2026.10.10

渋谷PARCOで「P.O.N.D. 2026」が開催中。「re/sort」をテーマに、アートとカルチャーが館内各所に展開

渋谷PARCOを舞台に開催されるアート&カルチャーイベント「P.O.N.D. 2026」がスタートした。今年のテーマは「re/sort」。4階のPARCO MUSEUM TOKYOを中心に、1階エントランス、9階SUPER DOMMUNE、地下1階GALLERY X BY PARCO、10階PBOX STNDへと会場を広げ、国内外のアーティストによる展示やパフォーマンス、イベントを展開する。10月19日まで開催中のこのイベントをレポートする。

文・撮影=大原愛美(編集部)

今井歩美による作品。左から《Traces in the Dark》、《Pattern》、《幻の登山》、《半身》
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 渋谷PARCOを舞台に開催されるアート&カルチャーイベント「P.O.N.D. 2026」がスタートした。会期は10月2日〜19日。2020年に始まり、今年で7回目を迎える「P.O.N.D.」は、アート、ファッション、音楽、映像などジャンルを横断する表現を紹介してきた。今回は4階のPARCO MUSEUM TOKYOを中心に、1階エントランス、9階SUPER DOMMUNE、地下1階GALLERY X BY PARCO、10階PBOX STNDまで、渋谷PARCOの館内各所へとプログラムを広げる。

 今年掲げられたテーマは「re/sort」。「resort」という語が持つ、人々が集う場所という意味に、「re=再び」「sort=整理する」というふたつの語を重ね、見慣れたものや価値観を捉え直し、選び直し、組み替えていくことをひとつの起点とする。アートディレクションは田岡美紗子、空間ディレクションは京都を拠点とするクリエイティブファーム・NEW DOMAINが担当した。

「re/sort」から考える、ものを見る位置

 4階のPARCO MUSEUM TOKYOでは、国内外から集まった10名によるグループ展を開催。HAL、kerocchi、LI MUYUN、masato yamada、Seooh Park、今井歩美、川端健太、櫻井隆平、百野幹人、矢野憩啓が参加している。写真、絵画、彫刻、インスタレーションなど、それぞれ異なるメディアを用いる作家たちがひとつの空間に集う。

櫻井隆平《Rotating Objects No.4: 上の下》

 櫻井隆平は、仏教美術における「踏むもの/踏まれるもの」の関係を組み替える。《Rotating Objects No.4: 上の下》では、四天王の足もとに踏み伏せられる邪鬼という構図から着想した、上と下、支えるものと動かすものの関係へと視線を向ける。フローラルフォームでつくられた像は鑑賞者の操作によって回転し、上部との接触によって徐々に削られていく。重量、素材、摩擦、回転によって、固定されていたはずの上下関係が別のものへと変化していく。

LI MUYUN《自由唱》

 LI MUYUNは、自身の身体を通して「自由」と「責任」の関係を問いかける。《自由唱》では、ひとつのスクリーンに自身の姿を投影。1時間にわたり「私が責任を取ります」と繰り返す映像と、数珠を手に座禅を組み同じ言葉を唱える映像を重ね合わせている。本作はジャン=ポール・サルトル(1905〜1980)の実存主義から着想したもので、自由な存在であることと、自らの選択に責任を負うことを、ひとつの身体を通して並置する。時間の経過とともに疲労や身体の脆弱さも画面に現れてくる。

今井歩美による作品。左から《Traces in the Dark》、《Pattern》、《幻の登山》、《半身》

 今井歩美は、木版画から着想を得て、木を彫るという行為を起点に造形作品を制作する。通常であれば完成時には消えてしまう下描きの線やテープの跡など、制作途中の痕跡をあえて作品のなかにとどめることで、表面には現れないものへと目を向ける。完成された形だけではなく、そこへ至るまでの時間や行為も作品の一部となっている。

masato yamada《#3 無題》

 masato yamadaは、ロンドンで拾得・購入したシャツ、鍵、段ボール箱、靴、ガラスといった身近なものに、わずかな介入を施す。それらは都市の路地裏やバックステージを思わせる細い通路に配置されている。本来の用途や文脈から少しだけずらされた大量生産品は、それまで背景へと退いていた親密さや欲望、身体の気配を浮かび上がらせる。

HAL《Gun》

 HALは、写真を時間を保存する平面としてだけでなく、物質へと変換できるものとして扱う。複数の時間に撮影した写真をひとつの画面へまとめる「パノラマコラージュ」を発展させ、プリントを重ねることで写真を立体へと変換する。グーグルストリートビューを用いた作品《Gun》では、高速道路上でストリートビューを撮影する車が警察に止められている瞬間など、オンライン上で再発見した場所や出来事を素材としている。

