒書院」に描かれた日本の春が題材の花鳥画と、中国の風景を描いた山水図を公開している。

 かつては「小広間(こひろま)」と呼ばれた「黒書院」は、「大広間」が将軍との公的な対面の場であるのに対し、将軍との私的な対面の場であったと考えられている。ここで親王や勅使など高位の公家や、徳川家に近しい大名との対面が行われ、1626(寛永3)年に、後水尾天皇の二条城行幸の際には、高位の公家を饗応する場となった。

 本展では、「黒書院」の対面所である一の間と二の間の障壁画を公開。その大きな特徴は、2つの技法、2つの主題で描かれた障壁画がひとつの空間に設置されている点だ。

 ひとつは、金箔を背景に、鮮やかな色彩で春の景色を描く《桜花雉子図(おうかきじず)》、もうひとつは、墨と淡彩で、山中から水辺へと続く風景を描く《楼閣山水図(ろうかくさんすいず)》であり、《桜花雉子図》は、当時数え年二十歳であった狩野尚信(1607〜50)の作、《楼閣山水図》は、狩野派のほかの絵師が描いたものとされている。

 色鮮やかな絵具を使って、日本の季節を描く絵は、日本で古来描かれてきた「やまと絵」の、墨の濃淡を主体にして山水や人物を描く絵は、中国からもたらされた「唐絵漢画」の伝統を継ぐもの。こうした「やまと絵」と「唐絵」を並べて鑑賞することは、室町時代に、将軍や高位の公家、寺社など、上流階級の人々のあいだに流行していた。それと同じことが、この「黒書院」一の間・二の間に受け継がれ、ここが上流階級の人々を迎え入れる場であることを、障壁画によって示そうとしたためだと考えられている。

 本展を通じ、江戸時代に限られた者だけが見ることのできた、晴れやかな春と、静かな風景、和と漢の競演を楽しみたい。