2025.8.22

「20世紀北欧デザインの巨匠 スティグ・リンドベリ展」(日本橋髙島屋S.C. 本館8階ホール)開幕レポート。長く愛されるデザインから豊かな造形の陶芸まで多彩な表現が一堂に

⽇本橋髙島屋S.C. 本館の8階ホールで「20世紀北欧デザインの巨匠 スティグ・リンドベリ展」が開幕した。会期は9月7日まで。

展示風景より
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 ⽇本橋髙島屋S.C. 本館の8階ホールで「20世紀北欧デザインの巨匠 スティグ・リンドベリ展」が開幕した。会期は9月7日まで。

 スティグ・リンドベリ(1916〜82)は、スウェーデンの陶芸家・デザイナー。1937年に磁器メーカー、グスタフスベリ社にデザイナーとして入社し、機能性とは何か、また調和や美とは何かを追求し、独創的なアイデアを活かして新しい表現⽅法に挑戦してきた。リンドベリが生み出したデザインは、没後40年以上を経たいまでも、同社を代表する商品として⼈気を集めている。本展はこのリンドベリの仕事を10章構成で包括的に紹介するものだ。

展示風景より、タペストリー

 第1章「テーブルウェア 1940-1980」では、リンドベリの手がけた代表的なテーブルウェアを紹介。

 リンドベリは当初、ほかのデザイナーたちが手がけたテーブルウェアのモデルに装飾を施す仕事をしていたが、1937年にグスタフスベリ磁器工房に入社、自身が初めてデザインを手がけたティーセットが41年に製品化される。49年には同工房のアートディレクターに就任し、デザイナーとしての地位を確立。59年からの直線的な形状の「LL」モデルや、60年に発表されたリーフ模様「ベルサ」などは、いまも愛されるリンドベリの代表的な作品となった。

展示風景より、左が「ベルサ」

 70年代に入ると大胆な花柄のデザインの流行に合わせ、赤と青の「アスター」や「リビエラ」といった装飾もデザイン。73年に登場した、白樺の感皮を思わせる淡いグレーの釉薬に濃いストライプが特徴的な耐熱性器「ストーンウェア」もキャリアを象徴するものとなった。

展示風景より、「アスター」や「リビエラ」
展示風景より、「ストーンウェア」

 第2章「H55」では、スウェーデン南部の街・ヘルシンボリで国際建築工業デザイン博覧会「H55」が開催されたときに、リンドベリが手がけたシリーズを展示。そして第3章「ファイアンス」では、厚みが均一でない素地に錫が施され、表面に模様や人物像が繊細な筆致で美しく手描きされる、イタリア・ファエンツァに由来する焼き物「ファイアンス」シリーズを紹介。リンドベリはここでも、豊かなデザインを展開している。

展示風景より、「ファイアンス」

 第4章「アートウェア」は、デザインに関心を持つ顧客に向けて提案された、アートウェアを紹介。明るい素地に繊細に描かれたディテール豊かな絵柄が特徴的な「アルゲンダ」シリーズや、大理石や石膏のような質感を持つ「ヴェックラ」シリーズ、自然や動物をデザインに取り入れたものなど、様々なかたちで芸術性を発露した。

展示風景より、「アートウェア」

 第5章「フィギュリン(人物と動物)」と第6・7章「ユニークなたく器/ストーンウェアの彫像」では、動物や人物などをモチーフとした作品を展示することで、リンドベリの彫刻家としての顔が紹介されている。

展示風景より、リンドベリによる彫刻

 第8章「テキスタイル」では、40年代から70年代にかけてリンドベリが手がけたテキスタイルを紹介。とくに「エデンの庭」はリンドベリを代表するデザインといえる。

展示風景より、テキスタイル。左から2番目が「エデンの庭」

 第9章「スティグ・リンドベリと日本」では、リンドベリと日本との関係性を感じさせる作品を紹介。そして最後となる第10章「子どものためのデザイン」では、リンドベリがデザインした子供用の食器セットや児童書の挿絵、貯金箱などを紹介している。

展示風景より、リンドベリが子供のために手がけたデザイン

 誰もがそのデザインを見たことはあるが、その多彩な活動について深く知る人は少ないスティグ・リンドベリ。その活動を総合的に振り返ることができる展覧会となっている。