渋谷の入口に現れる「新たな生命」

 展示はPARCO MUSEUM TOKYOだけにとどまらず、渋谷PARCO内の各所で行われる。公園通りに面する1階正面エントランスでは、ロンドンを拠点に活動する稲垣悠太朗による作品を展開する。

稲垣悠太朗《Citizen 1》

 稲垣は、グラフィティの制作や都市探索の経験を背景に、都市にある既製品や工業素材を用いながら、都市と生物とが入り混じるような身体を制作してきた。稲垣が作品を設置したのは、商業施設の内部と路上とのあいだにある風除室だ。そこには、人間の身体と動物のような頭部が組み合わされた複数の身体、「Citizen」シリーズが展示されている。これらは粘着テープやプラスチックフィルム、衣服、アニマルマスクなどを用いてつくられたもので、稲垣がこれまで都市へ適応するための「肌」として扱ってきた黒い既製品が、新たな身体のかたちへと組み替えられている。

 風除室は、本来、人が滞在するのではなく通過するための場所だ。そこに異質な身体を置くことで、普段は意識されない「街/建物」「外/内」の境界がわずかにずれる。人の流れを眺め、同時に通行人から眺められるその身体は、人間なのか、動物なのか、それとも人工物なのかを容易には判別させない。日常的に通過する都市空間そのものを、わずかに見慣れないものへと変化させている。

SUPER DOMMUNEをひとつのアートスペースへ

 9階のSUPER DOMMUNEでは、「P.O.N.D.」とDOMMUNEによる新たなコラボレーションプロジェクト「P.O.N.D.OMMUNE」が始動。その第1弾として、玉山拓郎の展示が行われる。玉山は、家具や日用品を思わせるオブジェクトと光、音響などを組み合わせたインスタレーションを制作してきた。

玉山拓郎《After Overture》(2025〜26)

 メインフロアに展開される《After Overture》(2025〜26)は、設置場所の開口部から形態を導き、それらを円状につなげることで生み出した《Overture》(2024)を発展させた作品だ。《Overture》の制作で得られた生成原理を作品内部へと移すことで、特定の場所との関係を保ちながら、異なる空間にも展開できる構造へと変化させている。また、作品を組み立てる際に生じる金属音を録音し、それを一定のルールのもとで引き延ばし、重ねることで、制作のプロセス自体をサウンドとして空間に立ち上げている。

玉山拓郎《Epiphany》(2026)

 ミーティングルームに設置された《Epiphany》(2026)は、光源と物体の位置関係から生じる逆光を起点とする。物体の背後に光源を置くことで、その色や質感、細部は光のなかへ後退し、輪郭だけが前面へと現れる。鉄とLEDライトという物質的な要素によって構成されながら、物体と像との境界を曖昧にし、何かが不意に出現するかのような知覚をつくり出している。

 SUPER DOMMUNEは通常、ライブストリーミングや音楽、トークが行われる場だ。そこへ玉山の光、物体、音による作品が置かれることで、場所そのものの機能もまた一時的に組み替えられている。

「P.O.N.D. AWARD」から、その先へ

 地下1階のGALLERY X BY PARCOでは、昨年の「P.O.N.D. AWARD 2025」でグランプリを受賞したみずかみしゅうとの個展「いつか島になるため」が開催されている。会期は10月2日〜12日。

みずかみしゅうと《島になりたい》
みずかみしゅうと《きいろいねこ》

 みずかみは彫刻を中心に、インスタレーションや映像、3D造形などを用いて制作しており、本展では「島」をモチーフに新作を発表。会場には、髪を緑色に染めた自身を島に見立てた写真作品や、幼少期に描いたマンガのキャラクターを3D造形でフィギュア化した作品など、コミカルで遊び心溢れる作品が並ぶ。

展示から音楽、映像へ。館内各所をつなぐP.O.N.D.

 会期中には展示だけでなく、音楽や映像を交えたイベントも組み込まれている。初日の10月2日には、10階PBOX STNDで、watakemiとkairi satoによるクリエイティブユニット・tsuchifumazuがオーガナイズするオープニングパーティーが開催された。最終日の10月19日にはSUPER DOMMUNEで「DOMMUNE × P.O.N.D.2026 SPECIAL NIGHT」が行われ、参加者らによるトークとともに、来場者の投票で選ばれる「P.O.N.D. AWARD 2026」のグランプリが発表される予定だ。