EXHIBITIONS

林樹里「水面をなぞる」

gallery fu
2025.04.09 - 04.20

林樹里 とおくの潮音 2025 雲肌麻紙、錫箔、墨、藍 15.8 × 22.7 cm

 gallery fuで、林樹里による個展「水面(みなも)をなぞる」が開催される。

 林樹里は、東京藝術大学大学院保存修復研究領域(日本画)博士後期課程を修了し、博士号を取得。在学中は、俵屋宗達が創案したと考えられ、琳派が多く用いた"たらし込み"の研究に力を入れる。絵具や墨を塗った後に、別の濃度の絵具や墨を垂らしてにじませるというそれまでの日本画には見られなかった偶然性と生命力みなぎる"たらし込み"の技法は、林にも大きな影響を与える。自らが主体となって制作する態度から、自然に現れてくる現象に注意を向けるようになり、自然と人間の関わりについて「人間自身も自然の一部である」と考えているという。

 2023年、ポーラ美術振興財団在外研究員としてロンドン研修を経て、ヨーロッパ各地を巡ったことも林に日本や日本文化を客観的に見るという大きな視座を与えた。本展では、型、技を忠実に守り、確実に身につける段階を経て、既存の型を破り、発展させ、さらに独創的な個性が発揮されているとのこと。

 以下、林による展覧会ステートメントとなる。

「『おのずから現れるもの』や『うつろうもの』をテーマに、自身の描く行為と画材が生む偶発的な現象のあいだを往来し、自然と対話するように制作しています。

 本展では、近年取り組む『noise(さわり)』シリーズを展示。『さわり』とは本来三味線などの楽器における独特な雑音を指しますが、同時に聴かせどころや要点という意味を表します。

 このシリーズでは、自然や異国に身を置き、その土地の空気が内面で新たな『noise(さわり)』となって響く感覚を描きます。今回はとくに、水辺からインスピレーションを得た作品を中心に展開します。

 ―――水辺に和紙を広げ、水面が生むリズムを五感でなぞる。金属の箔は水面のかがやきとシンクロして、刻々とうつろう。その一瞬ごとを記録するように筆でなぞる」(展覧会ウェブサイトより)。