2026.1.16

「Exploring Ⅲ - かかわりから生まれる芸術のかけら -」が大阪・本町で開催。障害のある人々と現代美術の作家を包括的に紹介する展覧会

Osaka Metro 本町ビルで、障害のある人々と現代美術の作家を包括的に紹介する「Exploring Ⅲ - かかわりから生まれる芸術のかけら -」が開催されている。会期は1月15日〜25日。

「Exploring Ⅲ - かかわりから生まれる芸術のかけら -」展示風景 photo by Nakagawa Ai
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 「Exploring Ⅲ - かかわりから生まれる芸術のかけら -」が、Osaka Metro 本町ビルで開催されている。会期は1月15日〜25日。

 今日では日本版「アール・ブリュット」という言葉が社会に浸透し、障がいのある人の作品を見る機会も増えた。いっぽう、「障がい者」や「アール・ブリュット」という言葉によっ て一括りにされ、個々の作家や作品について、美術の問題として批評の俎上にのらずにいる現状も指摘される。また世界に目を向ければ、近年の現代美術の潮流として、社会的にマイノリティとされてきた人たちの表現を取り上げる必要性が唱えられ、実践が進んでいる。障がいのある人が制作した作品も、ニューヨーク近代美術館、フラデルフィア美術館、パリのポンピドゥーセンター、サンフランシスコ近代美術館など著名美術館で収蔵が進んでいる状況だ。このような背景をもとに、本展は、日本において障がいのある人の作品を現代美術として捉え、 評価や批評を促進する契機にすることを試みるものだ。

「Exploring Ⅲ - かかわりから生まれる芸術のかけら -」展示風景 photo by Nakagawa Ai

 本展は、「Exploring - 共通するものからみつける芸術のかけら」(2019)、「Exploring Ⅱ - 共通するものからみつける芸術のかけら-」(2025)に続く第3弾。展覧会タイトル「Exploring」は直訳すると「探究する」だが、そこには2つの思いが込められているという。ひとつは、現代美術の世界で障がいのある人の作品がどのように位置づけられるか探ることと、もうひとつは、個々の作品自体をじっくり見ることで、作品が発する意図や物語を自ら探し想像する探求 をしてほしいという意味だ。

 また「かかわりから生まれる芸術のかけら」は、学校での経験や家庭での生活、身近にあった動植物や素材、人との関係性を反映しながら形成された表現のユニークさこそ、言葉を超えて大切に したい感覚があるのではないか、との仮説が込められているという。

 本展では「学びのかたち」「記しと気づき」「感じるものたち」という3つのキーワードから作品を紹介する。

「Exploring Ⅲ - かかわりから生まれる芸術のかけら -」展示風景 photo by Nakagawa Ai

 「学びのかたち」は、幼少期に身につけた技を礎に、独自の展開を遂げるかたちにフォーカス。ここでは、紙を切るルーティーンから始まりシステマティックな手法で絵画や紙の立体制作を続ける森本絵利、絵具の混色の原理を学んだことをきっかけに、色に魅了され、筆を丁寧に引き続けることで鮮やかな色面の絵画を生み出すかつのぶ、歌舞伎や能に幼少期から嗜んだ経験と学校や施設で学んだ書写が融合し、独自の文字世界を表現する松本国三、工務店を営む家庭に生まれ釘や金槌が身近にあり、精神を安定させるかのごとく釘を一心不乱に打ち続けた平田安弘が紹介される。

「Exploring Ⅲ - かかわりから生まれる芸術のかけら -」展示風景 photo by Nakagawa Ai
「Exploring Ⅲ - かかわりから生まれる芸術のかけら -」展示風景 photo by Nakagawa Ai
森本絵利 御影石(大) 2017 白黒系7色の紙輪(47866個/6838組) サイズ可変(長さ121.5m) Courtesy of Gallery Yamaki Fine Art Photo by Kirico
かつのぶ Untitled 2024 キャンバスに油彩 41×31.8cm Courtesy of atelier ripehouse
松本国三 能楽の翁は 2000 紙に油彩 38.2×54.1cm
平田安弘 とうもろこし 2024 紙管にカラー釘、マーカー、染料、ボンド φ10×49.7cm

 2つ目のキーワードは「記しと気づき」。誰に見せるでもなく描き、表現し続ける動機には何があるのか──人はなぜ絵を描き、ものをつくるのかという「作り手」の問いに加えて、自分のための記しが他者に見出され共有されたときに、どのように受け止められるのかという「受け手」 の価値についても考える。画材がない環境でも描くことに貪欲で、居室の壁紙を唾液で剥がしながら好きな 世界を表現し続けた勝山直斗とその行為を尊重したことで残された壁画の写真、牛乳パックのロゴやバーコード、成分表を細かく切り刻み、透明ケースに重ね続ける日課を10年以上続けている中根恭子の記録写真、そして「なぜ人は絵を描き・見せ・見るのか」という問いを軸に、私的な線や記述が他者との出会いのなかで変容していく「出来事としての絵画」を探 究する高田マルが紹介される。

「Exploring Ⅲ - かかわりから生まれる芸術のかけら -」展示風景 photo by Nakagawa Ai
「Exploring Ⅲ - かかわりから生まれる芸術のかけら -」展示風景 photo by Nakagawa Ai
勝山直斗 無題 久美学園の壁面の記録写真、2021年10月20日撮影 Courtesy of art space co-jin
中根恭子 牛乳パック 2014ー(進行中) 記録写真 2025年撮影 サイズ不定形
高田マル こわれながらうまれる(間違った言葉)1 2024 ビニールシートにアクリル絵具、膠、ウレタン樹脂系接着剤、木 36×50×10cm Photo by Maniwa Yuki

 最後のキーワード「感じるものたち」では、指や拳で直接絵具を操り、個人の記憶や経験をも超えるような原初的な絵画を生み出す齊藤彩と、躍動感あふれる動物の描写から、黄色の画面中央に青い円が浮かぶ絵画へと変遷しながらも、一貫して生命の源を思わせるイメージを生み出し続けた大江正彦の作品が紹介。身体性や触感性を重視し、筆先(指先)と画面との交信によって立ち上がる絵画に注目したい。 

「Exploring Ⅲ - かかわりから生まれる芸術のかけら -」展示風景 photo by Nakagawa Ai
「Exploring Ⅲ - かかわりから生まれる芸術のかけら -」展示風景 photo by Nakagawa Ai
齊藤彩 無題 2024 紙に油彩、アクリル絵具 135.5×82cm Courtesy of Galerie Miyawaki
大江正彦 きいろ 2023 キャンバスにアクリル絵具、木炭 62×73.5㎝

 なお、今回の出展作家のなかには海外の歴史ある美術館で作品が収蔵されている作家も含まれる点にも注目だ。例えば、松本国三はアール・ブリュット・コレクション(スイス)、ポンピドゥー・ センター(フランス)、平田安弘は海外コレクターの私設美術館であるミュージアム・オブ・ エブリシング(イギリス)でのコレクションや、ニューヨークのアウトサイダー・アートフェア 特別展「Super-Rough」(2021)で村上隆にセレクションされている。また、かつのぶは、小山登美夫ギャラリー天王洲で個展(2022)を開催するなどし、現代美術の分野でも着実に実績を積んでいる。